台北日本人学校で野球教室を行った杉谷拳士氏(右)【画像:パーソル パ・リーグTV】

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パ・リーグ中継は今年で12年目…台湾市場を重視してきたPLM

 パシフィックリーグマーケティング(PLM)は、6月14日から16日の3日間に渡り、台湾でパ・リーグのプロモーション活動を展開した。2009年に台湾の放送局と初めて配信パートナーシップ契約を締結したPLMは、2014年、前年のWBCの活躍で国民的英雄となった陽岱鋼外野手(現オイシックス)が当時所属していた日本ハムの主催試合の放映をスタート。放映試合は台湾人選手の所属球団を中心に年々増加していった。

 中継放送局の台湾市場撤退など、困難な状況にも直面したが、必死にバトンをつないできた。12年目となった今季は、DAZN台湾とパートナーシップ契約を締結、中継試合はパ6球団の主催試合だけで、年間400試合以上に達する。当初は、台湾人選手の応援を目的に見はじめたファンも、自然にチームメイトや他チームのスター選手に興味をもつようになるため、パ・リーグの選手の認知度は高い。「親しみを感じる」と口にする野球ファンは少なくない。

 PLMは昨年、楽天モンキーズ主催の日本イベント「YOKOSO桃猿」において、パ・リーグ6球団のブースを出展、そして、台湾プロモーション3か年計画2年目の今年は、台湾のパ・リーグファンの熱い声援に感謝の意を示そうと、富邦ガーディアンズとタッグを組み、より活動の範囲を広げて行う事を決定。6月15、16日、富邦の本拠地、新北市の新荘球場で行われる日本イベント「わくわく日本祭」での各種PR活動に加え、グローバルな野球の発展を願い、14日と16日に、現地の子どもたち向けの野球教室を2回実施することとなった。

杉谷拳士氏が台北日本人学校で野球教室…記者顔負け質問も

 今回のプロモーションでアンバサダー役として白羽の矢が立ったのは、日本ハム時代に陽岱鋼、王柏融と親しく、現地でも高い知名度、人気を誇る杉谷拳士氏だった。

 14日に台北市内の台北日本人学校で、杉谷氏による野球教室が行われた。初めてボールを握ってからまだ数週間という小学校低学年の女の子から、甲子園を夢みる男子中学生まで、レベル差は大きかった。ひとりひとりの名前を呼び、レベルに合わせてお手本をみせ、簡潔な言葉で指導。目にみえて上達する子どもたちの姿に、杉谷氏も思わず顔をほころばせた。

 練習後、すっかり打ち解けた子どもたちからは、記者顔負けの質問も飛び出した。プロで14年間プレーできた秘訣を問われ、毎日入念なストレッチを通じ、体と対話しながら人一倍コンディション維持に気を使っていたと説明。両打ち転向のきっかけについては、小柄な身体でプロの世界を勝ち抜くために、左打ちをマスターし、俊足を生かそうと考えたからだと明かした。貴重な話の数々に、子どもたちはもちろん、指導者や父兄の皆さんも興奮を隠しきれない様子だった。

 杉谷氏は「現場でしか感じることができない『熱』というものを自分のなかでも感じたかったですし、何より全員に共通していえるのは、野球が好きなんだという思いに溢れていたこと。それを確認することができて、とても嬉しかったです」と充実感をにじませた。

PLMの「野球を通じた社会貢献、公益活動」という構想に、富邦が呼応

 15日からは富邦の本拠地、新北市・新荘球場で、PLMと日本ハムとのコラボイベント「わくわく日本祭り」が2日間にわたって開催された。台湾メディア向けの記者会見が行われ、富邦の陳昭如総経理、PLMメディアライツ事業部海外グループマネージャーの高木隆氏、そして杉谷氏が出席した。

 富邦の陳昭如総経理はまず、「ガーディアンズは2016年のチーム設立以来、北海道日本ハムファイターズさんと良好な関係を築いてきた。そして、この2年間はパ・リーグさんとも、さまざまなマーケティングに関し、意見交換、交流を進めてきた。今年のイベントは、そうした交流の中で実現した」と経緯を説明。翌16日の野球教室で台湾での社会貢献、公益活動を行いたいという強い要望があったことを明かした。これに呼応する形で、地元・新北市の小学校2校を新荘球場に招待。杉谷氏に加え、富邦からも元日本ハムの稲田直人1軍内野統括コーチ、垣内哲也1軍打撃統括コーチ、高國輝2軍打撃コーチらが指導を行うことを発表した。

 企画立案、運営を担ったPLMの高木氏は「パシフィック・リーグが今、どんどん世界に向け発信を続けているなか、ガーディアンズさんとのコラボは台湾野球文化の更なる発展や現地社会にパ・リーグが深く根付く大きな1歩だと思います」とその意義を強調。陳総経理はじめ富邦球団の理解、協力に感謝した。

 この日、新荘球場のコンコースには、日本のグルメや文化を体験できるさまざまなブースが出展、なかでも、パ6球団のユニホームを着用でき、サイン球などのグッズが当たるPLMのブースは人気を集めた。さらに、イベントのために準備された富邦と日本ハムのコラボグッズは、販売時から話題。特に日本ハムの黒い練習用ユニホームを基調としたガーディアンズユニホームはオンライン分が即完売となった。再入荷したこの日も、グッズショップは長蛇の列だった。(「パ・リーグ インサイト」駒田英)

(記事提供:パ・リーグ インサイト)