(『虎に翼』/(c)NHK)

写真拡大

激怒した寅子

現在放送中の伊藤沙莉さん主演・連続テレビ小説『虎に翼』(NHK総合/毎週月曜〜土曜8時ほか)。

今週放送された第14週「女房百日 馬二十日?」では、特に7月4日放送分・69回で流れた寅子の激怒シーンが話題になりました。

あらためてあらすじを記すと、最高裁判事を務めていた穂高とやや距離ができていた寅子でしたが、祝賀会で花束を渡す役目を任されてしまいます。その場での、穂高の

「こういう会を設けてもらえるのも、出がらしとして最後まで自分の役割を果たすことができたからなのかな。そう思おうと思った」

「出がらしも何も、昔から私は自分の役目なんぞ果たしていなかったのかもしれない」

「私は大岩に落ちた一滴の雨だれにすぎなかった」

「もうひと踏ん張りするには私は老いすぎた」

といった挨拶を前に、我慢ができなくなった寅子は、花束を渡す役割を放棄。会場を飛び出します。

「感謝はするが許さない」

その後、穂高と対面した寅子。しかし…

「謝りませんよ。私は。先生の一言で心が折れても、そのあと気まずくても。感謝と尊敬はしていました。理想のために、周りを納得させようと踏ん張る側の人だと思っていたから」

「花束で、あの日のことを、そういうものだと流せません」

「先生に、自分も雨だれの一滴と言ってほしくありません」

などと、まったく怒りを隠そうとしませんでした。

すると穂高は突然「あー、あああ、あーあーあーあ!」と叫び、「謝ってもダメ。反省してもダメ。じゃあ、私はどうすればいい」と返します。

対して寅子は険しい顔で「どうもできませんよ!」「我々に一滴の雨だれでいろと強いて、その結果、歴史にも記録にも残らない、無数の雨だれを生み出したことも」「先生には感謝はするが許さない。納得できない花束は渡さない」と答え、その場を去りました。

このシーンについて、なぜ寅子があそこまで怒っていたのかを巡り、ネットを中心として視聴者の間で活発に意見が交わされていました。

伊藤沙莉さんの感想

そのようななか、7月5日8時15分にNHKの公式サイトにて伊藤沙莉さんのインタビュー第4回が公開。演じていた際に伊藤さんが感じていた思いなどがあらためて語られました。(以下、『虎に翼』公式サイトより)

―――――

ーー第70回(7月5日放送)、穂高の退任祝賀会でのやり取りも印象的でした。演じていていかがでしたか?

演じるにあたっては、なぜ寅子は穂高にここまで怒るんだろう? と悩みました。その気持ちを監督に話したら「表現としては怒りかもしれないけれど、ここは寅子から穂高に愛情を伝えるシーン。ここで二人は、ただの仕事相手や師弟関係じゃできないけんかをしている。もはや、ある種の親子げんかであって、これは大いなる愛なんです!」と。そうした視点で脚本を読み返したら、ふに落ちたんです。

きっと寅子は、穂高先生の挨拶を聞いて「今までやってきたことすべてが雨垂れの一滴(ひとしずく)だと言うの? すごいことを成し遂げた先生を尊敬していたのに、そんな後ろ向きなことを言わないでよ!」と感じたんですよね。

怒っているときって、根底にあるくやしい気持ちや悲しみ、恥ずかしさなどが怒りとして表れているんだと思うんです。ここでも寅子の声色や温度感は怒りに見えますが、根底にある先生への愛と敬意が怒りとして表れたと捉えていただけたらうれしいです。

ーーそんなところも寅子らしいですね。

もう最後だからいいや! と見逃がさないのが寅子ですし、それが彼女の愛なんです(笑)。まぁいっか! で、その人との関係性を終わらせたり諦めたりしない。寅子は絶対に、相手に気持ちを届けることを諦めず、関わり続けていく人なんですよ。かつて懐かしき兄が、「思ってることは口にだしていかないとね。うん、その方がいい!」(第15話、4月19日放送)と言っていましたが、寅子もそのマインドを持っているんだなと思いましたね。

*引用ここまで

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

朝ドラ通算110作目となる『虎に翼』は、日本初の女性弁護士で後に裁判官となった三淵嘉子(みぶち・よしこ)さんがモデル。昭和の法曹界を舞台に、激動の時代を描いたリーガル・エンターテインメントです。

仲野太賀さんや石田ゆり子さん、松山ケンイチさんらが出演し、尾野真千子さんが語りを、脚本は吉田恵里香さんが担当。

主題歌『さよーならまたいつか!』は米津玄師さんが手掛けています。