生田斗真と古田新太、劇団☆新感線の舞台『バサラオ』でついに共演、生田が古田を“怪物”と称する意外な理由を明かす
ついに、劇団☆新感線の舞台で生田斗真、古田新太の共演が実現する――。7月7日(日)の博多座(福岡)公演を皮切りに、8月12日(月・休)から明治座(東京)、10月5日(土)よりフェスティバルホール(大阪)で上演される、劇団☆新感線の44周年興行『バサラオ』。「ヒノモト」と呼ばれる国で幕府と帝が相争う時代を舞台に、美しさを武器に天下取りを目指すヒュウガ(生田)、その参謀で元・幕府の密偵のカイリ(中村倫也)、流刑の身であるゴノミカド(古田)らの出し抜き合いを描いている。生田と古田は映画『土竜の唄 香港狂騒曲』(2016年)での共演はあるものの、舞台で顔を合わせるのは初めて。今回はそんな二人に同作の話はもちろんのこと、それぞれの芝居の考え方なども語ってもらった。
古田新太、生田斗真
●生田斗真「『本当に嫌なヤツでしたね』と言われることが快感」
――生田さんは今回演じるヒュウガというキャラクターをどのように捉えていらっしゃいますか。
生田:年齢的にも悪役をいただくことが増えてきて、ご覧になった方から「本当に嫌なヤツでしたね」「腹が立ちます」と言われることが快感になってきました。今回も中村倫也、西野七瀬さんのファンのみなさんから「生田斗真、キライだわ!」と言われる可能性がありそうですね(笑)。
古田:それくらい登場人物全員が突き抜けた考え方をしているんだよね。でも、確かに悪いヤツしか出てこないけどちゃんと爽快感がある。決して陰湿な方には物語が進まない。なにより悪いヤツばかりだけど、みんな若干、行き当たりばったりなところがおもしろい。斗真が演じるヒュウガも、テメエなりに「なんとかしてこの状況をひっくり返してやろう」と一生懸命企んでいるし。倫也が演じるカイリもそうだけど、お客さんの心情的には「がんばれ」となりそう。
古田新太
――ヒュウガは、自分の美しさを武器にする男性でもあります。生田さんはかつて映画『源氏物語 千年の謎』(2011年)でも美しさで女性たちを魅了する役を演じていらっしゃいましたが、美しさを前提に持つキャラクターは難しいのではないですか。
生田:いつも以上に演じる上でのハードルが高い気がします。作品を観ていただいた上で「カッコ良いですね」、「素敵ですね」と言っていただくのは有難いのですが、最初から「美しい男性がこれから出てきますよ、みなさん準備はいいですか」という感じで舞台に出るわけですから。なかなか難しい設定だと思います。でも、新感線の舞台だから振り切ってできるところもあります。そういう意味では貴重な機会をいただいたと思います。
古田:そんな斗真の能力をうまく使おうとしているのが、オイラが演じるゴノミカド。ヒュウガのことを「どうにかしてこいつをうまく使えねえかな」と。
――古田さんは生田さんのことを、「自分が出ていないときの新感線は斗真に任せる」と言うほど信頼を寄せていらっしゃいますよね。
古田:斗真は度量がデカいんです。若い頃から新感線にも出ていますから。最初はかわいらしくてチャーミングな男の子だったけど、ちゃんと腕が上がってきたし。俳優にはいろんなタイプがいて、「こいつが主役で大丈夫か」と心配になっちゃうヤツもいるんだけど、それはそれで持ち味でもある。心配されるけど光り輝くというか。ただ斗真は全然違って、「こいつに任せておけば安心だ」というタイプ。劇団員たち、アンサンブル、アクションチーム、ダンサー、みんな「斗真なら」というところがあって。それは培ってきた経験からくる信頼なんでしょうね。
生田斗真
――生田さんは古田さんとの舞台共演を切望されていたそうで。公式コメントなどでは、古田さんのことを「怪物」と称されていますが、どのあたりにそう感じるものがあるのでしょうか。
生田:お芝居が「怪物」なのは当然なのですが、なにより宣材写真を20年近く変えてないところですね!
――ハハハ(笑)。
生田:宣材写真がずっと「あの頃」の古田さんのままなんですよ。でも10年前だろうが、今だろうが、そういうことを気にしてなさそうで、「宣材写真をころころ変えない役者はカッコ良いな」と憧れていたところもありました。だから自分も10年くらいそのままにしてたんですけど、「さすがにそろそろ変えてください」とお願いされて、泣く泣くこの前変えたんですよ。ずっと「まだ変えないんですか」と言われ続けて、それでも耐えて、耐えて……。だけど古田さんは20年もそのままだから、やっぱり怪物。
古田:だってさ、面倒臭ぇじゃん(笑)。
●古田新太「大竹しのぶ、白石加代子には勝ち目がないと思った」
生田斗真、古田新太
――ちなみに古田さんは公式インタビューで、ゴノミカド役は衣装もいろいろ着込んだり身につけたり、メイクも手のこんだものになりそうなことから「面倒臭いことになりそう」とおっしゃっていましたね。なんならNHK大河ドラマ『どうする家康』(2023年)の話まで持ち出してきて、「イライラする」と。先ほどの宣材写真の話然り、古田さんはなにをするにしても「面倒臭い」という感じなんですか(笑)。
古田:そうそう、もう全部面倒臭い! なんならものを食べて、噛んで、飲み込むのも面倒臭くなってきた。30代後半からすべてが面倒臭くなってきて、体の半分が面倒臭い、もう半分は「早く帰りたい」でできている。
――演技はそもそも、台詞を覚えたりなにかになりきったりして面倒臭いものじゃないですか。
古田:まあでも「現場へ行って、覚えたセリフと覚えた動きをちゃんとやったら家に帰れる」と考えたら、「まあまあ、いい仕事だな」となるんです。
生田:それは古田さんじゃないと言えないことですよ!
古田:とにかく早く家に帰りたいから、演出家の言うことをちゃんと聞いて、その通りにちゃんとやるようにしてる。だから、なにかいろいろ工夫したり、アレンジしたりする俳優を見ると「すげえなあ」と感心するんです。「気持ちを入れるんでちょっと待ってください」とか。オイラは「なんでそんな面倒臭いことをやるんだろう」って。
生田:でも確かに新感線の舞台は、演出家のいのうえひでのりさんがかなりキッチリと「ここはこう動いて、こう言って、この台詞はこういうトーンで」と決めてくださっているんです。自分の場合は17歳のときに新感線の舞台に出て、舞台のことが右も左も分からない時期にそういういのうえさんのやり方に接したこともあって、すごくフィットしたんです。古田さんがおっしゃるように、自分の感情に沿って動いたり、なにかいろいろアイデアを入れたりすると、いのうえさんの演出とずれてくる可能性がある気もします。だから古田さんのお話は理解できるのですが、それでも面倒臭くないです(笑)。
古田新太、生田斗真
――『バサラオ』は悪党たちが天下を取ることを目指して動きますが、おふたりは「自分のこういうところが天下一」という部分はありますか。
生田:どんなことがあっても笑顔で乗り切る能力ですね。「とにかく笑っていたらなんとかなる」と。そういうあっけらかんとした感じやポジティブさは、自分の強みです。やっぱりなにをするにしても楽しいが一番ですから。
古田:オイラは20代の頃「芝居が宇宙で一番上手い」と思っていました。それで東京へ出てきたんですが、大竹しのぶ、白石加代子という二人の女優と芝居をしたときに「井の中の蛙、大海を知る」になりまして。「ああ、オイラは天才じゃないんだな」と。だから、秀才になることを目指したんです。大竹しのぶ、白石加代子にはできないようなアクション、ダンスをやっていこう、と。ほかにも前々から楽器や歌はやっていたけど、そういう部分を磨く方が得策だなって。それくらい、あの二人には勝ち目がなかったから。だって、一緒に舞台に立っても誰もこっちを見ていないんだから。だからあの二人にはない武器をどんどん増やして、どんなオファーでも「できません」と言わないようにしたんです。「なんでもやる」という俳優としては、天下を取っている気がします。
――そんなお二人が『バサラオ』のなかでどんなやり取りをかわすのか、楽しみでなりません。
生田:物語はもちろんのこと、歌、踊り、立ち回り、笑いなど楽しめる要素がいろいろ詰まっています。きっと、さまざまなお客様にも楽しんでもらえると思います。
古田新太、生田斗真
取材・文=田辺ユウキ 撮影=ハヤシマコ