――青山さんが演じているヒロインの後藤ひとりというキャラクターについてどんな印象をもっていますか?
青山 後藤ひとりって「陰キャでコミュ症の女の子」って紹介されることが多いんですけど、私はテレビシリーズの全12話を演じて、「諦めない子」っていう印象をもちました。他の人との会話やバイトもそうだし、江ノ島に行ったりとか、最初はどうしても後ろ向きだったり拒否したりはするものの、なんやかんやいって流されながらも諦めずに最後までやり切って、その結果「楽しかったな」で終わることができたりする子なんですよ。もちろん周りのメンバーの温かい尽力もあったりするんですけど、そんな周囲の想いを受け取って、「頑張ろう」っていう前向きなパワーに換えていく力を持っているのはすごいなって思っています。

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――テレビシリーズでのアフレコの思い出などありましたらお聞かせください。
青山 第1話のアフレコは忘れられないです。ほとんど私が演じた後藤ひとりしかしゃべってないのに、かなり収録時間が長引いてしまったんですよ。終わった後「(後藤ひとり役を)青山にしてみんな後悔してないかな?」って反省していたら、(アニメーション)プロデューサーが後ろでスタンディングオベーションを始めたんです。そういうのって最終回でもやらないのに、他のスタッフさんもブースを出た私を拍手で迎えてくれて。アフレコを見学に来られていた原作のはまじあき先生からも「後藤ひとりを青山さんに任せて良かった」っていうお言葉をいただけて、メッチャ泣いちゃったことは今でもよく憶えています。

――それだけ苦労したということは、後藤ひとりは演じるのが難しいキャラクターだったりしたんでしょうか?
青山 どの作品でもそうなんですけど、第1話ってキャラクターを固める作業に時間がかかってしまうんです。特に後藤ひとりは内側にいる自分と外側で他の人から見られている自分の姿が全然違うというのが難題で。自分では明るくたくましく「おはよう」って言っているつもりでも、それが相手に明るく「おはよう」って聞こえちゃったらダメなんです。なので収録中は音響監督さんから「そのまま届いちゃっているからダメ」っていうディレクションをたくさんいただくことになりました。

――それはかなり難しいことを要求されていたんですね。
青山 虹夏との会話での「あ、はい」のセリフひとつとっても「全部床に投げて」「虹夏としゃべらないで」って言われていましたから(笑)。後藤ひとりは虹夏ちゃんとしゃべっているつもりでいるけど、虹夏にはそう聞こえてないっていう風にしないといけない。でもモノローグの「どうしよう、全然しゃべれなかった」っていうセリフは感情をそのまま出さないといけない。そんな自分の中にある心のスイッチの切り替えがすごく難しいキャラクターではありました。そんな後藤ひとりが、話数を重ねていくうちにちゃんと虹夏ちゃんの目を見て「はい」って言えるようになるんですから……私自身彼女の成長にはホロリとしてしまいます(笑)

――そんな後藤ひとりですが、青山さんにとってどういう存在になりましたか?
青山 私の生き写しといっても過言ではないキャラクターになったと思っています。演じる際にも、無理にどこかの引き出しを開けてお芝居するようなこともなく、彼女の心情がわかりすぎるぐらいにスッと自分の中に入ってくるようになりましたので。だからこそ作品で描かれているリアルに、自分を重ねることができたのかなって思っています。後藤ひとりに失せない卑屈さは一生変わらないはずなので、私も一生彼女に寄り添っていけたらいいなと思っています。

――多くのファンを魅了した『ぼっち・ざ・ろっく!』の作品の面白さについてはどう考えていますか?
青山 いろんな魅力が詰まっている作品なんですが、やっぱりキャラクターの個性とそれぞれの役者のお芝居の面白さが一番の見どころかなって私は考えています。例えば虹夏ちゃんと喜多ちゃんって二人とも明るくて元気なキャラクターなんですが、虹夏ちゃんにはみんなのことをいろいろ考えたりする母性があるんですけど、喜多ちゃんは意外と自由奔放だったりと、実は全然個性が違っていたりするんです。同じようなテンションに見えてもお芝居でしっかりと演じ分けていく、そんな鈴代紗弓と長谷川育美の役者力は目の前で見ていて本当にすごいなって思っていました。リョウもクールだけど燃える炎みたいなものをメンバーの誰よりも持っている子で、その案配がすごく大変なキャラクターだったりするんです。でもその難しいお芝居を上手にこなしていくのが水野朔の演技力なんですよね。本当にいいバランスで結束バンドってキャスティングされたんだなって納得するばかりでした。

――そんな《結束バンド》が野外音楽フェス「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2024」に参戦することも決定しました。
青山 それもASIAN KUNG-FU GENERATIONさんと同日ですからね。「おいおい、ロッキン。やってんな!」って(笑)。なかなか現実味のない話だったりするのでちょっと緊張もありますけど、《結束バンド》として会場の皆さんに音楽を届けられたらなと思います。

――最後に公開を楽しみにしている方々にメッセージをお願いします。
青山 ファンの皆さんの応援のおかげで、『ぼっち・ざ・ろっく!』は私自身予想していなかったぐらい大きなコンテンツになることができました。ぜひテレビシリーズのときと変わらない熱と愛をもって劇場総集編も愛していただけたら嬉しいです。

青山吉能(あおやまよしの)
5月15日生まれ。81プロデュース所属。主な出演作は『ポケットモンスター』(ドット/ぐるみん)、『喧嘩独学』(目黒ルミ)、『恋愛暴君』(グリ)、『なつなぐ!』(千葉いずみ役)、『Wake Up, Girls!』(七瀬佳乃役)ほか。