カイロが貼り付けられていた(写真は、NPO法人ことりのおうち(@aqua87871980)提供)

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飼えなくなったセキセイインコを宅配便「ゆうパック」で空気穴もない袋に入れて送ってきたとして、神奈川県藤沢市内の動物保護団体が怒りを露わにしている。

「どういう事?! ホント命をなんだと思ってるんですか?」。NPO法人ことりのおうちは2024年6月22日、ゆうパックで届いたインコの写真をいくつか公式Xで投稿し、こう苦言を呈した。

「空気穴もなくカイロまで付けられたら 暑かっただろうに......」

プラスチックのケースで紙くずの上に入れられていたのは、生後半年というインコだ。紙袋に包んで、ゆうパックで送られてきたという。

郵便局サイトの「ゆうパックに関するQ&A」によると、ゆうパックでは、哺乳類は送れないが、インコといった鳥類などの小動物は送ることができる。健康体であって包装しているなどのほか、鳥類は同一都道府県内あての条件付きだ。「なお、配達時に死亡していた場合において、当社は責任を負いません」と明記されている。

送り主は、相模原市の住所の一部だけで名前もなく、袋には、次のような手書きのメモが貼り付けられていた。

「飼い主が亡くなった為、飼育ができなくなりました。どうかお引き取りいただけたら幸いです」

この送り主の記載が正しければ、「同一都道府県内あて」の条件は満たしていると言えそうだ。

座間市内の座間郵便局から発送され、品名には「セキセイインコ(1匹)」とあった。壊れものとして、逆さにしたり下に積んだりすることは厳禁と指定されていた。ケースには、保温用の使い捨てカイロが貼り付けられていた。

問い合わせ番号から追跡すると、21日16時ごろに郵便局で引き受け、翌22日11時ごろに、ことりのおうちの事務所に届けられていた。夜を挟んで、インコは19時間もの間、袋に入れられていた計算だ。

投稿では、「こんな袋で空気穴もなくカイロまで付けられたら 暑かっただろうに...」「お世話にかかる費用は店の資金や支援者の善意の寄付でやるのが当たり前の考えなんですか?」と疑問を呈し、「ホント こんな事はしないで 必ず電話にてご相談ください!」と訴えた。送り主から連絡がない場合は、23日に警察に届けることも明言した。

謝罪の電話が来たため「警察には届けないで終わりにしたい」

このX投稿は、7万件以上の「いいね」が集まり、関心を集めた。「生き物って送れるの...?」と驚く声が上がるとともに、「ひどいことするもんだ」「あまりにも身勝手ですよね」とあきれる向きも多かった。

ことりのおうちは、6月23日に公式Xを更新し、「皆様の拡散のお陰で、送り主さんに繋がり 送り主さんから謝罪の電話が来ました」と報告した。そして、「今回 送り主さんは、泣きながら電話してきてくださったし 電話するのもかなりの勇気が必要だったと思うので 警察には届けないで 終わりにしたいと思います」と明かした。

ことりのおうちで動物の保護と里親探しを担当している「バードアニマルレスキュー」の高見広海代表は6月24日、J-CASTニュースの取材に対し、インコを送って来たのは、飼い主の知人だったと明かした。

「名前を書いていなかった理由は聞いていませんが、引き取りを断ると困る後ろめたさもあったのでしょう。配送の知識がある業者なら、ケースを段ボール箱に入れて空気穴を開けておきます。紙袋では、潰れたり窒息したりしますから、インコを入れて送ったりしませんね」

飼えなくなったペットを店の前に放置されることはあるものの、郵送は初めてだという。インコは、衰弱はしておらず元気だといい、里親を募集している。すでに、メールや電話で100件ほどの問い合わせが来ているとした。

ゆうパックを扱った郵便局に対しては、「小動物の配送をしてくれるのでとても助かっていますが、送り主の名前がなく、紙袋に入れたままで配送するのは、止めてほしい」と注文を付けた。

郵便局では、匿名の状態で、紙袋などに空気穴がないまま、配送を受け付けることはあるのだろうか。インコを取り扱った座間郵便局を管轄する日本郵便南関東支社は25日、「現在、社内で確認しており、それが終われば回答させていただきます」と取材に説明した。回答があり次第、追って伝える。

(追記:2024年6月26日20時30分)日本郵便南関東支社の広報担当から取材に回答があり、送り主が匿名の状態でゆうパックの配送を受け付けるかについては、「住所や名前がしっかり書かれていないものは、お届けすることができません」と答えた。また、紙袋などに空気穴がない場合について、「換気などの項目ごとに郵便物のチェックは行っていませんが、お引き受けするときは、換気などに問題がないか口頭でお客さまに確認しています」と説明した。

(J-CASTニュース編集部 野口博之)