実は成功事例が少ない? 競合激しいアクティブウェア市場で新規参入ブランドが勝ち残るための戦略
創業9年目のメンズアクティブウェアブランド、ローン(Rhone)の創業者のネイト・チェケッツ氏は、「今のマクロ環境は、カテゴリーリスクを取ることが促進されるような状況ではない」と認めている。
しかし、新規カテゴリーにリスクを負うことはまさにローンが行っていることなのである。ローンは5月6日、製品チームとアスレタ(Athleta)など他社から引き抜いた社員により過去2年間を費やしてデザインされた新しい女性向けラインで、女性用アクティブウェアに正式に進出した。
チェケッツ氏はローンの女性用アクティブウェアに対する需要は明らかにあると米Glossyに語った。ローンは今年まで女性向けデザインのコレクションを販売したことがなかったにもかかわらず、すでに顧客の30%は女性だった。2月、LPGAゴルフリーグとの提携で初のオンコースアパレルプロバイダーとなり、LPGAツアーとエプソンツアー(Epson Tour)のスタッフのウェアを担当し、初めてウィメンズウェアを手がけた。3月には、コアパワーヨガ(CorePower Yoga)とアスレタ(Athleta)の元エグゼクティブのテス・ローリング氏を含む2人の新メンバーを取締役会に迎えた。チェケッツ氏によると、ローリング氏から今回のローンチに不可欠な女性向けブランディングとマーケティングの専門知識がもたらされたという。
アクティブウェアがファッションの分野でもっとも混雑しているカテゴリーの1つになっている状況で、ローンは拡大を行っている。ナイキ(Nike)やアディダス(Adidas)などの大手レガシーブランド、オンランニング(On Running)やジムシャーク(Gymshark)のような成長中の中規模ブランド、ルルレモン(Lululemon)やアロヨガ(Alo Yoga)などのヨガブランド、ブオリのように巨額の資金を持つスタートアップ、そして元NFL選手のトム・ブレイディ氏が関与するノーブル(Nobull)のようにセレブ支援のブランドがアクティブウェアを手がけており、極めて激しい競合状況にある。リフォメーション(Reformation)のレフアクティブ(Ref Active)、H&Mのムーブ(Move)など、アクティブウェアラインやコレクションを立ち上げた確立されたファッションブランドもある。
チェケッツ氏は、ウィメンズウェアの発売前にこの過密な分野について、チームとじっくり話し合ったと言う。この分野に参入するには強力な価値提案が必要であるというのが彼らの判断だった。
「ウィメンズアクティブウェアの多くは似たり寄ったりだ」とチェケッツ氏は語る。「多くのブランドは本質的にはヨガブランドだ。ヨガは素晴らしいし、当社もヨガ製品を手がけている。しかし、ヨガは女性の生活の活動の1つにすぎず、スポーツの幅をヨガだけに絞るというのは配慮に欠ける」。
テニスやほかの女性スポーツの成長を見込んで、ローンのラインにはテニススカートやスポーツ用ワンピースなどの幅広い女性用アパレルが含まれている。ウィメンズラインの価格はメンズウェアと同様の58〜128ドル(約9000〜2万円)で、オンラインとローンの15店舗の両方で販売されている。同社は年間収益が1億ドル(約156億円)を超える収益性の高い企業であり、今後の女性カテゴリーのマーケティング計画には女性スポーツリーグやアスリートとのパートナーシップが予定されている。
チェケッツ氏の推定によると、最近アクティブウェアブランドが次々登場している理由は単純で、それが成長カテゴリーだからだという。世界のアクティブウェアの売上高は5000億ドル(約78兆円)を超えており、その数字は今後数年間で拡大し続けると予測されている。アロヨガやナイキなどのブランド、またブオリのような新興ブランドの成功により、この分野は宝の山だと考えられるようになった。
「成長しているカテゴリーには当然惹きつけられる」とチェケッツ氏は言う。「しかし、メディアのコストは大幅に上昇している。5年から15年前と比べて、いまは軌道に乗るのがはるかに難しい。さらにアクティブウェアは技術的に非常に複雑なカテゴリーだ。(アクティブウェア分野で成功するのは)まったく容易ではない」。
チェケッツ氏は、最近設立されたアクティブウェアブランドで最終的に失敗した数社があることに触れた。そのようなブランドにはセレブリティが関与していることが多い。トム・ブレイディ氏のブランド、ブレイディ(Brady)は2022年に立ち上げられたが、長い休止期間を含む静かな2年を経て、2024年初めにメンズアクティブウェアブランドのノーブルと合併した。ビヨンセがアディダス(Adidas)とコラボしたアイビーパーク(Ivy Park)でさえも、巨額の損失を出したと伝えられ、のちに閉鎖された。
セレブブランド以外にも、アウトドアボイシズ(Outdoor Voices)やオールバーズ(Allbirds)のような企業もアクティブウェア分野で苦戦しており、競合できず破産に追い込まれたところもある。
キム・カーダシアンがプロデュースするスキムス(Skims)などを除いては新規アクティブウェアブランドの成功例は少ないため、大企業はそのようなブランドに対して危機感を感じていないようだ。
アンダーアーマー(Under Armour)のイノベーション・開発・テスト担当シニアバイスプレジデントのカイル・ブレイクリー氏は次のように語った。「確かにいまは競争が激化している。だが、他社に追いつかれるとは考えていない。むしろ、他社から学び、それが当社の製品を向上させるのに役立っている。そのようなブランドの多くは当社が過去にすでに行っていることや当社が専門知識を多く持っていることを実践しているというのが、我々が認識しているところだ」。
[原文:Fashion Briefing: How brands can stand out in the increasingly crowded activewear category]
DANNY PARISI(翻訳:ぬえよしこ、編集:戸田美子)
Image via Rhone
ローン、正式に女性用アクティブウェアに進出
しかし、新規カテゴリーにリスクを負うことはまさにローンが行っていることなのである。ローンは5月6日、製品チームとアスレタ(Athleta)など他社から引き抜いた社員により過去2年間を費やしてデザインされた新しい女性向けラインで、女性用アクティブウェアに正式に進出した。
強力な価値提案と幅広いスポーツを対象に
アクティブウェアがファッションの分野でもっとも混雑しているカテゴリーの1つになっている状況で、ローンは拡大を行っている。ナイキ(Nike)やアディダス(Adidas)などの大手レガシーブランド、オンランニング(On Running)やジムシャーク(Gymshark)のような成長中の中規模ブランド、ルルレモン(Lululemon)やアロヨガ(Alo Yoga)などのヨガブランド、ブオリのように巨額の資金を持つスタートアップ、そして元NFL選手のトム・ブレイディ氏が関与するノーブル(Nobull)のようにセレブ支援のブランドがアクティブウェアを手がけており、極めて激しい競合状況にある。リフォメーション(Reformation)のレフアクティブ(Ref Active)、H&Mのムーブ(Move)など、アクティブウェアラインやコレクションを立ち上げた確立されたファッションブランドもある。
チェケッツ氏は、ウィメンズウェアの発売前にこの過密な分野について、チームとじっくり話し合ったと言う。この分野に参入するには強力な価値提案が必要であるというのが彼らの判断だった。
「ウィメンズアクティブウェアの多くは似たり寄ったりだ」とチェケッツ氏は語る。「多くのブランドは本質的にはヨガブランドだ。ヨガは素晴らしいし、当社もヨガ製品を手がけている。しかし、ヨガは女性の生活の活動の1つにすぎず、スポーツの幅をヨガだけに絞るというのは配慮に欠ける」。
テニスやほかの女性スポーツの成長を見込んで、ローンのラインにはテニススカートやスポーツ用ワンピースなどの幅広い女性用アパレルが含まれている。ウィメンズラインの価格はメンズウェアと同様の58〜128ドル(約9000〜2万円)で、オンラインとローンの15店舗の両方で販売されている。同社は年間収益が1億ドル(約156億円)を超える収益性の高い企業であり、今後の女性カテゴリーのマーケティング計画には女性スポーツリーグやアスリートとのパートナーシップが予定されている。
チェケッツ氏の推定によると、最近アクティブウェアブランドが次々登場している理由は単純で、それが成長カテゴリーだからだという。世界のアクティブウェアの売上高は5000億ドル(約78兆円)を超えており、その数字は今後数年間で拡大し続けると予測されている。アロヨガやナイキなどのブランド、またブオリのような新興ブランドの成功により、この分野は宝の山だと考えられるようになった。
「成長しているカテゴリーには当然惹きつけられる」とチェケッツ氏は言う。「しかし、メディアのコストは大幅に上昇している。5年から15年前と比べて、いまは軌道に乗るのがはるかに難しい。さらにアクティブウェアは技術的に非常に複雑なカテゴリーだ。(アクティブウェア分野で成功するのは)まったく容易ではない」。
アクティブウェア分野における明暗
チェケッツ氏は、最近設立されたアクティブウェアブランドで最終的に失敗した数社があることに触れた。そのようなブランドにはセレブリティが関与していることが多い。トム・ブレイディ氏のブランド、ブレイディ(Brady)は2022年に立ち上げられたが、長い休止期間を含む静かな2年を経て、2024年初めにメンズアクティブウェアブランドのノーブルと合併した。ビヨンセがアディダス(Adidas)とコラボしたアイビーパーク(Ivy Park)でさえも、巨額の損失を出したと伝えられ、のちに閉鎖された。
セレブブランド以外にも、アウトドアボイシズ(Outdoor Voices)やオールバーズ(Allbirds)のような企業もアクティブウェア分野で苦戦しており、競合できず破産に追い込まれたところもある。
キム・カーダシアンがプロデュースするスキムス(Skims)などを除いては新規アクティブウェアブランドの成功例は少ないため、大企業はそのようなブランドに対して危機感を感じていないようだ。
アンダーアーマー(Under Armour)のイノベーション・開発・テスト担当シニアバイスプレジデントのカイル・ブレイクリー氏は次のように語った。「確かにいまは競争が激化している。だが、他社に追いつかれるとは考えていない。むしろ、他社から学び、それが当社の製品を向上させるのに役立っている。そのようなブランドの多くは当社が過去にすでに行っていることや当社が専門知識を多く持っていることを実践しているというのが、我々が認識しているところだ」。
[原文:Fashion Briefing: How brands can stand out in the increasingly crowded activewear category]
DANNY PARISI(翻訳:ぬえよしこ、編集:戸田美子)
Image via Rhone