「食べても良い夜食」はある? 健康状態を崩さない夜の食事について専門家が解説
「夜食は健康に良くない」とよく言われますが、なぜ良くないのかという理由までは知らない方も多いのではないでしょうか。また、生活リズム上、遅い時間に夕食を食べることになるという人もいると思いますが、体にはどのような影響があるのでしょうか。近年、食事は食べる「タイミング」が重要であるという科学的なデータが増えてきており、注目が集まっているようです。今回は、健康的な食生活を目指す人のための夜食について、時間栄養学の専門家である田原先生・市川先生に解説していただきました。
著者:
田原 優(広島大学大学院 医系科学研究科公衆衛生学 准教授)
共著者:
市川 知美(広島女学院大学人間生活学部管理栄養学科 教授)
夜食は良くないって本当?
編集部
時間栄養学の視点で、食事制限は有効なダイエット方法と言えますか?
市川先生
食べる量を減らすのではなく、「いつ食べるか」を意識することは、ダイエットに有効です。その理由としては、1日に摂取するエネルギーが同じでも、食事のタイミングによって体への影響が異なるからです。
編集部
健康的に痩せるためには、食事のどのような点に気をつけると良いのでしょう?
市川先生
主食・主菜・副菜のそろったバランスの良い食事が基本となります。特に、低エネルギーで食物繊維の豊富な野菜類・きのこ類・海藻類・いも類・豆類などをしっかり取り入れると、自然とよく噛んで食べる習慣がつき、満足感も得られやすくなります。
編集部
夜ご飯を減らすと痩せるというのは、本当ですか?
田原先生
結論から言ってしまうと、本当です。様々なダイエットプログラムのデータを解析した結果、朝食多め・夕食少なめの食事は、朝食少なめ・夕食多めな食事に比べて、より体重減少が見られたという結論が得られています。
編集部
朝食を食べる人と食べない人では、体重の変化に違いはありますか?
田原先生
普段、朝食を食べない人は、普段朝食を食べる人よりもBMIが高いという疫学調査結果があります。一方で、1日の食事を8~10時間以内に終えるダイエット方法(オートファジーダイエット)が、欧米では盛んに研究されています。たしかに効果はあり、体重減少や血圧改善効果が見込めると数多く報告されています。1日10時間以内に食事をするためには、朝食抜きか夕食抜きが実践しやすい方法となりますが、どちらの方法でも体重減少効果が同程度得られるようです。
遅い時間の食事で食べても良いものとは?
編集部
夜食は、体に良くないというのは本当ですか?
田原先生
本当です。個々人の健康状態や生活スタイルによって異なりますが、夜食によって、肥満になりやすくなったり、睡眠の質が低下し休養感が得られなくなったりすることが様々な研究により分かっています。
編集部
夜食をとることによる影響の、研究結果を教えてください。
田原先生
40~54歳の日本人約8000人を4年間追跡した研究では、夜食習慣や夕食後にすぐ寝る習慣は、男性で2.11倍、女性で3.02倍、肥満のリスクになると報告されています(※1)。また、これらの習慣は、脂質異常症との関連も見られています。子どもにおいても夜食習慣と肥満の関連がメタ解析として報告されています (※2)。
編集部
何時までに夕食・夜食を終わらせると良いですか?
田原先生
就寝時刻は人によって異なるため、何時までということは人ぞれぞれの生活リズムがありますので、一概に何時までとは言えません。ですが、就寝の2~3時間前までに食事を終えるように心がけると良いですね。
編集部
どうしても、遅くに夕食をとる場合、どのような食事が良いですか?
市川先生
揚げ物や油の多い料理を避け、量を控えめにしましょう。また、本人の理想的な就寝時刻から逆算し、就寝時刻の2~3時間前までであれば通常の夕食を摂っても問題ないと思います。しかし、遅い時刻の夕食・夜食は、肥満の原因になるだけでなく、次の日の朝食欠食習慣にも繋がります。よって、夕食が遅くなる場合は、夕方に間食を取り入れて分食することがおすすめです。
編集部
夜食を我慢して空腹で寝ることのメリットはありますか?
田原先生
夜間に絶食状態をキープすることは、体重減少や高血圧の改善に効果的です。また、朝起きた際に心地よい空腹感が生まれ、朝食を食べたくなる状況を作ることができます。そのような状況を繰り返し作ることで、朝食習慣が構築しやすくなります。
夜食に関する専門家のアドバイス
編集部
好きなものを食べるタイミングはどのようなタイミングが良いですか?
市川先生
朝食に自分の好きなものを食べ、夕食はなるべくヘルシーでバランスの良い食事を心がけるとダイエットとしては効果的でしょう。他方、必要以上に甘い物を摂取することは、血糖値の急激な上昇を招くので、肥満につながりやすいと言えます。水分補給では、水やお茶などにすることをおすすめします。
編集部
飲み物にも注意は必要ですか?
市川先生
糖質の多いジュースやアルコール類、カフェイン飲料は、寝る前はさけた方がいいでしょう。カフェインはコーヒーだけでなく、緑茶や紅茶にも含まれます。カフェインは体内での分解に時間がかかるので、夕方以降のカフェイン飲料は控え、ノンカフェインなお茶(麦茶やルイボスティーなど)や水に切り替えましょう。
編集部
夜食をとってしまった後の行動でアドバイスはありますか?
田原先生
夜食をとってしまった、遅い時間に食事をしてしまった時には、食後すぐに寝るのではなく、1~2時間程度待って消化が進んでから就寝するように心がけることがおすすめです。また、夜食を食べたくならないように、夕食後に歯磨きをする、食べ物を見えるところに置かないなどの工夫をすると同時に、夜寝る前の行動を自分の中でルーティン化して、決めておくことも大事です。ストレッチや読書など、就寝に向けた準備をするようにしましょう。
編集部
その他、ダイエットをする際に注意すべき点はありますか?
田原先生
偏った食事や急激な減量は、体調不良やリバウンドにつながります。ダイエットをする際には、適度な運動習慣を取り入れながら、食事の内容とタイミングの改善を心がけると良いでしょう。
参考文献
※1. Causal effects of later-eating rhythm on adiposity in children through the comparison of two cohorts in the UK and China: a cross-cohort study
https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(23)02142-6/fulltext
※2. Association of night eating habits with metabolic syndrome and its components: a longitudinal study | BMC Public Health
https://bmcpublichealth.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12889-018-6262-3
編集部まとめ
遅い時間の食事は健康に良くないということは科学的にも報告されているようです。自ら好んで夜に食べるという場合だけでなく、仕事や習い事などで食事が遅くなってしまうケースもあるかと思います。寝る時間に合わせて、間食も活用しながら食事のタイミングを決めることで、肥満予防や生活習慣予防に繋がると教えていただきました。本稿が、読者の皆様にとって、夜食に関する疑問や悩みを解消する一助となり、健康的な食生活を知るきっかけとなりましたら幸いです。
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