三笘薫、遠藤航…日本人選手“共通の強み”とは? ドイツ人コーチが指摘「個性は全く異なるが…」
ボーフムのコンラッド育成コーチが語る日本人選手への評価
日本代表の浅野拓磨が所属するドイツ・ブンデスリーガ1部のVfLボーフムが、東京・世田谷のファンルーツパーク芦花公園で小学生を対象としたスペシャルスクールを開催した。
小野伸二や乾貴士(現・清水エスパルス)ら日本人選手が在籍してきた歴史を踏まえて日本のマーケットを重視し、今年3月にはJリーグのジュビロ磐田とのパートナーシップも締結。指導にあたった育成コーチのヨルグ・コンラッド氏によると、ドイツでは今、評価を高めた日本人選手だけでなく、彼らを生み出した日本の育成システムにも関心が高まっているという。
ドイツと言えば、浅野の決勝ゴールで日本代表が勝利した2022年カタール・ワールドカップ(W杯)の一戦が記憶に新しい。さらに23年9月の親善試合でも、日本は浅野の得点などで4-1と完勝し、ハンジ・フリック監督を解任に追い込んだ。世界を驚かせたあの2試合の影響で、ドイツ国内での日本人選手の見方が変化しているのだろうか。
「そんなことありましたっけ?(笑) もちろん、ワールドカップの影響もありますが、それ以前からドイツでプレーする日本人選手個々の成功があり、日本への関心は高かったんです。この10年ほどで若い世代がどんどん台頭し、多くのクラブの人間がそれを間近で見ていますからね」
コンラッド氏が指摘する通り、近年のブンデスリーガでは日本人選手が次々とブレイクしていった。内田篤人、岡崎慎司、酒井宏樹(現・浦和レッズ)……、なかでも衝撃的だったのはドルトムントの香川真司(現・セレッソ大阪)だろう。そうして注目された日本人選手の全般的な評価を問うと、3人の名前を挙げて答えてくれた。
「浅野はスタイルもパッションもボーフムにぴったり合うタイプのストライカーです。シュツットガルトやマインツでプレーした岡崎慎司は、同じフォワードでもまったく違う特長を生かして活躍しました。またシュツットガルトにいたミッドフィールダーの遠藤航(現・リバプール)はリーダーシップがあり、チームをまとめることにも長けていた。それぞれ選手としての個性がまったく異なるので、日本人の強みを一言で表すのは難しいですね。
ただ、共通点もあるように思います。それは優れたメンタリティーです。自分の次のステップに向けた目標設定が明確で、それに対してハードワークを徹底できる。ドイツで彼らに接した選手や指導者は、きっと日本人全体に対してもポジティブな印象を持ったはずです」
ドイツでも問題になる若手選手の進路「日本には別のルートがある」
日本人プレーヤーが注目されるにつれ、彼らを生んだ日本の育成事情にも目が向けられているという。タレントの発掘はもちろんだが、高校の部活や大学サッカーなど、ドイツにはない環境やシステムにも関心を払う。もちろん、部活には部活の課題がいまだに横たわっており、大学サッカーの隆盛はJリーグのいわゆる“18歳問題”(高校・ユースからプロ入りした若手の実戦機会が不足し伸び悩む)の裏返しでもあるが、それでもいいヒントがないか学ぼうという姿勢だ。
「武藤嘉紀(現・ヴィッセル神戸)や三笘薫(現・ブライトン)はいい例ですね。アカデミーから直接トップチームに行くのではなく、大学を経てプロになった。クラブのアカデミーではなく中学校や高校でプレーしていた選手も多いと聞いています。
ドイツでは、プロになるかどうかがU-16のカテゴリーでだいたい決まります。しかし、その先でキャリアが閉ざされ、プロにはなれずほかの仕事もないようなケースが少なくない。問題になっています。しかし日本には、高校や大学を経由してプロになるという、別のルートがありますよね。サッカーに真剣に取り組みながら違う進路も選択できる道はヨーロッパにはありません。そのままドイツに移せるわけではないですが、育成の過程で教育の要素を大切にしている日本のシステムから学びたいと考えています」
(取材協力:株式会社ファンルーツ)(生島洋介 / Yosuke Ikushima)