博多大吉「九州男児の嫌なところが全部出てくる」メッセンジャー・黒田や麒麟・田村並みに貧乏だったバッドボーイズ・清人の自伝的コミックに感じた重さとは
お笑いコンビ「バッドボーイズ」の清人が、「おおみぞきよと」名義で刊行した、自伝的コミックエッセイ『おばあちゃんこ』(KADOKAWA刊)。目の見えない祖母と、3人のややこしいオジサンたちとの極貧生活が、親しみやすいタッチで描かれている。清人の福岡時代からの先輩であり、漫画にも推薦文を寄せた博多大吉との先輩・後輩対談をお届けする。
具体的に名前を出すなら、『ONE PIECE』(笑)ですよ
――清人さんの幼少時代を描いたコミックエッセイ『おばあちゃんこ』が発売されました。まずはこの漫画を描いた経緯を教えてください。
最初は異能バトルみたいなものを描きたくて頑張っていたんです。ただ、今回声をかけてもらった(出版元の)KADOKAWAさんから、「実話でお願いします」と言われて、この内容になりました。
大吉 絵を描くのが好きなことは、上京したころ清人と一緒に住んでいたときから知っていたんです。覚えているのが、誕生日プレゼントとしていきなり似顔絵をもらったことですね。そんなの恥ずかしいじゃないですか。「冗談じゃない、いらない!」と(笑)。
清人 拒否されました(苦笑)。
大吉 それから数年後に、「今、漫画を描いているんです」と見せられたのが、さっき清人が言っていた異能バトルものの漫画で。まぁ、どんな作品かと具体的に名前を出すなら、『ONE PIECE』ですよ(笑)。
清人 (笑)。
大吉 頑張って描いているのはわかる。でも、素人目線で見ても「これは売れんばい」と。「出版社も食いつかんし、読者からもどっかで見た話だなと思われるよ」と正直に伝えました。だから今回、漫画を発売すると聞いて「まさかあのときのアレが……!」と頭をよぎりましたが、おばあちゃんの話だった。「そう、そっちで良い!」と強く思いましたね。
――『おばあちゃんこ』を読んで、どのような感想を持ちましたか?
大吉 エピソードがどれも信じられない話ばかりじゃないですか? 貧乏だということは清人の口から聞いていたものも、多少は盛っているだろうから話半分、適当に聞き流していたわけですよ。それがここまで細かく描いているのを読んで、「本当だったんだ……」と改めて衝撃を受けましたね。
――大吉さんも同じ福岡出身ということで、共感できる部分もありましたか?
大吉 僕もそんなに裕福じゃなかったんですけど、ネタになるほどではなくて。吉本にいると、貧乏エピソードの強い人がめちゃくちゃ多いので。『ホームレス中学生』の麒麟・田村くんとか、メッセンジャー・黒田くんを筆頭に、「赤ん坊の頃、捨てられていて」とか、「寝ているときに耳をネズミに齧られて」とか、とんでもないエピソードだらけ(笑)。
清人も私立の高校に通っていたから「恵まれているほうかも」と思っていたのに、漫画を読んだら「もっと世間に言えよ!」と(笑)。本人もそうでもない風を気取っているけど、十分にあっち(強烈な貧乏)側だよ! と。
九州男児の嫌なところが全部出てくる
――大吉さんが漫画を読まれて、初めて知った内容はありましたか?
大吉 帯にある推薦コメントを書いたときはまだ前半部分しか仕上がってなかったんです。後半に入ると、おじさんたちが登場してずいぶん話が変わる。
清人 おばあちゃんのエピソードだけにこだわって描くつもりはなくて。3人のおじさんたちも一緒に住んでいたし、近所のおばちゃんや幼馴染とか、同級生たちの話も生活に大いに関わってくるので。だから、自然と後半は登場人物が多くなる流れになったんです。
――佐田さん?らしきかたも少しだけ登場されていましたが、今後の展開は考えていますか?
清人 そうですね。今回、描いた部分は幼少期の一部なので。すでに漫画にも登場していますが、学校のクラスメイトや近所のおばちゃんたちのエピソードもまだまだいっぱいありますし、できれば続けていきたいですね。
大吉 表現がちょっと難しいですけど、読みたい気持ちと、読んだらしんどくなるだろうなぁという気持ちが半々です。だって、『おばあちゃんこ』には、九州男児の嫌なところが全部出てくる(笑)。そういうのを見て育って、「あんな奴にはなりたくない」っていう世代なので。山ほどいたもんね、ああいう人たち。
清人 いましたね。もちろんしんどかったときもあるのですが、それでも、みんなに愛してもらっていたとは思っているんです。おばあちゃんにも、周りの人にも。……いや、マサおっちゃん(※同居するオジサンのひとりで、祖母の長男。夜に暴れ回る酒乱)は違うかな(笑)。
大吉 あのオジサンの行動とか、実写だったらシリアスすぎて、本当に辛い気持ちになると思う。冷静に一コマ一コマ見たら、地獄でしかない。映画化はできないやろね。でも漫画だからサラッと読めるっていうのはあるでしょうね。
取材・文/森樹
写真/石田壮一
漫画/おおみぞきよと
おばあちゃんこ
おおみぞ きよと
2024/3/22
1,320円(税込)
160ページ
ISBN: 978-4048976930
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