一度見たら忘れられない「衝撃フェイス」! 「秀逸顔」な国産車3台と「正直理解不能な顔」の国産車3台をデザインのプロが斬る!!
この記事をまとめると
■フロントフェイスが特徴的だった6台の国産車を紹介
■いい意味で個性的だったモデルはテーマがはっきりしているモデルが多かった
■悪い意味で個性的だったモデルはやりすぎ・狙いすぎなモデルが多い
顔がすべてではないけどいいに越したことはない
最近は、自社の特徴を打ち出すために統一化などが展開されているクルマのフロントフェイス。第一印象を左右する重要な部分として、各メーカーとも試行錯誤を繰り返していますが、なかには度肝を抜く強烈な印象を残したクルマもあります。今回は歴代の国産車から、そんな個性的な6台をピックアップしてみました。
近未来的スペシャリティSUVは顔もハンサム
まずは「いい意味」での個性を発揮した3台として、その1台目はいすゞのビークロスとします。
1993年に乗用車市場から撤退したいすゞですが、同年の東京モーターショーに出品した「ヴィークロス」の市販版として、4年後の1997年に登場したスペシャリティSUVがビークロスです。
同社の欧州スタジオに在籍したサイモン・コックスによるスタイリングは、メタリックなアッパーボディとPP素材のボリューム感溢れるアンダーボディの組み合わせが斬新。近未来的な佇まいは唯一無二の存在となりました。
肝心のフロントでは、その上下ボディを挟むように置かれた異形ランプと大きく深いグリルがじつに特徴的。非常にシンプルでザックリとした顔ながら、従来にない魅力的な表情を生み出しました。
これまで見たことがない絶妙のバランス感覚
次は、日産の初代ジュークです。市場が拡大しつつあったコンパクトクロスオーバーSUV市場に対し、2010年に同社が送り込んだ異色作です。
ROBIOTIC(ロバイオティック)、すなわち機械的と有機的な融合をテーマに、日欧で共作したボディは超個性的な佇まい。そもそも、フロント部の飛び抜けたボリューム感自体が特徴的なのに、ポジショニングランプとメインランプを分離した「顔」は見る人を困惑させました。
それでも、造形テーマ自体は明快であり、特異なプロポーションを含めて不思議と納得させられるギリギリのバランス感が絶妙でした。
軽とは思えない強い個性と普遍性
3台目は、8代目となる先代のスズキ・アルトです。比較的柔らかなイメージだった従前型に対し、「原点回帰」をテーマに男性もターゲットとするデザインを目指して2014年に登場。
「装飾的、華美に寄らず、上質でシンプル」なスタイルは外部デザイナーの関与がウワサされたもので、軽規格を感じさせない普遍的なシルエットに。メガネをイメージさせるランプや、フィアット車のようなエアインテークなど、フロントにも強烈な個性を与えました。
走りのワークスではメッキを使って「メガネ」をより強調しましたが、そうした展開性も秀逸ですし、決して子どもっぽくならない点もマルでした。
オラ顔の原点はもしかしたらコンパクトカーにあった?
威圧というより悪目立ちな? 顔つき
さて、後半はよくない意味での「ぶっ飛び顔」として3台を選んでみましょう。まずは2005年登場の2代目トヨタbBから。
カスタマイズ市場を意識した初代は、その素材として「箱」を意識した比較的シンプルなスタイルでしたが、「クルマ型Music Player」をテーマに登場した2代目は、初めから「改造っぽい」ウネりを効かせたスタイルを特徴としました。
とりわけ、悪目立ち全開のフロントフェイスは何とも醜悪で、ストリート系というより悪魔系? いまどきはメッキのオラオラ顔が話題ですが、その原点はここにあったのかもしれません。
ヘンテコリンな顔はもしかしてウケ狙い?
続いては、三菱のミラージュ・ディンゴ。スペース重視のニーズに合わせ、SUW=スマート・ユーティリティ・ワゴンを標榜して1999年に登場した新ジャンルコンパクトです。
「イノベイティブ・コンパクト」をテーマに、初代ミラージュの六角形断面を再現したボディは超個性的。そのテーマに沿ったと思えるフロントも、縦長の五角形? ランプがほとんど理解不能で、とにかく「ヘンテコリン」としかいいようがありません。
よし悪しはともかく、ときおり見せる突飛さが当時の三菱っぽさともいえますが、このクルマに関しては誰かが途中で止めなかったのか? という素朴な疑問は残ります。
メーカー自らが修正した「やり過ぎ」スタイル
最後は比較的新しいところから、先代の4代目トヨタ・プリウスとします。TNGA採用の第1号として走りの良さをアピールし、2015年に登場。
「ICONIC Human-tech」をテーマにしたボディは、前方にピークを置いた低重心のトライアングルシルエットが特徴的。そのアンバランス感もさることながら、縦に伸びる形状不明のランプが置かれたフロントは、よし悪しを通り越した異様さに溢れていました。
当時のトヨタデザインは、ラインをこねくり回した強引な個性化が目立ちましたが、ある意味その頂点がこの顔だったのかもしれません。マイナーチェンジであっさり修正したところに残念さが滲みます。
さて、今回はフロントフェイスに注目して6台をピックアップしましたが、もちろん顔だけに個性があるのではなく、結局はスタイリング全体の話でもあります。「クルマは顔が命」と思われがちですが、それはチョット違うのかもしれません。