伊藤園「お〜いお茶」ベトナム市場開拓へ本腰 子会社を新設 ファンづくりへ店頭活動とサンプリングに邁進
伊藤園は今年、ベトナム市場の開拓に本腰を入れる。
世界各地の茶文化とつながり新たな茶市場を創造することを最終目標に掲げる長期ビジョン「世界のティーカンパニー」へ向けた事業展開の一環。
ベトナム市場には、2014年頃から現地の問屋を通じて、タイで製造された「お〜いお茶 緑茶」の500mlPETと1LPETを中心に“モダントレード”と呼ばれる日コンビニとスーパーに卸している。
販売は上々。上期(24年4月期)販売数量は前年同期比でドリンク32%増、ティーバッグ28%増となった。
海外事業を統括する中嶋和彦執行役員国際本部長は「ベトナムは東南アジアの中で一番高い伸び率で成長している。人口が1億人を超え、私見だが、ベトナムの方は味覚が繊細で、緑茶のおいしさも分かっていただけると思っている」と期待を寄せる。
子会社設立により、これまで未着手だった店頭活動とサンプリングを徹底的に行っていく。ベトナム子会社の代表に就任して単身乗り込むのは村上裕昭氏。
村上氏は、ルートセールス、新規開拓専属の部署を経て、社内公募に応募し希望する国際本部へ異動。以降、社内研修制度を利用してインドネシア、オーストラリアに赴任し、現在、シンガポール( ITO EN Singapore Pte. Ltd.)に在籍する。
ベトナムでは、持ち前の“臆することない性格”で挑む。
代表就任前、取材に応じた村上氏は「留学の経験もなく、正直、英語や現地の言葉はそんなに得意ではないが、入社以来、新規開拓が一番長く、どのような状況でも臆することなくゼロを1にする活動を意識してきた。これから失敗することもあるかもしれないが、どんどんチャレンジしていきたい」と意欲をのぞかせる。
定量目標は“2027年黒字化”。
この達成に向けて、当面はファンづくりに注力する。
ベトナム市場では、有糖の茶系飲料が大勢を占める。さらに、ローカルの飲料と比べて約3倍高い価格差がある。
こうした逆風を乗り越え「お〜いお茶」の価値を1人でも多くの生活者に知らしめ無糖茶飲料の流れをつくりだしていく。
「ファンの数を増やすことが売上につながり、飲用経験者を増やすことにフォーカスする。ローカルの方に当社や『お〜いお茶』について“知っていますか?”と聞いたときに“知っている”“飲んだことある”の返答が得られることを目指したい」と語る。
ファンづくりの第一歩として、村上氏が取り組むのは店頭での売り場のメンテナンスや試飲・サンプリングなどの「お〜いお茶」の認知拡大活動だ。
マーチャンダイザ―(店舗巡回員)とプロモーター(試飲・サンプリングの担い手)のそれぞれの職種で人員を確保し、店頭活動とサンプリングに注力していく。
「ベトナムに限らず東南アジアでは、リスティングフィー(商品掲載料)を払えば商品を棚に並べられる。ただし、そこから売れるようにするのはメーカーの仕事。マーチャンダイザ―の主な役目は、同じ棚でもアイラインの高さに並べることや列を増やすといった店頭活動にある。一方、プロモーターには直接、消費者とコミュニケーションして商品を飲んでいただく。この2つが上手くかみ合わないと売上につながらないと考えている」。
活動の拠点は、ホーチミンに集中する日系、及び現地系のモダントレード。市場の8割を占めるとされるパパママ・ストアなどの“ジェネラルトレード”にも踏み込む。
「現地に赴任するからには、ジェネラルトレードの大きなパイを獲りにいかないといけないが、商品を店舗に納品することがゴールではない。現地のお客様にどのように「お〜いお茶」の魅力を認知していただくかどのように配荷していくかを含めて考えていきたい」と述べる。
コミュニケーション活動は、市川團十郎白猿を起用したグローバル広告「日本には世界一のお茶がある」篇を活用するほかSNSでも発信していく。
SNSでの発信にあたっては「シンガポール、タイ、インドネシアなど周辺諸国の子会社と連携して手応えのあった施策や発信内容を共有していく」。
商品ラインアップとしては、ベトナムのお茶の生産量は世界6位に上ることから引き続き「お〜いお茶 緑茶」の500mlと1LPETPETに注力していく。
ベトナムは世界有数のお茶大国であるが、日本茶や緑茶飲料の競合商品は少ない。
「ベトナムで無糖のお茶をしっかり浸透させて、まずは認知していただく。ベトナムは人口が倍々の勢いで増加し、平均年齢は物凄く若いので、伸びしろがあると感じている」と期待を膨らませる。