トヨタ自動車が「クルマ文化研究所」なる謎の組織を立ち上げた。「オートモビルカウンシル2024」(AUTOMOBILE COUNCIL 2024)のトヨタブースに出現した「架空の」研究所ではあるのだが、同社が全身全霊を傾けてレストアした初代「クラウン」の仕上がり具合には度肝を抜かれた次第だ。

トヨタがレストアした初代「クラウン」(本稿の写真は撮影:原アキラ)

全て国産品でレストアできた?

「トヨタ クルマ文化研究所」のブース中央に鎮座していたのは、1958年(昭和33年)製の初代「トヨペット クラウンRS」だ。「トヨタが本気でレストアしたら、ここまでできる」ということを示すべく、このクルマにスポットライトを当てたのだという。







トヨタが本気でレストアしたら66年前のクルマでもここまでピカピカによみがえる

筆者と同い年のこのクラウンは、観音開きの4ドアを持っているのが特徴。トヨタグローバル生産推進センターレストアグループの川岡大記エキスパートによると、ボディの鮮やかな水色は、当時のカタログや最新デジタル技術でカラー化した古いビデオなどを参考に再現した純正塗色の「ホリゾン・ブルー」だ。





純正のボディカラー「ホリゾン・ブルー」を再現

腕木式のアポロウインカーなどのパーツは、各部門の専門技術者たちが知恵を出し合い、競い合って製作したもの。サイドマークは3Dプリンターで型を作り、当時と同じ亜鉛合金のアンチモンで再生した。

腕木式のアポロウインカー

サイドマークの復元には3Dプリンターを活用

ボンネットを開けると直列4気筒1.5Lの頭上弁式(OHC)エンジンが姿を現した。サイドに貼ってある「58」のステッカーは「58年式」であることを示しているのかと思いきや、聞けば、最高出力58馬力を表しているとのこと。58年式で58馬力という符合がなんだか嬉しい。





ステッカーのオレンジ色は、航空機などでお馴染みの目につきやすいインターナショナルオレンジ。この色は、同じく1958年に誕生した東京タワーに塗られたカラーと同じというおまけ付きだ

川岡さんによると「レストアは全て国産品で」という目標を掲げていたそうなのだが、1点だけ叶わなかったところがあるという。それは、6.4インチのバイアスタイヤだ。ほぼ同じサイズのものを日本のヨコハマタイヤが作っているのを見つけてなんとか取り付けたものの、後になってタイヤ表面に「MADE IN VIETNAM」の刻印を発見。「残念ながら、そこまで見切れなかったんです」(川岡さん)との話だった。

初代クラウン、買うとしたらいくら?

オートモビルカウンシルの会場では、販売中の初代クラウンも見かけた。ヴィンテージ宮田自動車(三重県)が展示していたマイナーチェンジ後の1962年(昭和47年)製「1900デラックス」だ。当時のタクシーなどが採用していたブラックボディの個体である。





観音開きのドアは変わらずだが、アポロウインカーはすでに廃止され、通常の点灯式になっていた







価格は800万円だった

会場で見つけた珍しいクラウンをもう1台。「Walter Wolf Racing」(東京都)が出展していたのが、1970年(昭和45年)の3代目「クラウンハードトップ2000」だ。





3代目「クラウンハードトップ2000」のオープンカーなんてあったっけ?

こちらは、屋根をぶった斬って製作されたオープンモデルである。日本に1台しかないという同モデルは、大相撲の優勝パレードに供されたという経歴の持ち主。価格は1,100万円となっていた。

原アキラ はらあきら 1983年、某通信社写真部に入社。カメラマン、デスクを経験後、デジタル部門で自動車を担当。週1本、年間50本の試乗記を約5年間執筆。現在フリーで各メディアに記事を発表中。試乗会、発表会に関わらず、自ら写真を撮影することを信条とする。 この著者の記事一覧はこちら