1位は60兆円超!「時価総額ランキング」TOP100
日経平均株価が初めて4万円を超えた3月4日(撮影:梅谷秀司)
日経平均が史上最高値を更新するなど、躍進の目立った2023年度の日本株。東京証券取引所の「PBR1倍割れ」是正要請、バフェット買い、さらに賃上げの動きが広まる中で、大きく値を上げた。
昨年3月末に2万8041円だった日経平均は、1989年12月につけたバブル高値3万8915円を更新。この3月末の終値は4万0369円となり、まさに躍進の1年となった。牽引役となったのは外国人投資家による買いといえ、特に主力株への買いがすさまじかった。
大型株主導の上昇で、主力企業の時価総額も大きく膨らんだ。3月末に時価総額が10兆円を超えていた企業は17社。中でも全上場企業中トップとなったのはトヨタ自動車。時価総額を実に30兆円以上増やして61兆円となりダントツだった。
昨年末に子会社のダイハツ不祥事で株価も調整したが、今年に入り業績見通しの再増額で最高益を大幅更新。台数増と販売価格是正が利いたが、これで懸念を吹き飛ばし上場来高値を更新。時価総額はバブル期のNTTを上回り日本企業の過去最高額となった。
エヌビディアの急成長に連動して半導体関連が躍進
自動車の健闘は目立ったが、それ以上に評価を高めたといえるのが半導体関連。2023年度はスマホ向けの需要が冴えず減益見通しが相次ぐが、AI用の半導体として需要が急増するGPUを擁するアメリカのエヌビディアの急成長に連動して多くの企業が時価総額を膨らませた。
3位となった東京エレクトロンは半導体製造装置で世界3位。2024年3月期は営業減益となる見通しでも、新年度の業績回復見通しとともにAI用の需要に期待が高まり、時価総額は前年から約2.5倍となる18.6兆円に膨らんだ。ランキングも12位から一気に3位に上昇した。
半導体シリコンウエハに強い信越化学工業も減益見通しの中でベスト10位内を維持。そして95位から29位にジャンプアップとなったのがディスコ。半導体などの切断・研削・研磨装置で世界首位のメーカーだが2024年3月期は量産用途が苦戦で減益。ただ、新年度はAI半導体向けが貢献し利益が上向く見通し。このAI半導体向けへの期待が株価を押し上げているといえる。2月にエヌビディアが大幅増益のサプライズ決算を発表した際の株価感応度も抜群だった。
ほかに、半導体検査装置のアドバンテストが70位から38位に躍進。先端半導体向けマスク欠陥検査装置など展開するレーザーテックが75位から53位に上昇するなど、半導体関連の人気が目立った。
高配当も評価され銀行株も復活
銀行を中心とした金融機関も大手中心に時価総額を大きく膨らませた。銀行株は、日銀のゼロ金利政策解除が議論される中で利ザヤ改善への期待が高まった。また、減配しない高利回り銘柄という性格も評価されメガバンクは軒並み上昇。三菱UFJフィナンシャル・グループは時価総額2位の座を回復。三井住友フィナンシャルグループは14位から12位に上昇。みずほフィナンシャルグループも32位から26位に順位を上げるなど、上昇が続いた。
昨年後半に相次ぐ不祥事で調整もあった損保各社だが、年明けから高利回りが改めて評価され年度としては大きく時価総額が拡大。業績も火災保険の料率改定もありそろって増益となりそう。結果として東京海上ホールディングスは30位から21位へ、MS&ADインシュアランスグループホールディングスは74位から47位へ。ビッグモーター問題に揺れたSOMPOホールディングスも90位から65位への上昇となった。
高利回り組では総合商社も総じて堅調。7兆円を増やし16位から8位に上昇した三菱商事を筆頭に、いずれも市場の評価が上々だった。世界的な投資家のウォーレン・バフェットによる買い期待も根強かった。
日経平均を構成する大型株は好調だったものの、新興市場のグロース銘柄は低調だった。一部のAI関連などを除けば、大幅増収を続けるものの利益低調で無配の銘柄などは売られる場面が多かった。超金利時代の終焉を見越すマネーの動きも、高財務の安定配当銘柄が選考される結果となったようだ。
コロナ禍で上昇が目立った銘柄群は低迷
大型株のなかでも、下げが目立ったのはコロナ禍で上昇が目立った銘柄群。8000億円以上時価総額を減らし30位に後退したのはダイキン工業。コロナウイルスを不活性化するストリーマ技術なども評価され2021年9月に高値を更新。さらにロシアのウクライナ侵攻を受けた欧州でのヒートポンプ需要の高まりの中で昨年7月に時価総額9兆円を超す場面もあったが、そのヒートポンプが失速すると株価も下落。今年2月発表の四半期決算の不振もあり、低迷が続いてしまった。
コロナ禍の2021年3月末に時価総額5.1兆円に拡大、26位にまで上昇してニューノーマル銘柄の主役となったエムスリーだが、増配を続けても配当利回りはさほど高まらず、依然としてPERなど指標面に割安感が乏しく、顧客の予算圧縮影響などで業績の進捗も鈍かった。さらに、ベネフィットワンをめぐる第一生命との買収合戦も敗退。市場の評価を高めることができず、前年71位からついにランク外へ落ちてしまった。
2020年10月の日経平均採用とコロナ禍の巣ごもり需要期待で2021年4月に高値をつけたネクソンも55位から96位に後退。2023年12月期は営業増益が続くも純益が続落、配当性向の見劣りもあり市場の評価を下げたようだ。
ほかには資生堂、ファナック、ヤクルト本社、アステラス製薬、ニデック、日本ペイント、エーザイ、ユニ・チャームなどが大きく時価総額を減らし、このうちヤクルト本社とエーザイはランク外に去っている。
さて、新年度を牽引するのはどの業種か。出足をみれば、中東情勢の悪化などを受けて全体に低調な滑り出し。なお過熱気味のものは調整懸念もあるが、国内全体では賃上げの動きと新NISAによる資金流入と企業の積極的な還元姿勢が追い風となるはず。
アメリカでは利下げ時期をさぐる動きが活発で、また大統領選を争うバイデンとトランプでは政策が大きく異なるため、選挙戦の進展につれ、その影響も大きく受けることになりそう。回復が遅れる中国経済の行方も注目だ。引き続き市場の動向から目が離せないところだ。
(山内 哲夫 : 東洋経済 記者)