クルマ並みの排気量と装備!それでもバイクでなきゃいけない理由とは!?
最近のクルマはエンジンのダウンサイジングが進み、乗用車やミニバンでも排気量の小さいモデルが増えています。そんな時代に、1923ccと2リッタークラスのクルマ並みのエンジンを積んだバイク、ハーレーダビッドソンの「ロードグライド」と「ストリートグライド」。クルーザーマシンの最高峰とも呼べるモデルに乗って、どんな魅力があるのか体感してみました。
▲左が「ロードグライド」、右が「ストリートグライド」
■2リッタークラスのVツインエンジンを搭載
「ロードグライド」「ストリートグライド」に搭載されているのはミルウォーキー117と呼ばれる1923ccのV型2気筒エンジン。先代モデルよりさらに排気量が拡大されていて、シリンダーボア(内径)は103.5mmと巨大なもの。175Nmという強大なトルクを3000rpmで発揮します。最高出力は107PS/5020rpm。
この2車種に共通するのは、大型のフェアリングを装備し、長距離ツーリングを快適にこなせること。クルーザーを中心とする同ブランドのラインナップの中でも、ツーリングモデルに位置付けられ、本国アメリカでは販売の中心となっているシリーズでもあります。「ロードグライド」は先代モデルまでの2連ライトのフォルムをLEDで再現しています。
一方の「ストリートグライド」は単眼ライトを基調としたフロントフェイスに、イーグルが羽を広げた姿をオマージュしたLEDのデイタイムライトを配置。どちらのモデルも空力を徹底して煮詰められていて、ライダーの体はもちろんヘルメットに当たる走行風を低減し、快適なライディングを実現しています。
インフォテイメントシステムに力を入れているのも、両モデルに共通する特徴。オーディオシステムも昔から搭載されていて、バイクでありながらカセットテープの時代から再生することができました。現行モデルではメーターパネルが全面タッチスクリーンとなり、Apple CarPlayにも対応。メーターと同じ画面にオーディオやナビゲーションを表示できるようになっています。
車両重量は380kg(ロードグライド)と368kg(ストリートグライド)と超重量級ですが、先代モデルに比べると大きく軽量化されています。重量配分も見直されていて、スタンドから車体を起こすだけでも操作感が軽くなっていることが感じられました。
■バイクらしさを感じられる乗り味
2リッター近い排気量に座り心地の良いシート、そして充実のインフォテイメントシステムと、クルマに近い快適性を確保している両モデル。長距離ツーリングを快適にこなせることは想像に難くありませんが、ここまで行くと“もうクルマでいいのでは?”と感じる人もいるかもしれません。筆者も、どちらかというと軽快な小排気量車が好きな方なので、超重量級のクルーザーにどんな魅力があるのか? バイクらしさは感じられるのか? という視点で試乗してみました。
エンジンをかけると、股の下でとてつもなく大きな金属の塊が動いているような鼓動感に驚かされます。1つのシリンダーが1000cc近くあるV型エンジンなんて、ほかにはなかなかありませんからハーレーダビッドソンならではの魅力のひとつといえるでしょう。近年の静音性に優れたスムーズに回るクルマのエンジンとは一線を画する個性でもあります。
走り出すと、車体の安定感はやはりレベルが高い。重量があるので、はじめは緊張していましたが、低速でもタイヤが転がっていれば重さを感じることがありません。意外なことにハンドリングも軽快で、車体を少し傾ければ軽くハンドルが切れるので、想像したよりも小回りが効きます。街乗りに向いたマシンとはいえませんが、ハンドリングはバイクっぽくて、路地などを走っても楽しむことができました。
幹線道路や高速道路を走ると、さすがの快適性に唸ります。シートの座り心地も良く、前方に足を投げ出したようなフォワードコントロールの乗車姿勢ですが、どこにも力が入らないので楽に走り続けられる。大型のフェアリングのおかげで、体に風圧を感じることもなく、長時間乗っても疲れは少なそう。それでいて、風を切って走っているバイクならではの爽快感はしっかり感じられるのが意外なところでした。両車とも、フェアリングの中央部に風を入れる導入口が設けられているので、より風を感じたければここを開けることで調整が可能です。
安定感と快適性は高いレベルにありますが、乗っている感覚は完全にバイクのもの。風が感じられるだけでなく、操作感も2輪らしい軽快感があるのでツーリングしている楽しさが味わえます。それでいて、大排気量ならではの余裕があり、追い越しなどではアクセルを軽く開けるだけで車体の重さを感じさせない勢いで加速します。
ちなみに、オーディオはライダーに音が届くようなチューニングがされているようで、高速道路を走っているようなシーンでも、しっかり音楽が耳に届きます。それでいて、風を切っている音もしっかり感じられるので、クルマの中で音楽を聴いている感覚とは一線を画するもの。バイクに乗りながら音楽も楽しめるというのは、新しい感覚でした。
バイクらしい爽快感やスピード感を味わえながら、疲労の少ない快適性も持ち合わせているというなかなか類のない乗り物が「ロードグライド」と「ストリートグライド」でした。長い直線が続く北米で売れているのは納得のいくものですが、街中を走っても意外な軽快感と操作性の良さを感じることができます。
筆者はどちらかというと軽量なスポーツモデルが好みでしたが、これはこれで楽しく、このまま乗って遠出したくなる魅力を味わうことができました。長距離ツーリングやクルージングが好きなライダーや、一度体感してみてほしいマシンです。
>> ハーレーダビッドソン
<取材・文/増谷茂樹>
増谷茂樹|編集プロダクションやモノ系雑誌の編集部などを経て、フリーランスのライターに。クルマ、バイク、自転車など、タイヤの付いている乗り物が好物。専門的な情報をできるだけ分かりやすく書くことを信条に、さまざまな雑誌やWebメディアに寄稿している。
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