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●大阪で長年愛される老舗『洋食屋 ふじ家』。名物メニューを一度に楽しめる「スペシャル定食」を食べてきた。

「大大阪時代(だいおおさかじだい)」と呼ばれていた大正後期から昭和初期にかけて、近代的なビルが次々と建てられた大阪・堺筋界隈。現在はオフィスビルが乱立するビジネス街として知られていますが、当時から愛され続ける名店が数多く残っています。

 堺筋本町駅から徒歩10分ほどの場所に、昭和10年(1935年)創業の大阪を代表する名店『洋食屋 ふじ家』があります。20年ほど前、先代の引退を機に『Fujiya1935』として生まれ変わりましたが、常連客からの熱い要望により見事復活。ミシュランビブグルマンにも選ばれており、街の食堂として長年愛され続けています。

80年以上愛される名店

 同店の名物メニューはエビフライとハンバーグ、クリームコロッケ。その3つが一度に楽しめる「スペシャル定食」があるという情報を入手したので、早速行ってみました。

 平日のお昼過ぎにお店を訪れたところ残念ながら売り切れ。どうしても食べたかったので翌日リベンジする旨を伝えると「わかりました! 明日1食分取っておきますね」と声をかけていただきました。今日こそは! とワクワクしながら入店すると「昨日のスペシャル定食のお客様ですよね」と店員さん。たった1分にも満たない会話だったのに覚えてくれていたなんて……。優しい気遣いに心が温まります。

名物メニューを一網打尽! 夢が詰まった「スペシャル定食」

「スペシャル定食」2900円

 カウンター席に座り、ピカピカに磨き上げられたキッチンと無駄のない動きに見とれていると、お待ちかねの「スペシャル定食」が到着。メインディッシュのほかに、サラダと白ご飯、味噌汁、食後にはアイスクリームがついています。

有頭エビを丸ごと使用

 まずは大きな有頭エビを使ったエビフライからいただいてみましょう。衣はサクサク、中はぶりっぶり、口いっぱいにエビの旨味が広がります。レモンを絞ってさっぱりいくのも良し、タルタルソースをたっぷりつけて豪快に食べるも良し。贅沢感を楽しめる大人のエビフライです。

 ふと気になって頭の部分をのぞいてみると、身がぎっしり詰まっています。どうやって食べようか迷っていたら店員さんがやってきて殻の外し方を教えてくれました。「殻についているミソも美味しいので食べてみてくださいね」とのこと。旨味たっぷりの身に濃厚なミソをつけて、余すことなく食べ尽くしました。

クリームコロッケはカレー風味が特徴的

 真ん中にあるのはカレー風味のクリームコロッケ。中にはエビとホタテ、マッシュルームが入っています。カレーというと香りと味が強いため、エビやホタテが負けてしまうのでは? 思っていたのですが、バランスがなんとも絶妙。

 サクッとした衣に歯を入れると、まずはスパイスの香りとミルクのまったり感が感じられ、後から魚介の風味が押し寄せてきました。これが老舗の味か……と唸らずにはいられない一品です。

肉汁と旨味が溢れ出す [食楽web]

 こんがりと焼かれたハンバーグは、肉々しくてジューシー。ナツメグやこしょうなどのスパイスが効いていて、ガツンと肉の旨味がやってきます。2週間かけて作るというデミグラスソースは苦味が強めで塩分は控えめ。パンチのあるハンバーグと上手くマッチしています。

 店員さん曰く、ソース類は市販品を一切使わず全て手作りしているのだとか。一つひとつ丁寧に作っているからこそ、地元の人から長年愛され続けるのでしょう。

食後のアイスクリームでさっぱりと

嬉しいデザート付き

 最後はバニラビーンズがたっぷり入ったアイスクリームが運ばれてきます。揚げ物とハンバーグをたらふく食べて少し脂っぽくなった口がスッキリ。実はアイスがつくことを知らずに注文したので、ちょっとしたサプライズ感があり大満足でした。

まとめ

『洋食屋 ふじ家』には料理への並々ならぬこだわりと、店員さんの気遣いが溢れています。美味しい料理と優しい接客にお腹も心も満たされました。「スペシャル定食」は2900円と少々スペシャルな価格ですが、一度その味を知ると納得するはず。頑張ったご褒美にぜひ食べてみてください。

(撮影・文◎安達春香)

●SHOP INFO

店名:洋食屋 ふじ家

住:大阪府大阪市中央区鎗屋町2丁目2-1
TEL:06-6941-7283
営:11:30~14:00、17:30~21:30
休:日曜・祝日