ダイレクトカーズが開発した新型キャンピングカー「ニンジャ」。車両本体価格(税込み)は、2WD車が1298万円、4WD車は1328万円となる(筆者撮影)

近年、人気が高いキャンピングカーのなかでも、とくに高級感が際立つキャブコン(キャブコンバージョン)と呼ばれるタイプに、「ニンジャ(NINJA)」というユニークなネーミングの新型モデルが登場した。

三重県を拠点とするダイレクトカーズが開発したこのモデルは、名前だけでなく、その装備も独特。同社が「からくり仕掛け」と呼ぶギミックを施すことで、従来にない大容量の収納スペースを確保。キャンプや車中泊だけでなく、アウトドアのレジャーやスポーツ向けの用品なども存分に積載できることが特徴だ。

ここでは、快適なクルマ旅はもちろん、多様化する外遊びのニーズに対応した新機軸の新型キャンピングカーを「ジャパンキャンピングカーショー2024(2024年2月2〜5日、千葉県・幕張メッセ)」で取材したので紹介しよう。

充実した装備が魅力のキャブコンとは


新型キャンピングカー「ニンジャ」の外観(筆者撮影)

ニンジャは、前述のとおり、キャブコンバージョンの略称、キャブコンと呼ばれるジャンルに属するキャンピングカーだ。これはベース車の運転席部分のみを残し、車体のほとんどをオリジナルのキャビン部(室内空間)に架装したタイプを指す。広い室内や豪華な装備を実現する一方、多くのモデルが1000万円を超える高価格。そのぶん、愛好家たちが「いつかは所有してみたい」と憧れる高級キャンピングカーだといえる。

このキャブコンだが、国産モデルでは、とくにトヨタのキャンピングカー専用シャシー「カムロード」をベースにしたモデルに人気が集まる。ニンジャも同様で、カムロードの2.8L・ディーゼルエンジン車をベースに、個性的な外観や装備を施している。なお、今回紹介する展示車両はリアにダブルタイヤを装着した2WD車だが、ラインナップには4WD車も用意している。

新型の高級キャンパー「ニンジャ」の外観


後ろから見たニンジャの外観(筆者撮影)

ダイナミックなエクステリアデザインを採用しているニンジャの外観。とくにオプションで設定されているオリジナルのフロントマスクが先鋭的な印象を強調している。

ボディサイズは、全長5160mm×全幅2060mm×全高2950mmと大型で、車体前方の屋根には、バンクベッドと呼ばれる就寝スペースも備える。また、ルーフの後方にはボディと一体成型のスポイラーも採用し、リアビューにスタイリッシュさを演出。ルーフトップの空気の流れを調整する機能も持つことで、走行安定性にも寄与している。ちなみに今回の展示車両の場合、乗車定員は7名、就寝人数は5名だ。

「からくり仕掛け」の収納ボックス


車体サイドの収納ボックスを引き出した状態(筆者撮影)

外観デザインもかなり個性的なニンジャだが、よりユニークなのが、先述した「からくり仕掛け」。その実体は、車体の左サイド部とリアバンパー部に内蔵している大容量の収納ボックスだ。

さまざまな用途に使えるこれらのボックスは、いずれもスライドレール付き。停車時に車外からノブを引くだけで簡単に引き出すことが可能だ。また、フタ付きなので荷物が汚れたり、紛失したりする心配もないし、キーロック付きのため防犯対策も万全だ。


車体サイドの収納ボックス(筆者撮影)

そして、走行中や車両を離れるときなどは、車体内へ戻せば存在すらわからない。つまり、こうした特徴が「からくり仕掛け」と呼ぶ所以なのだ。しかも、これらのボックスは、キャビン部(室内)床下に設置するため、室内の広さを犠牲にしない。走行中は車体に余計な出っ張りもないため、走行安定性も十分に確保できるといった利点を持つ。


車体後方の収納ボックス(筆者撮影)

各ボックスは、左サイド部のサイズが長さ1350mm×幅480mm×高さ450mmで、容量270L。リアバンパー部のサイズは、長さ1870mm×幅530mm×高さ360mmで、容量290Lだ。いずれも、かなり大型で、深さ(高さ)も十分あるため、キャンプ用品をはじめ、アウトドアスポーツなどのアイテム、汚れ物など、さまざまな荷物を積載できる。とくに、より大型になっているリアバンパー部のボックスは、スキー板などの長尺物も収納可能だ。


収納ボックスは、大人も余裕で入れるほどの広さを確保している(筆者撮影)

余談だが、今回のショーでは、このモデルのお披露目会、いわゆるアンヴェール式も開催された。式では、各収納ボックス内に、忍者の衣装を着た2名の同社スタッフが潜んでいて、ボックスを引き出すと飛び出し、チャンバラを行うといったアトラクションも披露。会場をわかせるとともに、「大人も入ることができる」ほどの大容量であることをアピールしていた。

キャブコンならではの充実した室内空間


室内への出入り口は車体後方に配置される(筆者撮影)

一方の室内。このモデルの出入り口は、一般的なモデルがキャビン部の前方に設定するのに対し、車体左の後方にあるリアエントランス式だ。ドアを開けてステップを上ると、迫力ある外観の雰囲気と違い、明るく落ち着いたインテリアが目に入る。


キッチンスペース(筆者撮影)

入ってすぐの場所には、シンクとコンロがセットになったキッチンを設置。キッチン下に備え付けられた家具には、2つの引き出し式と扉付きの収納スペースもあり、上部には戸棚や換気扇も装備する。その隣にはバスルームをレイアウト。カセット式トイレとシャンプードレッサーを設置する。また、さらにその横には、クローゼットや90Lの大型冷蔵庫も備えるなど、高い利便性を確保している。


L字のソファとテーブルがセットされたリビングエリア(筆者撮影)

室内の後方から前方に広がるリビングエリアには、L字型ソファとテーブル、2人掛けシートをセット。リアエントランス式のため、一般的モデルのようにリビングに入り口がないぶん、スペースはより広い印象だ。また、テーブルを取りはずし、マットを敷き詰めればフルフラットのベッドスペースに。就寝時だけでなく、座敷スタイルのリビングとしての活用も可能だ。

そして、車体前方、運転席の上部にも、バンクベッドと呼ばれる就寝スペースを備える。ベッド部は、使う際にフロア部分を引き出すことで拡張でき、ゆったりとしたスペースを確保する。また、使わないときにはフロント側へ収納することで、リビングの天井を高くでき、圧迫感のない快適な空間を演出する。


展示車両の装備や価格について(筆者撮影)

ほかにも、このモデルには、ボイラーを装備することで、温水シャワーの利用も可能で、冬場の洗い場などにも重宝する。また、リビングエリアの棚には家庭用エアコンも設置。快適な室内温度を設定できるほか、ウッド調のカバーを装備することで、室内インテリアにマッチさせる工夫も施している。なお、このモデルの価格(税込み)は、停車時に展開すると車外の日よけとして使えるサイドオーニングなどのオプションが付いた展示車両の場合で、1433万1000円だ。

大容量収納で独自性をアピールする


後方の収納ボックスは、スノーボードなどの長尺物も余裕で積載可能(筆者撮影)

依然として活況なキャンピングカー業界では、近年、1000万円を超す高級モデルについても、激しいシェア争いが続いている。そのため、各メーカーでは、それぞれ独特の手法を用いて差別化を図り、より多くのユーザーへの訴求を図っている。


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今回紹介したニンジャも、室内の豪華さなどに加え、大容量の収納スペースを確保するといった付加価値を加味することで、他社モデルにない独自性を追求した例だといえる。今後も、こうしたオリジナル性を追求しつつ、ユーザーの快適性や利便性などをさらに高めたモデルが、続々と登場することが予想できる。

(平塚 直樹 : ライター&エディター)