大腸の精密検査の種類はご存じですか? 便潜血検査で「異常あり」のときの対処法も医師が解説

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便潜血検査で異常が認められた場合、精密検査を受けることになりますが、一体、どの検査を受けたらいいのでしょうか。「大腸カメラ検査」「大腸CT検査」「大腸X線検査」の違いについて、「熊本みなとクリニック内科・内視鏡内科」の岩粼先生にお聞きしました。

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監修医師:
岩粼 智仁(熊本みなとクリニック 内科・内視鏡内科)

早稲田大学教育学部卒業、熊本大学医学部卒業。その後、熊本市民病院、済生会熊本病院などの基幹病院で消化器内科医として経験を積む。2023年、熊本県熊本市に「熊本みなとクリニック 内科・内視鏡内科」を開院。日本内科学会総合内科専門医、日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会専門医・上部消化管内視鏡スクリーニング認定医・大腸内視鏡スクリーニング認定医。熊本県難病指定医。

便潜血検査で「異常あり」、精密検査が必要?

編集部

便潜血検査で異常が認められた場合、どうしたらいいのでしょうか?

岩粼先生

便潜血検査で異常が認められたということは、「便に血液が混ざっていた」ということです。便潜血検査では、目に見えない血液についても調べることができます。異常が見つかったら、必ず消化器内科や内視鏡内科などの専門医を受診しましょう。

編集部

精密検査では、どのようなことをおこなうのですか?

岩粼先生

一般的には、大腸カメラ検査(下部消化管内視鏡検査)をおこないます。それにより、大腸がんや大腸ポリープ、潰瘍性大腸炎、クローン病などを見つけることができます。

編集部

便潜血検査で陽性反応が出るのは、結構確率が高いのですか?

岩粼先生

報告によると、約6~7%の確率で要精密検査になるとされています。決して大きい数値ではありませんが、その中で実際に精密検査を受けた人は70%弱という報告もあります。精密検査は初期のがんを見つけるのに非常に重要な検査なので、要精密検査と指摘されたら必ず検査を受けるようにしましょう。(※)

※日本対がん協会「検診の意義と目的」

精密検査は何をするのか?

編集部

精密検査では何をするのですか?

岩粼先生

一般的なのは、大腸カメラ検査で、肛門から内視鏡ファイバーを挿入し、大腸の様子を直接、観察する検査です。大腸を検査する方法はいくつかありますが、大腸がんを見つけられる確率が最も高いというエビデンスがあることから、大腸カメラ検査が精密検査の第一選択とされています。

編集部

ほかには、どのような検査があるのですか?

岩粼先生

大腸CT検査や大腸X線検査などもあります。

編集部

大腸CT検査とはどのような検査ですか?

岩粼先生

大腸カメラ検査と同様、下剤を服用して大腸の中を綺麗にした後、肛門から炭酸ガスを注入してCTを撮影する検査です。大腸だけでなく全身の臓器を評価することができたり、大腸内視鏡検査では見にくいヒダの裏側も観察できたりするメリットがあります。

編集部

大腸CT検査の方が大腸カメラ検査よりも苦痛が少なそうです。

岩粼先生

たしかに、大腸カメラ検査よりも大腸CT検査の方が身体的な苦痛は少ないとされています。しかし、大腸カメラ検査であれば病変組織を採取し、一度の検査で確定診断をつけることができる一方、大腸CT検査は病変を見つけた場合、後日大腸カメラ検査を受けなければなりません。一度の検査で確定診断までつけられるという点で、大腸カメラ検査が推奨されているのです。

編集部

なるほど、だから大腸カメラ検査を選択するケースが多いのですね。

岩粼先生

はい。それから、大腸カメラ検査と比べて大腸CT検査は、どうしても精度が低くなってしまいます。特に、大腸CT検査では平坦な病変や小さな病変を見つけることは難しいので、より早期のがんを見つけるなら大腸カメラ検査が向いているという結論になるのです。

精密検査を受けるときの注意点

編集部

大腸X線検査についても教えてください。

岩粼先生

肛門にチューブを挿入し、バリウムと空気を入れて体位を変えながらX線撮影をする検査です。痛みがほとんどないというメリットはありますが、大腸CT検査同様、組織の採取ができないので確定診断がつけられないデメリットがあります。また、放射線被曝のリスクもあります。

編集部

やはり、大腸X線検査よりも大腸カメラ検査の方がいいのですね。

岩粼先生

はい。現在、大腸X線検査をおこなう医療機関はほとんどないと思います。ただし、手術を繰り返しおこなっていてどうしても内視鏡ファイバーを挿入できない人や、痛みが強くて大腸カメラ検査ができない人には、大腸X線検査や大腸CT検査をおこなうことがあります。

編集部

精密検査を受ける際の注意点はありますか?

岩粼先生

なによりも、必ず精密検査を受けるということです。大腸がんは早期に発見すれば治癒が見込める疾患です。「便潜血検査で異常が指摘されたのは一度だけだから大丈夫」と自己判断せず、必ず専門医を受診しましょう。

編集部

「大腸カメラ検査は苦しい」というイメージがあります。

岩粼先生

たしかに、下剤を飲むのが大変だったり、カメラを挿入する時に苦痛を伴ったりすることもあります。しかし、下剤には様々な種類があり、飲みやすいものもあります。また、医療機関によっては鎮静剤を使って苦痛を和らげて検査をおこなってくれることもあります。

編集部

「忙しくて精密検査を受ける時間がない」という人も多いと思います。

岩粼先生

そういう人も多いと思いますが、実際に内視鏡で検査をおこなう時間は30分程度です。ただし、前処置もあるのでトータルで約半日かかることになりますが、午前中早い時間に検査をおこなえば、午後から出勤できることもあります。また、土日に検査をおこなっている医療機関もあるので、お近くの医療機関に相談してみてください。

編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

岩粼先生

便潜血検査が陰性であれば、大腸カメラ検査を受ける必要がないかというと、必ずしもそういうわけではありません。便潜血検査で異常が見つからなくても、大腸に異常がないわけではなく、知らず知らずのうちに病気が進行していることもあります。40歳になったら、まずは1回、大腸カメラ検査を受けましょう。また、初回の大腸カメラ検査でポリープなど何らかの異常が見つからなかったら、3~5年後に2回目を受けることも忘れずにお願いします。定期的に検査を受けることで、大腸がんなどの早期発見につながりやすくなります。大腸がんは早期発見すれば命が助かることが多い疾患なので、必ず定期的に大腸カメラ検査を受けましょう。

編集部まとめ

「大腸カメラの検査は苦しい。CT検査やX線検査の方が楽」と考える人も多いと思いますが、精度を考えれば大腸カメラ検査が第一選択肢とのことでした。40歳になるとがんを発症する人が増え始めるので、まずは一度、大腸カメラを受けるようにしましょう。

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