大谷選手の結婚が統計的に「ナチュラル」な理由
韓国到着時のドジャース・大谷翔平選手(写真:Yonhap News Agency/共同通信イメージズ)
大谷翔平さんの結婚発表で日米のファンやマスコミが大いに盛り上がっています。彼ほどのスーパースターの結婚は「天上人の結婚」と誰の目にも映るでしょう。
ただ、人口動態のデータを分析している筆者から見ると、彼の結婚はびっくりするほどの「ナチュラル婚」となっています。一体、どういう意味でしょうか。今回は彼の統計的に見た「ナチュラル婚」ぶりを解説してみたいと思います。
初婚同士結婚・男性29歳婚の意味
大谷さんの29歳という結婚年齢を知って、皆さんはどう思ったでしょうか?「平均よりちょっと早いな」「20代での結婚って早くない?」といった感じでしょうか。
以下のグラフを見てみましょう。
2022年に初婚同士での結婚を果たした男性のうち、実に半数以上の56%の男性が大谷さんと同じく29歳までの男性です。男性といえどもグラフからわかるように、30代後半からの婚活は厳しいものとなり、40代以上の男性の初婚同士の結婚ともなると、全体の8%に過ぎません。
また、30代後半以降の男性は全体の20%を占めますが、「じゃあ5人に1人は30代後半以降の年齢で結婚できるんだ」と読むべきではなく、そのような確率で結婚した男性は「そもそも婚活が不要で女性から寄ってくるスペックの方」である可能性が高い男性たちともいえるでしょう。
2022年において初婚男性の婚姻届の提出が最も多かったのは27歳で、26歳、28歳と続きます。この順番に「思っていたより若い!」と驚く方は多いかもしれませんが、男性の婚姻届の提出が多い年齢のゾーンは女性とまったく同じです。
さらに男性の初婚年齢はコロナ禍以降、低下傾向(早婚化傾向)にあります。2000年代以降、28歳が最多提出年齢の年もありましたし、ここ10年ほどは27歳が最多提出年齢の年ではあっても、27歳、28歳、26歳の順番となっていました。しかし2021年からは27歳、26歳、28歳の順となっています。
男性の平均初婚年齢が31歳の意味
男性の平均初婚年齢が31歳というのは高齢者の結婚で平均値が大きく引きあがっているだけで、最多年齢の27歳は20年前と変わらないのが実態です。「高齢者の結婚の発生」による平均初婚年齢の上昇を「晩婚化=適齢期年齢の上昇」と捉えて、イメージだけで「男性の結婚は遅くても大丈夫」と思い込んでいる方が多いと結婚支援の現場の方からは伺いますが、そうであるならば、この勘違いこそが日本の未婚化の大きな原因のひとつとなっているようにも思います。
大谷さんは、「書類がいろいろあったので、整理しないといけないところもあったので、時期的にもうちょっと早めにしたかった」ともコメントされています。そのため、婚約は2023年にされているそうです。仮に本来は28歳での結婚希望があったということになると、日本で3番目に多い「超適齢期婚」を目指していたともいえるでしょう。
大谷さんとパートナーの写真が球団SNSから公開され、妻となった方のご年齢等がほぼ確定でわかっています。27歳の方だろうとのことで、夫が2歳上の結婚となります。
これもあまりにナチュラルな年齢差で驚きました。2022年の初婚同士男女の結婚年齢差ベスト5は以下の通りです。
大谷さんは表の4位の「夫2歳上」に該当しますので、こちらも統計的に見て極めて妥当な年齢差となっています。ちなみに初婚同士の結婚において、男女1歳差以内の結婚は12万0162件で、全体の47.0%を占めます。そして男女2歳差以内の結婚では15万7458件で61.5%となり、やはり大谷さんの結婚は統計的に見てとてもナチュラルな結婚となります。
普通じゃないからニュースになる、ニュースの罠
大谷さんの結婚は国際的に著名なスポーツプレイヤーの結婚ということで、大きくニュースで取り上げられています。しかし、その年齢については一切、特に取り沙汰されていません。どうしてでしょうか?
それは「ナチュラル婚」だからです。普通のことは、ニュースのネタにはならないのです。
過去には男性芸能人の20歳以上年下の女性との結婚などが取り上げられ、当時は結婚相談所に40代の男性から「20代の女性は登録しているのか」といった問い合わせが多くなった、という話も結婚支援の現場の方から伺いました。
しかし、気を付けねばならないのは「ありえないことほど騒がれる、ニュースのネタになる」ということです。
大谷さんはスポーツ界における超大物で、ほとんどの人が追随できる婚活スペックの方ではありません。しかし、そのマッチング年齢においては、極めてナチュラルな「王道ナチュラル婚」の道を進まれました。大物なのにナチュラルな結婚を目指されたところが、大谷さんの「自然体」の魅力をさらに輝かせているように感じます。
(天野 馨南子 : ニッセイ基礎研究所 人口動態シニアリサーチャー)