口癖ひとつで、その人のバイアスがわかる!?(写真:GARAGE38/PIXTA)

「認知バイアス」という言葉をご存じでしょうか?

ある特定の状況下で起こる認知の「偏り」や「歪み」によって、脳の判断にバイアスがかかってしまうことをいいます。それにより、判断を誤って失敗することも……。

そんな「認知バイアス」の罠にはまることなく、上手に活用するスキルをご紹介したのが神岡真司著『脳のクセを徹底活用!「認知バイアス」最強心理スキル45』。本書より、ビジネスや日常で使える「認知バイアス」の活用法を、3回に分けてご紹介します。

ウソを見破る・ウソをつき通す

■身体変化の観察

「それってウソでしょ?」などと突然指摘されると、誰でも慌てるものです。「ウソをつくこと=悪いこと」という「公正世界仮説」という認知バイアスに反するからです。

まずは「ウソでしょ?」と認知を揺さぶる時の方法です。

・疑念を指摘した後、黙って見つめる(相手を不安にさせる)。
・カマをかける(「見た人がいる」などの決定的な証拠があるかのように匂わす)。
・アリバイ証明を求める(真実性を担保する証拠を今すぐ提示するよう促す)。

こうして追求した場合、ウソをついている時には特徴的な変化が現れます。バレたら困る―という緊張感によって、平常心ではいられなくなるからです。

・目が泳ぐ。
・早口になる。
・まばたきの回数が増える。
・汗ばむ。
・落ち着きがなくなる。
・言い間違いをする。
・話題を転換したがる。話を終わらせようとする。
・怒って否定する。

ウソがばれなかった安堵の仕草

その後に何とか話が収束できると、次のような動作や仕草も現れるでしょう。

・唇を舐める。
・口元に手がいく。
・首や胸に手をやる。
・口角の片側が上がる。

これらは「バレなかった」「うまく言い逃れた」という時の安堵の仕草です。こうした相手の反応をしっかり観察することで真偽を見極められるのです。


(イラスト図版:山崎平太/ヘイタデザイン)

では反対に、ウソをつき通す時には、どんな手段をとればよいのでしょうか。

・状況の変化で誤魔化す(結果が出ていても途中と言い張る)………たとえば「あの取引は失敗したのか?」と上司に質されても、「〇〇の事情で今はピンチです」と取り繕い、奮闘中の状況を演出して、フェードアウトであきらめさせる。
・事実関係の誤認にする(約束した時は、勘違いによる約束)………「バーキンを買ってくれる約束はウソだったの?」の催促には「実はあんなに高価とは知らなかったんだ、ゴメンよ」と判断ミス・勘違いだったと強調して誤魔化す。
・物的証拠が出ても別の理由を主張する………「このラブホテルの割引券は何?」とパートナーから詰問されたら、「今度の仕事で作る割引券のサンプルとして印刷会社からもらったモノ」と言い張る。
・不可抗力で結果的にウソをつく形になっていると称する………「妻と別れて私と結婚するってウソだったの?」という難詰には「妻が急に難病になったので、今は事情が変わった。回復したら離婚するよ」と闇雲に先送りにします。

とにかく大胆不敵に堂々とシラを切り、ウソかホントかを曖昧にすることです。

まとめ ウソを見抜くには、相手の身体の変化に注目しよう。

口癖で探る認知バイアス

■確証バイアス、ダニング・クルーガー効果


「血液型性格占い」は、科学的根拠がなく、統計学的にも否定されています。それなのに、「そんなことはない。A型の山崎さんは几帳面だし、B型の吉田さんはズボラでいい加減なところがあるし……」などと、反論する人がいます。

これこそ「確証バイアス」の成せるワザで、自分の考えに都合のよい証拠だけを集めた偏った判断にすぎません。

また、能力の高い人ほど、自分を謙虚に過小評価していたり、卑下する傾向さえあるでしょう。反面、能力の低い人ほど、「井の中の蛙」現象の「確証バイアス」で自己評価が驚くほど高かったりします。

これは「優越の錯覚」から生じる「ダニング・クルーガー効果」という有名な認知バイアスです。能力が高い人ほど「メタ認知(自分を客観視)」することに優れ、能力の低い人ほど、それが弱いからです。

こうした認知バイアスは、誰にでも生ずるもので、人の性格形成にも多大な影響を及ぼしています。周囲の人を観察すれば、いろいろな口癖からも、性格に反映された認知バイアスの傾向が見て取れます。

とりわけ「確証バイアス」に陥りがちな人の口癖には次のようなものが目立ちます。

・「なるほど」「たしかに」……相手に共感しているかに見えますが、内心は自分の意見に固執する傾向が強い人です。
・「でも」「だけど」「というか」……相手の意見に批判的で逆説の接続詞を使いがちです。自分の主張を押し通したく、自己愛やプライドの高さが窺えます。
・「要するに」……相手の話を要約してまとめたい人で、仕切りたがり屋です。
・「一般的には」……自説に普遍性をもたせたく、押し付けがましい性向です。
・「やはりそうだったか」……物事の帰趨を見通していたかに装いますが、気まぐれの人です。単なる「後知恵バイアス」で自己正当化を図りたいのです。
・「きっと」「必ず」「絶対」……自分に自信がなく自分を鼓舞する性向の人です。
・「ちなみに」……親切に周辺情報まで伝えたい人ですが理屈っぽい傾向です。
・「それはそうと」……他人の意見を聞くより、自分の意見を主張したい人です。
・「とにかく」……面倒くさいことは省いて、自分の主張に賛同させたい人です。
・「とりあえず」「一応」「まあ」……争いを好まない温厚な性格ながら、間違っても責任をスルーしたい自信のないタイプです。


(イラスト図版:山崎平太/ヘイタデザイン)

客観性を説くことで罠から解放

ざっと見ても、「自分に都合のよい証拠があれば飛びつきたい」「自分に自信がないので自分を補強する材料が欲しい」といった性向が窺える人たちでしょう。こうした口癖のタイプの人が、容易に「確証バイアス」の罠に陥りやすいのです。

客観性を説くことで、そうした罠から解放してあげることも必要でしょう。

まとめ 口癖からも、相手のバイアスがわかる!

(神岡 真司 : ビジネス心理研究家 日本心理パワー研究所主宰)