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持ち主から預かった高級腕時計をレンタルするサービス「トケマッチ」。今年1月に突然終了・解散したことで話題になっていたが、元代表が警視庁に指名手配されるにいたった。ドバイへ出国した記録があるといい、ICPO(国際刑事警察機構)を通じて国際手配するという。

元代表には、客から預かったロレックス1本を65万円で売却した「業務上横領」の疑いが持たれており、このほかにも多数の腕時計が持ち主に返還されていないとして問題になっている。

近年、こうした儲け話による被害があとを絶たない。消費者被害に詳しい金田万作弁護士は、「昔からある手法なのにひっかかってしまう人は多い。そんなにうまい話はないので慎重に判断を」と注意を呼びかけている。

●「昔からある手法なのにだまされる」

元代表には今のところ「業務上横領」の容疑がかけられているが、当初から預かる腕時計を売却する意図があれば「詐欺」になる可能性もある。

「当初から第三者に売却する目的で、持ち主から腕時計を預かったとすれば、詐欺罪にも該当します。ただ、詐欺の故意を立証できるかわからないため、とりあえず業務上横領での捜査になっているのだと思います」(金田弁護士)

では今回、時計が戻ってこなかったオーナーは腕時計を取り戻すことはできるのだろうか。

「被疑者の手元にある場合には、当然返還請求はできます。既に売られてしまい、第三者の手元にある場合でも、2年以内であれば、第三者が支払った代価を弁償すれば、返還(回復)の請求が可能です(193条・194条)」(金田弁護士)

事情を知らなかったのであれば、時計の所有権は時計を買い取った現在の持ち主(善意の第三者)にあり、元の持ち主が返還してもらうには相応のお金がかかる。

最終的には、被害回復のため元代表を訴えるなどの展開も考えられるが、相手方に十分な資産がない場合なども考えられ、元の持ち主の被害回復は容易ではないようだ。

「高級腕時計を預けるのもお金を預けるのも同じで、一度詐欺師の手元にお金や物を渡してしまうと、権利はあっても取り返すのは大変です。

本件もレンタルオーナー商法の一種であり、昔からある詐欺手法です。そうそううまい話はないので、表面上の説明に騙されず、慎重に判断する必要があります」(金田弁護士)

レンタルオーナー商法(販売預託商法)をめぐっては、豊田商事事件(金地金)、安愚楽牧場事件(子牛)、ジャパンライフ事件(磁気治療機器)など、度々大規模な被害が起きている。2022年の法改正で規制がかかったものの、引っかかる人があとを絶たないだけに、似たような儲け話が今後も出てくる可能性は高い。引き続き注意が必要なようだ。

【取材協力弁護士】
金田 万作(かなだ・まんさく)弁護士
第二東京弁護士会消費者問題対策委員会(電子情報部会・金融部会)に所属。投資被害やクレジット・リース関連など複数の消費者問題に関する弁護団・研究会に参加。ベネッセの情報漏えい事件では自ら原告となり訴訟提起するとともに弁護団も結成している。
事務所名:笠井・金田法律事務所
事務所URL:http://kasai-law.com