今回は「オムレツ」の作り方を伝授します(以下、写真はすべて筆者撮影)

料理の腕を上げるために、まず作れるようになっておきたいのが、飽きのこない定番料理です。料理初心者でも無理なくおいしく作れる方法を、作家で料理家でもある樋口直哉さんが紹介する『樋口直哉の「シン・定番ごはん」』。今回は懐かしい昭和の洋食店の雰囲気が漂う「オムレツ」です。

加熱しすぎても大丈夫!

洋食店や町中華でたまに見かける炒めたひき肉や野菜の入ったオムレツ。昭和30年代にかけて広まった料理の1つで、日本独特のものです。懐かしい料理ですが、手軽でごはんのおかずにもなるので、覚えておくと便利でしょう。

ハロルド・マギー(調理科学の権威)が『上手なオムレツには思いきりが必要である』と書いているように、オムレツは短期決戦です。加熱しすぎないように高温・短時間で調理する必要がありますが、もし加熱しすぎても大丈夫。昭和の時代は焦げ目がつくまで加熱したオムレツも一般的でした。

今回は焦げ目をつけずにデリケートな食感に仕上げますが、焦げ目がついてもおいしい料理です。

甘辛ひき肉オムレツの材料
合いびき肉  120g
玉ねぎ    1/2個
ニンジン   1/2本
塩      ひとつまみ
しょうゆ   大さじ1/2
砂糖     大さじ1/2
サラダ油   適宜
卵      2個+2個
ケチャップ  適量

ひき肉と野菜は2皿分、卵2個で1皿分の分量です。ニンジンがなければ入れなくてもかまいませんし、同じような形に切ったキャベツを使うのもいいでしょう。大根を使うのも一興。ピーマンでもいいですし、冷蔵庫にある野菜を工夫してください。


合いびき肉を使っていますが、ひき肉の種類はなんでも大丈夫です

玉ねぎは薄切り、ニンジンは細く切ります。


今の時期出回る新玉ねぎでつくるとやわらかく、よりおいしくなります


ニンジンは細切りに

中火で熱したフライパンにサラダ油大さじ1をひき、玉ねぎとニンジンを2分程度炒めます。このとき、ひとつまみの塩を加えてください。料理用語で『ひとつまみ』とは親指、人差し指、中指の3本でつまんだ量をさし、食塩であれば0.8〜1.0gが目安です。


フライパンは24〜26cmを使用します

野菜がしんなりしてきたらスペースを空け、ひき肉を広げ入れます。火加減は中火のままですが、油が跳ねるようであれば火を弱めてください。


ひき肉からは脂が出るので油脂を足す必要はありません

ひき肉に焼色をつけるように加熱し、砂糖としょうゆでやや甘めに味付けします。後からケチャップの酸味とあわせるためですが、甘みの嗜好は個人差があるので、好みで調整してください。


しょうゆ味ではなく塩だけですっきりと仕上げてもいいでしょう

全体を混ぜ合わせ、ひき肉にしっかり火が通ったら出来上がりです。火を止めて、ボウルに卵を割り入れ、よく溶きます。


安全のためひき肉には完全に火を通しましょう

フッ素樹脂加工のフライパンにサラダ油大さじ1をひき、熱したところに卵を注ぎ入れます。ざっくりとかき混ぜ半熟状態をつくります。


卵を入れたとき、ジュッとすぐに固まるくらいが予熱の目安です

火を止め、具材となるひき肉と野菜の炒め物(の半量)を置きます。


ここで火を止めておくことで加熱しすぎを防げます

フライパンを傾け、具材を包みます。


フライパンのカーブを利用してオムレツの形をつくります

フライパンを逆手に持ち、皿とフライパンがV字になるように傾け、皿に盛り付けます。もう一皿つくるので同じ工程(フライパンに油を熱し、卵を注ぎ入れ、具材を包む)を繰り返します。


きれいに移せなくても後からラップなどで形は修正できるので問題ありません

ケチャップをかけたら出来上がり。昭和のレシピは材料費も安く、ボリューム感があり、使用する野菜も長期間保存できるものがほとんど。懐かしさを誘う味に似合わず、現代でも十分、実用的です。


ケチャップはハインツを使用しています


出来上がったオムレツ

昭和のオムレツとの違いは焼色の有無。昔は鉄のフライパンしかなく、しっかりと予熱しなければ卵がフライパンにくっついてしまうので、オムレツを作るのには技術が必要でしたが、現在ではフッ素樹脂加工のフライパンの登場でかんたんになり、さらに焼色を自在にコントロールできるようになりました。

昭和の時代のレシピを見習いつつ、現代に即した形にアップデートしていきたいものです。


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(樋口 直哉 : 作家・料理家)