防災食は買っておしまいじゃない!“使いながら備蓄”でしっかり管理【わが家の最新エマージェンシーギア選び】
【わが家の最新エマージェンシーギア選び】
備蓄が必要だとわかっていても、賞味期限の管理、収納スペースの確保など、続けるにはなかなかハードルが高い。そこで近年注目されているのが、『使いながら備蓄』(日常備蓄、ローリングストック)だ。日々の暮らしに組み込む備え方を学んで、防災への考えをアップデートしよう。
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災害や防災の話題はよくニュースで目にするせいか、知ったつもりになりがちだ。だが、危機管理アドバイザーの国崎さんは「固定観念にとらわれず、自分に合わせた備えが大切です」と教えてくれた。
「災害が起きた時を想像してもらうと、多くの人が『避難所にいる自分』を思い浮かべます。ですが現実には、受け入れ人数に限りがあるため、避難指示などが出ていない場合は、ほとんどが在宅避難になるでしょう。これを決して不安に思う必要はありません。『避難所=安心』というのは思い込みで、プライバシーの確保が難しく、時には犯罪も起こります。食事やトイレ、お風呂も自由がきかず、心身ともに負担がかかるのです。ですので、大きな被害がない限りは“自宅で生活する”という心構えで日頃から準備しておきたいですね」
在宅避難をより安心・快適にするのが『使いながら備蓄』だ。普段の生活で防災を考えるキッカケになり、非常時でも変わらない日常を維持するための手段になる。
「『災害時だから長期保存食しか食べられない』なんてことはありません。ライフラインが使えるなら、いつもどおりご飯を炊いて良いんです。それを叶えるのが使いながら備蓄です。イザという時も普段から使っているものなら調理がしやすく、安心して食べられます。
また、非常食よりも栄養バランスが良いというメリットもあります。備えの面では、日常の“買い物と消費”のサイクルに組み込むだけで、無理せずストックできます。大きな災害があると身構えてしまいますが、無理せずに続けていくことが大切です。『安い時に多めに買っておこう』くらいのゆるい気持ちで大丈夫。
家族それぞれで好きな飲料を箱買いしたり、食べたいものを買ってみたりと嬉しくなる要素を交えながら、備えを日常にしましょう。年々変化する生活スタイルに合わせて、備蓄品や防災に対する考えをアップデートすることもお忘れなく」
無理をしないだけでなく、不快感を我慢しないことも実は大事。その我慢が命取りになることもあるという。
「今、災害時におけるオーラルケアの重要性が唱えられています。水がもったいないからと歯みがきを我慢するのは、NG。むし歯、歯周病、さらには誤嚥性肺炎のリスクを高めます。実際に避難所では多くの人が口臭ストレスに悩まされているんです。断水時もケアできるよう、普段から液体歯みがきをストックしておきましょう。他にも不快感を我慢せずに済むように汗拭きシートなども用意しておくと快適です」
危機管理アドバイザー/国崎信江さん
株式会社危機管理教育研究所 代表。内閣府や文部科学省をはじめとする、防災関連の委員を多数歴任。女性・母・生活者の視点で防災対策を提唱し、様々なメディアで情報を発信する。災害時には支援活動も行っている。
Q. “使いながら備蓄”とは?
A. いつものものを多めに買って、使い切る前に補充すること
食料や日用品は“普段から使っているものを多めに買い、古い順に使って、使い切る前に買い足す”という備蓄法です。災害時に「期限が切れていた」「うまく使えない」といったトラブルを避けられます。また、管理の負担や災害用のコストがかからず、非常時もいつもの生活を保てるというメリットもあります。(国崎さん)
Q. 食料はどれくらい買い足せば良い?
A. 推奨は10日分。意外と家にはストックがある!
「同居者数×10日分あると安心」と話すと誰もが「そんなに備蓄していない」と答えます。それは非常食を想像するからでしょう。でも、冷蔵庫をのぞくと大体3日分程度、米、乾麺、レトルト、シリアル、乾物類など常温保存のストックを合わせると10日分はあるものです。災害時は時間の余裕がない場合も多いので、1日2食計算で良いでしょう。(国崎さん)
Q. どんなものを買っておけば安心?
A. まずは、食べ慣れた乾麺など常温保存できるものを
食べ慣れたメーカーの乾麺や餅、缶詰や瓶詰め、レトルト、フリーズドライ食品、ドライフルーツ、ナッツなど、長期保存まではいかずともしばらく常温保管できるものがあると安心。災害時は冷蔵庫内の食材を効率的に消費するために、鍋料理をオススメしています。麺や餅ならそこに足せて、ボリュームも出ます。そうめんは茹で時間が短く、使いやすいですよ。(国崎さん)
Q. 使いながら備蓄を続けられるか心配…
A. “ハッピーになるもの”を準備しよう
“箱買いして嬉しくなるもの”を準備しておきましょう。これを『ハッピーストック』といい、我が家では備蓄する飲料を水だけでなく、ジュースや炭酸、豆乳など家族それぞれの好きなものを大人買いしています。レトルト食品もフカヒレスープにしたって良いんです。日々の消費も追加購入も楽しくなりますよ。(国崎さん)
Q. 食品以外に備えておくべきモノは?
A. 調理ツールとオーラルケア用品はマスト
ライフラインが止まっても調理できるよう、カセットコンロを備えておきましょう。 お湯を沸かせる暖房器具を普段から使うのもオススメ。忘れてはいけないのが、オーラルケア用品。水がなくても気兼ねなくケアできる、液体ハミガキが◎。お口のケアは肺炎や口臭ストレスを防ぐためにも必須です。(国崎さん)
■備えておきたいアイテムリスト
・カセットコンロ
・ガスボンベ
・ゴミ袋
・ラップフィルム
・液体歯磨き
・常備薬
・除菌シート
・汗拭きシート
・クレンジングシート
・ドライシャンプー
・目薬
・トイレットペーパー
■なかなか始められない人にオススメ! 備蓄セットを購入して自分に合うストックを考えよう
アサヒグループ食品
アマノフーズ
「ローリングストックBOX」(5454円)
フリーズドライ18品とパックごはん3つが入ったセット。1人が1回の食事で2品ずつ食べれば(1日3食なら)3日分となる。雑炊やリゾット、麺といった主食の他、牛肉の卵とじやシチューなどメインとなるものが入っているので、食べながら「自分に合う備蓄は何か」を考えるキッカケにしよう。
※2024年3月6日発売「GoodsPress」4月号90-91ページの記事をもとに構成しています<取材・文/竹林佑子 イラスト/ato>
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