「漢方治療」の特徴はご存じですか? 婦人科の疾患に対する効果も医師が解説

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更年期障害や生理不順などの婦人科系の疾患で、漢方治療を受けている人も多いと思います。一体なぜ、漢方治療が婦人科領域で広くおこなわれているのでしょうか。漢方薬の効果や特徴について、「玄和堂診療所」の寺師先生に解説していただきました。

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監修医師:
寺師 碩甫(玄和堂診療所)

東海大学医学部卒業。その後、東京逓信病院麻酔科、呼吸器科を経て、1988年より東京都中央区に位置する「玄和堂診療所」勤務。日本東洋医学会会員。東邦大学医療センター佐倉病院非常勤医師。

漢方治療の特徴とは

編集部

漢方治療には、どのような特徴があるのですか?

寺師先生

漢方は心と体を一体として捉え、体全体のバランスを整えることで、本来、人が持っている自然治癒力を高めます。西洋医学の場合、まず病名をつけ、それによって使用する薬を決めるというプロセスを踏みます。一方、漢方治療の場合、診察して、その人の症状や体質などを見極めて処方薬を決定します。つまり、漢方治療は病名がつかなくても処方できるので、その点で大きく西洋医学と異なります。

編集部

漢方薬は病名がつかなくても処方できるのですね。

寺師先生

はい。漢方治療は個人の体質を適切に把握するとともに、様々な診断方法を駆使して、症状を多角的に理解します。そのため、「原因が特定できない疾患」「病名がつかないもの」「不定愁訴と言われるもの」「病気ではないけれど、なんとなく不調を感じている」といった、未病の状態にも対処できるのです。

編集部

ほかには、どのような特徴がありますか?

寺師先生

漢方薬は自然界から得た生薬を組み合わせて作ります。そのため、複数の症状に対して効果が期待できます。例えば、有名な漢方薬に「葛根湯」がありますが、風邪、肩こり、ものもらい、ヘルペスなどに効き目があります。このように、1つの薬で様々な症状に効果が期待できる点も漢方治療の特徴です。

編集部

漢方薬による治療は保険適用でしょうか?

寺師先生

はい。一部の生薬を除いて、漢方薬による治療は保険が適用されます。ただし、病気を予防したり、美容目的のために使用したかったりする場合は保険適用外となります。

漢方薬が得意とする分野と領域

編集部

漢方薬が得意とする領域について教えてください。

寺師先生

内科から整形外科まで、様々な科目で漢方薬が用いられます。特に漢方薬が得意とするのは婦人科です。

編集部

それはなぜですか?

寺師先生

女性の体は男性と比べて非常に複雑で、年齢に応じて女性ホルモンの分泌量が変化します。ホルモンの分泌量が変化すると、身体面で様々な症状が出てきます。また、女性ホルモンは自律神経と深い関わりがあり、女性ホルモンの分泌量が低下すると自律神経も乱れやすくなります。このように、心と体の両面から不調を捉えるのは、漢方薬の得意分野です。そのため、婦人科疾患と漢方治療は親和性が高いのです。

編集部

具体的には、どのような疾患に効果が期待できますか?

寺師先生

「月経不順」「月経困難症」「月経前症候群(PMS)」「更年期障害」などの疾患で、漢方薬が用いられます。

編集部

どのような症状が改善されるのですか?

寺師先生

疾患にもよりますが、例えば更年期障害であれば、ほてりやのぼせなどの症状を改善することが期待できますし、イライラや不眠などの精神的な症状に対しても効果が得られると思います。そのほか、漢方薬は患者さん自身が本来備えている妊娠力を最大限に高めることを目的に、不妊治療にも用いられています。

編集部

あらゆる年代の女性が抱える悩みをカバーしてくれるのですね。

寺師先生

そうですね。漢方治療では、気・血・水という3つの要素によって人間の体を捉えます。つまり、気・血・水のバランスが崩れると、様々な不調が生じるということです。更年期障害や月経不順、PMSなどもこれらの乱れから生じるものですが、西洋医学の医療機関でおこなう検査では、異常が見つからないことも少なくありません。このように、検査では異常が見つからない症状に対してもアプローチできる点が漢方薬の強みだと思います。

治療に漢方薬を取り入れるにあたって注意したいこと

編集部

漢方薬を使うときに注意すべきことはありますか?

寺師先生

漢方薬にはたくさんの種類があり、患者さんに合った漢方薬を適切に処方することが必要です。そのため、漢方治療の専門医は問診や様々な診察方法によって一人ひとりに「証」を立て、その人に最適な漢方薬を処方します。現在、ドラッグストアや薬局などでも漢方薬が市販されていますが、そのようなところでは証を立てることは困難で、既製品の漢方薬を処方するのが一般的です。漢方治療で効果を期待するなら、必ず医師の診察を受け、適切な漢方薬を処方してもらいましょう。

編集部

そのほかに、注意点はありますか?

寺師先生

漢方薬は自然由来のものですが、副作用はゼロではありません。場合によっては高血圧、腸の障害、神経性麻痺などの症状が出ることもあります。一人ひとりに合わせたオーダーメイドで漢方薬を処方する場合には、そうした副作用のリスクのある成分を除くことができますが、それでも「食前に漢方を飲むと気持ち悪くなる、胃が荒れる」という人もいます。その場合は、食後に服用してもらうなどの工夫をします。

編集部

副作用が出ないよう、工夫することもできるのですね。

寺師先生

はい。そうした副作用が出ないか見極めるため、例えば当院ではまず3週間分を処方し、様子を見てもらいます。そこで問題がなければ続けて処方します。ただし、長期間服用している間に体質が変化してくることもあるため、定期的に診察し、処方を見直すことも大切です。

編集部

治療の効果はすぐに出るのですか?

寺師先生

漢方治療には「三日・三月・三年」という考え方があります。これは急性疾患なら3日、慢性疾患なら3カ月、場合によっては3年、治癒までにかかるという意味です。多くの場合、漢方薬の効果はゆっくり出てきますが、風邪や発熱など急性の疾患にはすぐに効果がみられることもあります。そのため、最初の証を立てる段階で「この症状は長引きそうか、それともすぐに取れそうか」を的確に見極め、それに応じた治療スケジュールを立てることが重要です。

編集部

治るまで3年かかることもあるのですね。

寺師先生

そうです。そのため、「少し飲んでみたけれど効かない」と中断してしまう人も多いのですが、必ず医師の指示に従い、根気よく服用を続けてみましょう。ただ、しばらく飲んでみて効果がないと思ったら、漢方薬の種類を変えてみるのも1つの手段だと思います。

編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

寺師先生

漢方治療が得意とする分野の1つに「不妊症」があります。漢方薬による不妊症治療は、子宮や卵巣だけでなく、体全体のバランスを整え、健康の土台を築くことができる特徴があります。そうなれば子宮や卵巣の状態も自然と良くなり、妊娠に至ることも少なくありません。そのほか、更年期障害や生理痛なども漢方治療が得意とする分野なので、もしお困りのことがあればお気軽にご相談ください。

編集部まとめ

現在では、ドラッグストアやコンビニエンスストアなどでも手軽に漢方薬を購入できるようになりました。しかし、漢方治療の良さは、一人ひとりに合わせてオーダーメイドで薬を処方してくれる点にあります。もし漢方治療を始める場合には、まず漢方治療の専門医を受診し、体質を調べてもらったり、症状を診察してもらったりした上で、自分にあった漢方薬を処方してもらうことをおすすめします。

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