仕事で成長するには「印象に残る力」が超重要な訳
簡単に相手の印象に残る方法とは(写真:metamorworks/PIXTA)
「人間の悩みは、全て対人関係の悩みである」 と心理学者のアドラーが考えたように、ほぼ全ての人が人間関係で悩んだ経験があるはず。
最新刊『おもしろい人が無意識にしている 神雑談力』では、元芸人である中北朋宏氏がこれまでの経験やお笑い芸人として培った技術を駆使した「人を動かすコミュニケーション術」を網羅。
これ1冊で「仕事の人間関係すべて大丈夫」という1冊になっている。
以下では、その中北氏が「印象とチャンスの関係」について解説します。
「印象に残らない人」は成長できない
4月が近づくにつれて毎年の恒例のようにビジネス街には「紺色のスーツに黒い靴と黒い鞄」を着用した新入社員の集団を見かけます。
この集団は、ほぼすべての人が同じような服装のため、「メガネか、メガネ以外か」でしか、認識することが困難です。
そのため、個人名で記憶することはあまりに難易度が高く「人」「猫」「車」のような普通名詞の通称で、「新入社員」と呼ばれているのだと思っています。
新入社員の方々に限らず、まったく他者と差別化されておらず印象に残らない人は数多く存在しています。
その中には、「印象に残す意識がない人」だけでなく、「人から嫌われたくない」とついつい考えてしまう人も印象に残らない傾向があります。
秋元康さん曰く「記憶に残る幕の内弁当はない」という言葉があるように、すべての人から嫌われず、好かれようと当たり障りない行動をしてしまうがゆえに、相手の印象に残ることはおろか「また会いたい」と思ってもらえないという悲惨な状況に陥ってしまうわけです。
では、「印象に残る」ということには、どのようなメリットがあるのでしょうか。
人の記憶はしょせん曖昧である
相手の印象に残ることはメリットしかありません。
例えば、社内であれば先輩・上司から「可愛がられる」ことにより成長する経験を人よりも渡してもらうことができたり、社外であればお客様から「あの人に連絡してみようかな……」「また会いたい」と思い出してもらえるわけです。
では、どうすれば他者と差別化し、上司・先輩から成長機会をもらうために人の印象に残すことができるのでしょうか。
まず押さえてほしいのが人の記憶はしょせん曖昧であるということです。
初頭効果という理論があるように「人は出会って6〜7秒で人を判断し、その印象は半年間持続する」と言われていますが、具体的にどのような印象の人で、何を話したか、など、詳細まで記憶していることは多くはないはずです。
あなたも今までの人生で数多くの人と出会ってきたと思いますが、再会するまで一度も頭の中に思い浮かぶことがない人がいるかと思います。
印象に残っているといえば、ざっくりと「いい人だったな」「感じの悪い人だったな」程度の話です。
自己紹介で一言加える
他者と差別化し印象に残すために、まず紹介したいのが「自己紹介に一言加える」ということです。
なぜ、自己紹介なのか……。
それは、自己紹介はすべて人が行う行為であるため作業的に行われており、意識的に他者と差別化している人が少ないからです。
私は、元お笑い芸人ということもあり、お笑い芸人の自己紹介は多種多様です。
「ギャグを交えた自己紹介」や「双子/兄弟であることを強調」「学歴/職歴を強調」するなど、記憶に残すための工夫が無数に存在しています。
一方で、ビジネスシーンで、あなたも無数に他者の自己紹介を聞いてきたと思いますが、誰一人覚えていないはずです。
それでは、具体的に解説していきます。
まずは通常の自己紹介を例としてあげます。
「名前・趣味・出身地・部活」などが主に語られます。強いていうと、出身の大学などを付け加える方もいるのではないでしょうか。
ここから「自己紹介で一言加える」とどうなるのかというと、例えば「趣味を漫画」と伝えるとしましょう。
これでは、印象にも記憶に残りません。
なぜなら、「趣味を漫画」としている人は、この日本に無数に存在するため相手は聞き流してしまいます。
しかし、「趣味は漫画」のその先に一言加えてください。
「特に『ドラゴンボール』が好きで、子どもの頃に何度も『かめはめ波』を打とうと訓練したことがあります」と一言加えます。
すると「趣味嗜好や人間性」が見えてきます。
聞き手の方の中に、「『ドラゴンボール』好き」がいれば会話が弾む可能性がありますし、かめはめ波を打とうと子どもの頃に訓練したという経験がある方であれば、すぐにでも話しかけたくなります。
ちなみに、私は小学校2年生から4年生までかめはめ波を打つ訓練をしていたので駆け足で話しかけにいきます。
「サブリミナル効果」を使い一言加える
サブリミナル効果というものをご存じでしょうか。
諸説ありますが、例えば映画などで観客に気づかれないように一瞬だけフィルムに「コーラ」を映り込ませると、観客が「見たことを気づいていない」のに、コーラが意識に残り「コーラが飲みたくなる」効果のことを言います。
このように相手の無意識に何らかの印象を与えるノウハウになりますが、今では禁止されていると言われています。
では、具体的に説明していきます。
ビジネスでの活用イメージを湧かせるために、「社内の会議」や「お客様との打ち合わせ」をイメージしてください。
例えば、あなたが上司の立場であれば、部下の発言に対して、「いい意見だな……」「いい質問だな……」とつぶやいてあげるだけでも、心理的安全性(※)が生まれやすくなります。
※心理的安全性:個人やグループが恐怖やリスクを感じることなく意見交換や仕事でチャレンジできる状態。
また、あなたが部下の立場であれば上司の発言に対して、「こんなふうに考えるのか……」「尊敬できるな……」など、一言つぶやいてあげるだけでも上司の心理的安全性が生まれることは間違いありません。
ビジネスシーンではクレームなどのネガティブな感情を率直に伝えられることはあっても、相手にポジティブな気持ちを伝えることも、伝えられることも少ないです。
ですので、この経験自体が稀有なため相手の印象に残りやすくなります。
ぜひ、ご活用ください。
(中北 朋宏 : 俺 代表取締役社長)