日本では6割の夫婦が陥るといわれるセックスレス。「肉食と草食で結婚したパターンは悲劇でしかない」と語るのは専業主婦の邦子さん(仮名・60歳)です。20年を超える結婚生活のなかで、夫との行為は数える程度。その原因を詳しく伺いました。

お見合いで知り合った夫。「優良物件だと信じてた…」

神奈川県の某港町で生まれ育った邦子さん。「先日、駐車場で転んじゃって骨折しちゃったんです」と右手にギブスがついたままの状態で、今回の取材を受けてくださいました。

結婚生活は今年で25周年。一見、幸せそうに見えますが「夫は介護要員兼ATMです」と断言するほど、夫婦関係は冷えきってしまっている様子。どうしてこのような事態に陥ってしまったのでしょうか?

邦子さんが夫と出会ったのは、36歳のとき。きっかけは知人の紹介だったといいます。「私の実家の近所に、昔ながらの世話焼きおばさんみたいな人がいたんですよ。その人とうちの母がとても仲よくて。私が30歳を過ぎた頃から、たびたびお見合いの話を持ってくるようになったんです」と邦子さん。

邦子さんは当時、証券会社勤め。バリバリと出世コースを歩んでいたので、正直結婚する気はなかったそうです。

「ただ時代も時代だったし、親の立場からしたら心配だったんでしょうね。母が『つき合いだと思って、一度くらい会ってみて』と必死だったので、断るつもりでお見合いした相手が夫でした」

そのときのお写真を見せていただくと、まるでハリウッドの映画俳優のように整った顔立ちの若い男性が写っていました。思わず「すごいダンディですね」と言うと「そうでしょ、若い頃は役者を目指していた時期もあったんですって。しかも職業は弁護士。本当に優良物件だと思ったし、会って話したら、すぐに好きになっちゃったんです」と懐かしそうに若き日を振り返る邦子さん。

断るどころか、意気投合してすぐに交際へと発展。しかし、レスの兆候はすでにこのときからあったそう。

“しない男”がいるなんて夢にも思わなかった…

「私は神奈川に住んでいて、向こうは東京。仕事帰りに食事とかにはなかなか行けなかったし、デートは月1、2回程度。いつもお出かけがメインでした。一緒にいるとラクで楽しいなと思えたし、まったく違和感もなくて」と邦子さん。ただ性的な触れ合いだけは、少し残念な人だったといいます。

「淡泊というか、はっきり言っちゃうと下手だったんですよ。けれど、結婚してずっと一緒にいるようになれば、どんどん相性はよくなるのかなって期待していました。まさか“しない男”がいるなんて夢にも思わなかったんです」と邦子さん。

親族や友人、お互いの職場の人にも祝福され、都内の有名ホテルで盛大な結婚式を挙げた2人。ところが、新婚生活は思い描いていたものとはかけ離れた雰囲気だったそう。

「なんでしないの?」妻の涙の訴えに夫は…

「私の仕事は所詮“お金”だけを見ていればすみますが、夫は相続や離婚問題などで困っている“人”と向き合わねばなりません。細かいことは聞かないけれど、精神的にもタフじゃないとやっていけないだろうなというのは理解していたし、家にいる間はなるべく居心地をよくしてあげようと思ってがんばっていました」

夫が務めていた法律事務所の近くはランチをやっているお店が少ないエリアだったこともあり、邦子さんは毎朝のお弁当づくりが日課に。入浴剤も日替わりで変えたり、スーツやワイシャツもパリッとかっこよく着られるように入念に手入れをする日々。

「結婚して一緒に住めば相性もよくなる」という期待とは裏腹に、夫が邦子さんを求めてくること自体が消滅してしまいました。そんな新婚生活が半年くらい過ぎた頃、ついに邦子さんの堪忍袋の緒が切れてしまいます。

「夫に『話があるから、ちょっとそこに座りなさい』って言いました。『なんでしないの? もし仕事とか体調のことで悩みがあるなら教えてほしい』って問い詰めたのですが、夫は『ごめん』と言ってうつむくばかり。ほとんど無言だけど、結局興味がないとかしたくないというのを遠回しにごにょごにょ言ってました。まさかこんな内容で夫婦喧嘩をすることになるなんて、だれにも相談できなかったし、情けなくなりました」

このときの話し合いは結果的に完全に裏目となり、以降、20年以上、一度も夫と体の交わりを持つことはなくなってしまいました。邦子さんが悩みぬいた末に見出した原因や解決策については、次回お話ししたいと思います。