Z世代 から アルファ世代 へのシフトを強めるブランド各社:アンバサダーやインフルエンサーへの起用相次ぐ
Z世代は終わり、ブランドはすでにアルファ世代をインフルエンサーに任命しはじめている。
アクセサリー小売チェーンのクレアーズ(Claire's)は2月初旬、5人のZ世代とふたりのアルファ世代(最年少は7歳)を起用した年間マーケティングキャンペーン「コラボ(Collab)」を開始した。5月には、女児向け衣料品ブランドのイブジー(Evsie)が7歳から14歳を対象としたアンバサダープログラムを創設した。スキンケアブランドのバブル(Bubble)の場合、13歳以上なら誰でもブランドアンバサダーに応募できる。この取り組みは人気が高く、7月の時点で約4万1000人が待機リストに名を連ねている。
ここ数年は、1997年から2009年生まれのZ世代という需要の高い層のなかで支持者を築こうと、各ブランドが競い合ってきた。ロブロックス(Roblox)のゲーム制作からTikTokのインフルエンサー任命まで、ブランドはZ世代が時間とお金を費やすあらゆる場所に飛び込んだ。2024年は、アルファ世代に生まれることができる最後の年だが、状況は変わりはじめている。アルファ世代が成長し、ソーシャルメディアを使い、はじめての仕事に就くのに合わせて、ブランドは彼らと共に歩みたいと考えている。さらに、数年前にZ世代に対して仕掛けた方法と似ているが同じではないやり方を使い、このような若い顧客を取り込むためのマーケティング戦略を調整している。
最年長のアルファ世代は2010年生まれで、すでに自分のインスタグラムアカウントを持てる年齢に達している。彼らはiPad以前の時代を知らず、デジタルに精通していて、アレクサ(Alexa)とのコミュニケーションや、タッチスクリーンのタップ、AIの使用に慣れている。市場調査会社マククリンドルリサーチ(McCrindle Research)によると、アルファ世代は20億人を超える史上最大の世代になると予想されている。
マククリンドルリサーチのアドバイザリーディレクターであるアシュリー・フェル氏は、アルファ世代は情報とテクノロジーにさらされることで「早く年を取ること」を経験し、若くして成熟しつつあると米モダンリテールに語った。最年少のアルファ世代は自分の収入源を持っていないかもしれないが、消費者として大きな影響力があり、家族が何を買い、何を買わないかを決めることができる。
クレアーズの最高マーケティング責任者であるクリスティン・パトリック氏は、「この子たちが購買習慣や親の意思決定に影響を与えていないと思うなら、考え直したほうがよい」と話す。
同様に、フェル氏もこう付け加えた。「彼らがすでに持っている経済的影響力を理解して関わることができなければ、その組織は静かに消滅へと向かうだろう」。
アルファ世代に浸透するために、ブランドはアルファ世代をインフルエンサーやアンバサダーに任命しはじめている。しかし、多数のブランドがZ世代とコラボレーションした時代から、戦略は変わりつつある。
ここ数年、ブランドによるZ世代との協業は、TikTokのようなプラットフォームがどのように機能するかを理解することなどがあった。しかし、アルファ世代との協業では、テクノロジーに関する知識はすでにあるので、より実験的なものになる可能性がある。フェル氏によると、アルファ世代の好みはすぐに変わり、「ほかのどの世代よりグローバルにつながっている世代」であるため、それが重要な鍵となる。アルファ世代はスピードと即時性を期待しており、ブランドはマーケティングや小売体験において、機敏に考えることを学んでいる。
多くの新しいインフルエンサーは、ソーシャルメディアでの存在感という点で、世界が考える「伝統的なインフルエンサー」とは異なる。たとえば、クレアーズのコラボには、ソーシャルメディアで何十万人ものフォロワーを擁するメンバーもいるが、「ちょっとすごい、普通の女の子たち」もいるとパトリック氏は言う。服のデザイン、サッカー、料理、ドラム演奏、スケートボードと、それぞれが特別な才能を持っている。
さらに、インフルエンサーやアンバサダーに製品を渡して宣伝してもらうのではなく、彼らを舞台裏に巻き込むブランドも増えている。たとえば、コラボはクレアーズのマーケティング、店頭イベント、商品展開に積極的に関与してもらうとパトリック氏は話した。コラボのメンバーは、この取り組みを記念した写真と動画撮影のスタイリングも行った。クレアーズが子どもたちをカメラの前だけでなく後ろにも配したのは、これが初めてのことだ。
一方、バブルは熱心なファンからのフィードバックを収集するために、チャットアプリのジェニーバ(Geneva)にチャンネルを開設した。「始めたいこと、やりたいこと、そのすべてに彼らが関わっている」と創業者のシャイ・アイゼンマン氏は以前、米モダンリテールに語っていた。「発売のずっと前に商品の写真を送り、名前やパッケージの選定を手伝ってもらっている。実際、当社のアイデア出しと意思決定プロセスの一部になっている」。
コンサルタント会社リングコミュニケーションズ(Ring Communications)の創設者でサフォーク大学(Suffolk University)非常勤教授のキンバリー・リング・アレン氏は、この種の積極的なアプローチが成功を収めていると、米モダンリテールに語った。「単に、子どもに500ドル(約7万5000円)を渡してソーシャルメディアに投稿させるのではない。アンバサダーをプロシューマーのように扱うのだ。そうすることで、この競争だらけの時代において、顧客ロイヤルティを築き、顧客寿命を延ばすことができる」。
子どもたちをアンバサダーやインフルエンサーとして起用することには、当然のこととして、いくらか警戒心を持たれるだろうとフェル氏は指摘する。13歳や14歳の子どもたちは、まだ認知能力の発達の途中にある。「アルファ世代は、それ以前の世代と比べると同じ年齢でもより成熟しているが、それでもまだ子どもだ」とフェル氏はいう。「だから、子どもたちを相手にリーチしたり共同作業をしたりすることには、それなりの懐疑的な態度が必要だと思う」。
米国で子ども向けにマーケティングを行う場合は、米国連邦取引委員会(FTC)による規則に従う必要がある。児童オンラインプライバシー保護法(COPPA)により、ウェブサイトが13歳以下の子どもから収集できる情報を親が管理できるようになり、ブランドは子どもにアルコール飲料を宣伝することができなくなった。また、未成年者がブランドと仕事をする際には親の同意が必要で、単独で契約を結ぶことはできない。たとえば、バブルのアンバサダーシッププログラムの文言には、応募者は「有効なメールアドレスと、18歳未満の場合は親または保護者のメールアドレス」が必要であると明記されている。
クレアーズはコラボのメンバーの親や保護者と定期的に連絡を取っており、今年最初の写真と動画の撮影にも親や保護者が参加したとパトリック氏は言う。「アルファ世代の親が特に大切にしていることのひとつは、子どもたちが年相応に行動し、子ども時代を楽しんでいることなのだと思う」。パトリック氏は親との会話を振り返り、そう語った。「過度なスピードで成熟させてしまうような傾向が実際にあると思っている」。
しかしパトリック氏によると、親たちはクレアーズのようなブランドと自分の子どもたちが仕事をすることを心配していないようだ。「我々は、子どもたちがありのままの自分でいることを強く勧めている」という。「年月を重ねるなかで、子どもたちとその親にとって信頼できるブランドであり情報源になるとともに、どこか安全な隠れ家のような存在になったのだと自負している」。
ミシガン大学(The University of Michigan)のマーケティング教授で『フォー・ザ・カルチャー(For The Culture)』の著者でもあるマーカス・コリンズ氏は、ブランドは常に次世代に惹かれてきたという。「これは『若者は物事をクールにしてくれる。だから我々は若者を求める』という意味の婉曲表現だ」と同氏はeメールで説明した。
しかし、アルファ世代と協業しはじめたからといって、Z世代を切り捨てるべきではないと情報筋はいう。「Z世代を手放さないことには、間違いなくメリットがある」とフェル氏は述べている。「相変わらず念頭に置いておくべき重要な層であり、新しいライフステージへ移行するのに合わせて関わる必要がある」。
また、Z世代はアルファ世代と協力することを歓迎していると、パトリック氏は語った。「顔を合わせれば、素晴らしい仲間意識が生まれる」とのことだ。「撮影時のことだが、1日の終わりに全員で円陣を組むようにハグをしていた。『新しい親友が5人増えたような気持ちだ』といっていた」。
そのうちのひとりが、女性の権利を守る非営利団体であるパッドプロジェクト(Pad Project)の共同創設者で、アカデミー賞受賞ドキュメンタリーのプロデューサーでもあるマギー・ソフィー・ブラウン氏だ。ブラウン氏は20歳、つまりZ世代の一員である。「かつて少女としてクレアーズで買い物していた身からすると、才能と意欲にあふれる若者たちの写真が店の壁に飾られているのを見たら、自分の人生に勇気を与えてくれたと思う」と、同氏はeメールを通じて米モダンリテールに語った。
さらに、「特にファッション界で、スポーツや芸術に秀でた才能を持つ若いモデルやタレントを起用することは、非常に有効だと思う。なぜなら、子どもたちが自分自身を広告のなかに投影することができるからだ」とも付け加えた。
[原文:After years of wooing Gen Z, brands are tapping Gen Alpha as ambassadors & influencers]
Julia Waldow(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Claire's
アクセサリー小売チェーンのクレアーズ(Claire's)は2月初旬、5人のZ世代とふたりのアルファ世代(最年少は7歳)を起用した年間マーケティングキャンペーン「コラボ(Collab)」を開始した。5月には、女児向け衣料品ブランドのイブジー(Evsie)が7歳から14歳を対象としたアンバサダープログラムを創設した。スキンケアブランドのバブル(Bubble)の場合、13歳以上なら誰でもブランドアンバサダーに応募できる。この取り組みは人気が高く、7月の時点で約4万1000人が待機リストに名を連ねている。
最年長は2010年生まれ
最年長のアルファ世代は2010年生まれで、すでに自分のインスタグラムアカウントを持てる年齢に達している。彼らはiPad以前の時代を知らず、デジタルに精通していて、アレクサ(Alexa)とのコミュニケーションや、タッチスクリーンのタップ、AIの使用に慣れている。市場調査会社マククリンドルリサーチ(McCrindle Research)によると、アルファ世代は20億人を超える史上最大の世代になると予想されている。
マククリンドルリサーチのアドバイザリーディレクターであるアシュリー・フェル氏は、アルファ世代は情報とテクノロジーにさらされることで「早く年を取ること」を経験し、若くして成熟しつつあると米モダンリテールに語った。最年少のアルファ世代は自分の収入源を持っていないかもしれないが、消費者として大きな影響力があり、家族が何を買い、何を買わないかを決めることができる。
クレアーズの最高マーケティング責任者であるクリスティン・パトリック氏は、「この子たちが購買習慣や親の意思決定に影響を与えていないと思うなら、考え直したほうがよい」と話す。
同様に、フェル氏もこう付け加えた。「彼らがすでに持っている経済的影響力を理解して関わることができなければ、その組織は静かに消滅へと向かうだろう」。
新世代のインフルエンサー
アルファ世代に浸透するために、ブランドはアルファ世代をインフルエンサーやアンバサダーに任命しはじめている。しかし、多数のブランドがZ世代とコラボレーションした時代から、戦略は変わりつつある。
ここ数年、ブランドによるZ世代との協業は、TikTokのようなプラットフォームがどのように機能するかを理解することなどがあった。しかし、アルファ世代との協業では、テクノロジーに関する知識はすでにあるので、より実験的なものになる可能性がある。フェル氏によると、アルファ世代の好みはすぐに変わり、「ほかのどの世代よりグローバルにつながっている世代」であるため、それが重要な鍵となる。アルファ世代はスピードと即時性を期待しており、ブランドはマーケティングや小売体験において、機敏に考えることを学んでいる。
多くの新しいインフルエンサーは、ソーシャルメディアでの存在感という点で、世界が考える「伝統的なインフルエンサー」とは異なる。たとえば、クレアーズのコラボには、ソーシャルメディアで何十万人ものフォロワーを擁するメンバーもいるが、「ちょっとすごい、普通の女の子たち」もいるとパトリック氏は言う。服のデザイン、サッカー、料理、ドラム演奏、スケートボードと、それぞれが特別な才能を持っている。
さらに、インフルエンサーやアンバサダーに製品を渡して宣伝してもらうのではなく、彼らを舞台裏に巻き込むブランドも増えている。たとえば、コラボはクレアーズのマーケティング、店頭イベント、商品展開に積極的に関与してもらうとパトリック氏は話した。コラボのメンバーは、この取り組みを記念した写真と動画撮影のスタイリングも行った。クレアーズが子どもたちをカメラの前だけでなく後ろにも配したのは、これが初めてのことだ。
一方、バブルは熱心なファンからのフィードバックを収集するために、チャットアプリのジェニーバ(Geneva)にチャンネルを開設した。「始めたいこと、やりたいこと、そのすべてに彼らが関わっている」と創業者のシャイ・アイゼンマン氏は以前、米モダンリテールに語っていた。「発売のずっと前に商品の写真を送り、名前やパッケージの選定を手伝ってもらっている。実際、当社のアイデア出しと意思決定プロセスの一部になっている」。
コンサルタント会社リングコミュニケーションズ(Ring Communications)の創設者でサフォーク大学(Suffolk University)非常勤教授のキンバリー・リング・アレン氏は、この種の積極的なアプローチが成功を収めていると、米モダンリテールに語った。「単に、子どもに500ドル(約7万5000円)を渡してソーシャルメディアに投稿させるのではない。アンバサダーをプロシューマーのように扱うのだ。そうすることで、この競争だらけの時代において、顧客ロイヤルティを築き、顧客寿命を延ばすことができる」。
親の役割
子どもたちをアンバサダーやインフルエンサーとして起用することには、当然のこととして、いくらか警戒心を持たれるだろうとフェル氏は指摘する。13歳や14歳の子どもたちは、まだ認知能力の発達の途中にある。「アルファ世代は、それ以前の世代と比べると同じ年齢でもより成熟しているが、それでもまだ子どもだ」とフェル氏はいう。「だから、子どもたちを相手にリーチしたり共同作業をしたりすることには、それなりの懐疑的な態度が必要だと思う」。
米国で子ども向けにマーケティングを行う場合は、米国連邦取引委員会(FTC)による規則に従う必要がある。児童オンラインプライバシー保護法(COPPA)により、ウェブサイトが13歳以下の子どもから収集できる情報を親が管理できるようになり、ブランドは子どもにアルコール飲料を宣伝することができなくなった。また、未成年者がブランドと仕事をする際には親の同意が必要で、単独で契約を結ぶことはできない。たとえば、バブルのアンバサダーシッププログラムの文言には、応募者は「有効なメールアドレスと、18歳未満の場合は親または保護者のメールアドレス」が必要であると明記されている。
クレアーズはコラボのメンバーの親や保護者と定期的に連絡を取っており、今年最初の写真と動画の撮影にも親や保護者が参加したとパトリック氏は言う。「アルファ世代の親が特に大切にしていることのひとつは、子どもたちが年相応に行動し、子ども時代を楽しんでいることなのだと思う」。パトリック氏は親との会話を振り返り、そう語った。「過度なスピードで成熟させてしまうような傾向が実際にあると思っている」。
しかしパトリック氏によると、親たちはクレアーズのようなブランドと自分の子どもたちが仕事をすることを心配していないようだ。「我々は、子どもたちがありのままの自分でいることを強く勧めている」という。「年月を重ねるなかで、子どもたちとその親にとって信頼できるブランドであり情報源になるとともに、どこか安全な隠れ家のような存在になったのだと自負している」。
Z世代の現状
ミシガン大学(The University of Michigan)のマーケティング教授で『フォー・ザ・カルチャー(For The Culture)』の著者でもあるマーカス・コリンズ氏は、ブランドは常に次世代に惹かれてきたという。「これは『若者は物事をクールにしてくれる。だから我々は若者を求める』という意味の婉曲表現だ」と同氏はeメールで説明した。
しかし、アルファ世代と協業しはじめたからといって、Z世代を切り捨てるべきではないと情報筋はいう。「Z世代を手放さないことには、間違いなくメリットがある」とフェル氏は述べている。「相変わらず念頭に置いておくべき重要な層であり、新しいライフステージへ移行するのに合わせて関わる必要がある」。
また、Z世代はアルファ世代と協力することを歓迎していると、パトリック氏は語った。「顔を合わせれば、素晴らしい仲間意識が生まれる」とのことだ。「撮影時のことだが、1日の終わりに全員で円陣を組むようにハグをしていた。『新しい親友が5人増えたような気持ちだ』といっていた」。
そのうちのひとりが、女性の権利を守る非営利団体であるパッドプロジェクト(Pad Project)の共同創設者で、アカデミー賞受賞ドキュメンタリーのプロデューサーでもあるマギー・ソフィー・ブラウン氏だ。ブラウン氏は20歳、つまりZ世代の一員である。「かつて少女としてクレアーズで買い物していた身からすると、才能と意欲にあふれる若者たちの写真が店の壁に飾られているのを見たら、自分の人生に勇気を与えてくれたと思う」と、同氏はeメールを通じて米モダンリテールに語った。
さらに、「特にファッション界で、スポーツや芸術に秀でた才能を持つ若いモデルやタレントを起用することは、非常に有効だと思う。なぜなら、子どもたちが自分自身を広告のなかに投影することができるからだ」とも付け加えた。
[原文:After years of wooing Gen Z, brands are tapping Gen Alpha as ambassadors & influencers]
Julia Waldow(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Claire's