「片目だけ視力が低下する」原因はご存じですか? 片目が悪くなる・見えにくいときの対処法も眼科医が解説!
健康診断などで視力検査をしたとき、片目だけ視力が低下していることに気づく人も多いと思います。両目とも同じ使い方をしているのに、なぜ、片目だけ視力が下がってしまうのでしょうか。原因や目への影響について、「みねざき眼科」の嶺崎先生にうかがいました。
≫【眼科の定期検診】目の病気を予防するという考え方が、今後必要になるワケ監修医師:
嶺崎 輝海(みねざき眼科)
東京医科大学卒業。その後、東京臨海病院初期研修、東京医科大学病院眼科や東京医科大学八王子医療センターなどに勤務、新百合ヶ丘総合病院医長を務める。2023年、東京都国立市に位置する「みねざき眼科」の院長に就任。医学博士。日本眼科学会認定眼科専門医。日本角膜学会、日本角膜移植学会、日本涙道・涙液学会、日本眼形成再建外科学会の各会員。東京医科大学病院客員講師。
編集部
目の検査を受けたら、「片目だけ視力が悪くなっている」と言われました。
嶺崎先生
片目だけ視力が悪くなった場合、まずは病的なものなのかを考える必要があります。また、患者さんの年齢も考慮します。例えば、10代で片目だけ視力が悪くなった場合には、目の使い過ぎなどで急に近視が進んだのかもしれませんし、70代の患者さんなら緑内障や白内障が原因となっているのかもしれません。
編集部
なるほど。疾患の可能性や年齢などを考慮する必要があるのですね。
嶺崎先生
はい。片目だけ視力低下を引き起こす疾患には様々なものがあり、なかには早急に対処することが求められるものもあります。そのため、原因となる疾患を速やかに特定する必要があるのです。
編集部
病気ではないのに片目だけ視力の低下が進む場合には、どのような原因が考えられますか?
嶺崎先生
スマホやパソコン、ゲームなどの操作による目の使い過ぎが考えられます。また、寝不足や体調不良などが原因となって起きる場合もあると言われています。ただし、寝不足やストレスが原因となる場合は多くが一過性ですし、片目だけ視力が低下するより、むしろ両目の視力が低下することの方が多いので、その場合はしばらく経過を見てもいいでしょう。
片目だけ視力が悪くなる・視力低下・視界がぼやける症状で考えられる目の疾患・気をつけたい病気編集部
目の疾患が原因で片目だけ視力が低下している場合、どうしたらいいのでしょうか?
嶺崎先生
眼科で詳しく検査をして、原因となる疾患を特定しましょう。原因となる疾患を確認するのに重要なのは、「どういう風に見えづらくなったか」です。例えば、白内障や緑内障だと視力低下に加えて、「目がかすむ」と訴える患者さんが多いですし、網膜剥離だと「カーテンがかかったように突然見えなくなる」と感じる患者さんもいます。このように、ただ「視力が低下した」だけでなく、「どのように見えづらくなったのか」を確認することで、ある程度、疾患の見当をつけることができます。
編集部
白内障や緑内障について、簡単に説明をお願いします。
嶺崎先生
緑内障とは、眼圧が高くなるなど様々な原因により視神経が障害を受け、視野が狭くなる病気です。一方、白内障とは加齢とともに水晶体が濁り、視力が低下する病気です。これらの疾患を発症すると、片目だけ視力が低下する可能性があります。
編集部
先ほど緑内障も白内障も「目がかすむ」と聞きましたが、どちらも症状が似ているのですか? 緑内障は「視野が狭くなる」ということですが……。
嶺崎先生
緑内障でも目がかすむことがあります。むしろ私自身の臨床経験で言えば、「視野が狭くなる」と訴える患者さんより、かすみ目を訴える患者さんの方が多いかもしれません。緑内障の進行具合によってもかすみ目の状態が変わってきて、はじめは部分的なかすみ目を自覚する患者さんが多いように思います。その一方で、白内障でも濁りがある部位によってかすみ目の症状が変わってくるので、正確に診断するには精密な検査が必要になります。
編集部
網膜剥離でも視力が低下するのですか?
嶺崎先生
はい。眼底にある網膜がはがれる網膜剥離が原因となって片目だけ視力が低下している場合があります。視力低下や飛蚊症などの症状が表れ、初期ならレーザー治療で改善することができますが、進行すると失明するリスクもあります。
編集部
様々な病気が原因になるのですね。
嶺崎先生
そのほかにも、黄斑部に新生血管が作られることで視力が低下する黄斑変性症や、ぶどう膜で炎症が起きるぶどう膜炎などが原因となって、片目だけ視力が低下している場合があります。
編集部
網膜剥離の場合は失明の可能性もあるため、早めの治療が大事ですね。
嶺崎先生
そうですね。片目だけ視力が低下した状態を放置すると、眼精疲労や頭痛が発生するなど、体調不良を引き起こすこともあります。1週間たっても片目だけ見えづらい状態が続く場合には、早めに眼科で診察を受けることをおすすめします。
目が片方だけ悪い・片目の視力が低い状態は治せる?眼科医が教える正しい対処法・治療方法編集部
片目の視力だけ低下しているときの対処法を教えてください。
嶺崎先生
まず、病気が原因となって片目の視力が低下している場合には、病気の治療が必要です。症状をそれ以上進行させないためにも、早めに診察を受けましょう。片目の視力低下の中には、いわゆるガチャ目と言われるような片目が遠視、片目が近視のような状態や、両目に近視があって片目だけ強いこともあります。その中で、屈折値が±2.00D(2ディオプトリー)以上の差があるものを「不同視」と言います。この場合にはメガネやコンタクトレンズなどで対応することができます。
編集部
メガネとコンタクトレンズは、どう使い分けたらいいのですか?
嶺崎先生
左右の視力にそれほど違いがない場合にはメガネで視力を調整することができます。しかし、左右の視力に差が大きいような場合には、コンタクトレンズを使った方がいいこともあります。メガネの場合、目とレンズの間に距離があるため、像が縮小されたり拡大されたりして左右差の歪みが強く出やすいのです。そのため、完全に視力の差を補正するのには限界があります。
編集部
その場合にはコンタクトレンズの方がいいのですね。
嶺崎先生
はい。コンタクトレンズであれば直接目に装着するため、左右差の歪みが出にくいことに加え、コンタクトレンズはメガネと違って片目だけ矯正することもできます。ただし、「裸眼で生活したい」という希望がある場合には、レーシックやICL(眼内コンタクトレンズ)による治療が検討されます。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
嶺崎先生
片目だけ視力が低下している状態を放置すると、もう片方の目に負担がかかって眼精疲労や頭痛を招くこともあります。また、網膜剥離のように危険性の高い疾患が隠れている可能性もあります。「そのうち良くなるだろう」と自己判断せず、重症化する前に早めに医師の診察を受けるようにしましょう。
編集部まとめ
目の疾患は命に関わるリスクがそれほど高くないため、放置してしまう人が少なくありません。しかし、なかには重篤な疾患もあり、放置すると失明に至る可能性もあります。片目だけ見えづらい状態が続いている場合は、1週間ほど様子を見て、それでも治らなければ早めに受診をするようにしましょう。
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