【闘病】帰宅中に突然の歩行困難…『シェーグレン症候群』を発症「倦怠感があるのが当たり前」

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病気は気づいたときには進行していたということが多く、日々自分の体と向き合うことがとても重要です。今回お話を伺ったHydroさんは、原因不明のカリウム欠乏や貧血を指摘されて数年かかってシェーグレン症候群と尿細管アシドーシスの併発という診断が確定しました。最初に不調を感じてから診断されるまで2年以上が経過していたそうです。発症までの経緯から治療方法、現在に至るまで詳細をお聞きしました。

※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2024年2月取材。

体験者プロフィール:
Hydro_0430さん(仮称)

50代女性。大学生時代にSLEを発症するが、その後寛解。2017年冬頃にインフルエンザのような症状が現れ、内科受診を複数回行うが原因を特定できなかった。さらに歩行困難なほど体調が悪化し、精密検査を行ったところ重度のカリウム欠乏と貧血で入院・ICUに入室。その後2年以上原因不明で経過するが、2020年にシェーグレン症候群と尿細管アシドーシスの併発が判明し、現在は代謝内科・膠原病内科・腎臓内科を受診中。

記事監修医師:
副島 裕太郎(横浜市立大学医学部血液・免疫・感染症内科)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。

2年以上原因不明が続いた末の診断だった

編集部

最初にHydroさんが治療中のシェーグレン症候群について教えてください。

Hydro_0430さん

「シェーグレン症候群」は涙腺や唾液腺など、全身の外分泌腺に炎症が起こり、外分泌腺が破壊されることでドライアイやドライマウスなどの症状が現れる膠原病の一種です。本来は自分を守るはずの免疫系が自分の細胞を攻撃するもので、発症の原因は未だにはっきりしていません。40~60代の女性に多いとされており、私はちょうど発症しやすい年齢にあたります。

編集部

シェーグレン症候群も一般的にはあまり知られていないと思いますが、もう1つの尿細管アシドーシスについても教えていただけますか?

Hydro_0430さん

尿細管アシドーシスは腎臓にある尿細管が機能異常を起こし、電解質の異常を引き起こす疾患です。小児が起こしやすい先天性のものと、成人が起こしやすい遺伝性のもの、シェーグレン症候群のような膠原病に起因するものがあります。私の場合はシェーグレン症候群に起因したものと考えられ、血液検査ではカリウムとリンの顕著な低下が見られています。

編集部

どちらもあまり聞きなれない病名です。

Hydro_0430さん

そうですね、膠原病自体もあまり知られていないと思いますが、その中でも「尿細管アシドーシス」の患者さんは多くないと聞いています。症例がすくないということは、残念ながら治療へのアプローチも情報が少ないということです。今回の取材をきっかけに私もできる範囲で情報を共有し、同じような患者さんと話す機会を得られれば、完治しないと言われても気持ちの整理がつくと思います。

編集部

Hydroさんが「シェーグレン症候群と尿細管アシドーシスの併発」と診断されるまでの経緯を教えていただけますか?

Hydro_0430さん

私は元々大学生の頃にSLE(全身性エリテマトーデス)と診断されましたが、その後寛解して妊娠・出産も経験し、元気に過ごしていました。しかし、2017年の冬にインフルエンザのような関節痛、筋肉痛、悪寒、吐き気が現れました。何度も内科受診しましたがインフルエンザは陰性でした。ある時、帰宅中に症状が悪化して歩行困難になり、三次救急病院の救急外来を受診したところ、カリウム値1.5の重度のカリウム欠乏と貧血でICUに収容されました。

編集部

カリウム値1.5は命に関わる状態だったことが伺えます。

Hydro_0430さん

点滴でカリウムの補正を行い、1週間ほどで退院しました。その後は代謝内科と婦人科も受診しましたが、原因不明のままでした。そのまま2年ほど経過したころ、同病院のとある研修医の方の目に留まり、「膠原病から派生しているのでは」という話で膠原病内科に転科しました。各種検査を受けた結果、2020年に「シェーグレン症候群と尿細管アシドーシスの併発」と診断されました。現在も通院を続けています。

若い頃の闘病経験が現在の病気との向き合い方にも活きている

編集部

病気が判明した時の心境も教えていただけますか?

Hydro_0430さん

私の場合、若い頃にSLEを患った経験もあるので、シェーグレン症候群と判明した時もさほど驚きはありませんでした。「ああ、そうか」程度にしか思いませんでした。

編集部

医師からはどのように治療を進めると説明されましたか?

Hydro_0430さん

「膠原病は基本的に完治することはなく、さまざまな症状に派生していく」と伝えられました。治療方法については、「定期的な検査をしながら内服や点滴で補正を続けていく」と説明されました。

編集部

発症後も心境の変化などはありましたか?

Hydro_0430さん

若い頃にSLEを発症した時は、日常生活で諦めなければならないことがあって、理不尽だと思うこともありました。時には通院を無意味に感じて、辛いこともありました。しかし、時間の経過とともにその感情も変化しました。元々の性格もあるかもしれませんが、深く考えたところで何も変わらないし、自然とできることに注目するマインドに変化できたと感じています。

編集部

病気が判明してから心の支えになったことは何ですか?

Hydro_0430さん

友人と遊びに行くことや、次は「あれをやりたい、これをやりたい」と思いつくものは可能な限り取り組んだことですね。入院中もやりたいこと、楽しいことばかり考えていました。

編集部

もし昔の自分に声をかけるとしたら、どんな助言をしたいですか?

Hydro_0430さん

膠原病の原因はわかりませんから、考えても仕方ないこともあります。ですが、強いて言うなら「睡眠はしっかり取るように」と「なるようになる、どうせだめではなくて、きっと大丈夫」と伝えたいです。

人生の1つの瞬間を大切に過ごすことが笑顔につながる

編集部

現在の体調や生活についても教えていただけますか?

Hydro_0430さん

今は倦怠感を常に感じるという状態です。風邪が抜けきれずにだるいというイメージで、体がずっと重く感じます。倦怠感は可視化できず、「これくらい大丈夫」と思っていたら急激に悪化し、歩行すら辛く入院する羽目に何度も遭っています。正直なところ、常に倦怠感があるので、どの程度で受診すべきか未だにわからないのが本音です。

編集部

「倦怠感が常にある状態」が当たり前になってしまうと異変にも気付きにくいですね。

Hydro_0430さん

そうですね。また生活面では、服薬をしていてもカリウム値が低い状態なので、カリウムの多い食品を積極的に摂るようにしています。病院の栄養指導部にもアドバイスをいただいて、食生活には気を付けています。

編集部

シェーグレン症候群や尿細管アシドーシスについて知らない人、意識したことのない方にメッセージをお願いいたします。

Hydro_0430さん

尿細管アシドーシスだけに限った話ではなく、カリウムの欠乏は心停止につながることもあります。健康診断や人間ドックの検査は、欠かさずに受けるようにしてください。私は救急外来で「いつ心臓が止まってもおかしくない危険な状態だった」「よくこのタイミングで来たね、ラッキーだった」と言われました。

編集部

Hydroさんが医療従事者に期待すること、望むことはありますか?

Hydro_0430さん

シェーグレン症候群を疑い、判明につなげてくださった研修医の方は柔軟な姿勢で、臆することなく論文や資料などを読み漁り、色々な提案をしてくださったのでとても感謝しています。現主治医もとても柔軟な考えの持ち主で、色々考慮してくださり、家族もみな感謝しています。ただ、原因不明な時期が続いたときは通院が辛かったです。患者は十人十色であり、医療従事者の経験不足や教科書・医学書通りでなくても、症状がある限り見限らずに粘り強く向き合ってもらえればと思います。

編集部

Hydroさんがご自身の経験を通して、大事だと思うことを教えていただけますか?

Hydro_0430さん

カリウム欠乏と言われても、あまり聞きなれないかもしれません。私も同じで「カリウム? カルシウムじゃなくて?」と思い、最初はよくわかりませんでした。ですが、自分の健康は人間ドックや健康診断の血液検査でわかりますから、年に1度くらいは目を向けてみてほしいです。私の場合、ほんの数か月前の人間ドックでは正常値だったものが、入院時にはあっという間にカリウム値が下がっていて驚きました。

編集部

最後に本記事の読者向けにメッセージをお願いできますか。

Hydro_0430さん

なによりも、健康や命は大事です。いろいろと困難なこともあると思いますが、その瞬間を大切に過ごしてください。読者の皆さんが、きっと良いことがあると思いながら日々を過ごしていけたらと思います。

編集部まとめ

今回はシェーグレン症候群と尿細管アシドーシスを併発し、一時は歩行困難になるほどの悪化も経験したHydroさんにお話を伺いました。シェーグレン症候群は難病指定もされており、現代医療でも完治することは難しいとされています。Hydroさんのお話にもあった通り、いきなり発症して急激に病状が悪化することもあります。定期的な検査でその時々の体の状態を知り、異常を素早く察知することが大切です。そして、異変があった時には早期に治療しつつ、自分の体に合わせた生活に変化させましょう。

なお、Medical DOCでは病気の認知拡大や定期検診の重要性を伝えるため、闘病者の方の声を募集しております。皆さまからのご応募お待ちしております。

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