住宅ローンの審査には事前審査と本審査があり、両方に通る必要があります。事前審査では、具体的にどのような審査が行われるのでしょうか。この記事では、住宅ローンの審査における事前審査について、審査項目と落ちないための対策を解説します。

住宅ローンの事前審査とは

住宅ローンの事前審査とは、年収、勤務先、勤続年数といった申込者の属性、借入希望額、物件の担保評価などをもとにし、住宅ローンを完済できるか簡易的にチェックするものです。事前審査を仮審査と呼んでいる金融機関も存在します。

住宅ローンは高額な融資です。簡易的とはいえ、事前審査でも慎重な判断が行われます。源泉徴収票や確定申告書、本人確認書類、他のローンの借入状況といった申込者に関するさまざまな情報をもとに、返済能力や信用力が審査されます。事前審査をクリアできなければ本審査に進むことができず、住宅ローンの借り入れができません。

住宅ローンの事前審査にかかる期間は金融機関によって異なりますが、一般的には数日から1週間程度です。

なぜ事前審査が必要なのか

住宅ローンの審査では、なぜ本審査の前に事前審査が設けられているのでしょうか。ここでは、事前審査が必要な理由を解説します。

不動産取引のあり方から求められる

事前審査が実施されるのは不動産取引と関係している

住宅ローンの審査が事前審査と本審査の2段階に分かれているのは、不動産取引の方法と関係しています。

住宅ローンの契約や融資が行われるタイミングは、不動産の売買契約の成立後です。不動産の売主は、住宅ローンの融資を受けられる可能性が高い買主と契約したいと考えます。そのため、住宅ローンの本審査の前に事前審査を実施し、事前審査を通過した人と売買契約を交わすようになっています。

金融機関の慎重な姿勢
住宅ローンは、個人に対する数千万円単位の高額な融資です。また、返済期間も長期に及ぶので、貸し手の金融機関にとって「貸し倒れリスク」が高く、より慎重な判断が必要とされます。正式な本審査の前に事前審査が設けられているのは、申込者について細かくチェックするという金融機関の姿勢の表れといえるでしょう。

事前審査では何を審査されるのか

本審査の前に実施される事前審査では、何を審査されるのでしょうか。ここでは、事前審査で審査される内容について解説します。

国交省の調査では
国土交通省が公開した「令和4年度 民間住宅ローンの実態に関する調査 結果報告書」によれば、金融機関が実施している審査の項目とその採用率は以下のとおりです。

・完済時年齢:98.7%
・健康状態:97.9%
・借入時年齢:97.2%
・担保評価:96.1%
・勤続年数:93.2%
・連帯保証:93.1%
・返済負担率:93.0%
・年収:92.9%

年齢、健康状態、勤続年数、年収など、申込者本人に関する幅広い内容が審査対象になっていることがわかります。

出典:国土交通省 令和4年度 民間住宅ローンの実態に関する調査 結果報告書

年齢
事前審査においては、住宅ローン申込者の年齢も審査されます。チェックされるのは、前項にも挙げられているとおり借入時と完済時の年齢です。年齢の具体的な条件は金融機関にもよりますが、借入時に20歳以上70歳未満、完済時に80歳未満としているところが多くみられます。

健康
事前審査では申込者の健康状態も重要です。ほとんどの住宅ローンが、団体信用生命保険(団信)への加入を契約の条件としているためです。団信に加入するには、健康について一定の水準をクリアしていなければなりません。

ただし、【フラット35】を利用する場合、団信への加入は任意です。

担保評価

物件の担保評価も確認される

住宅ローンの返済が困難になった場合に備えるため、金融機関は事前審査の時点で担保評価も確認します。購入予定の住宅の担保価値が低いと、抵当権を実行する際に債権を回収できなくなる可能性が高くなるため、融資額も低く抑えられてしまいます。

返済負担率

返済負担率(返済比率)とは、総返済額を収入で割った数値のことです。収入に対して借入額が多すぎると返済が困難になる可能性が高くなるため、返済負担率についても一定の基準が設けられています。金融機関にもよりますが、30~35%を返済負担率の上限として設定されるのが一般的です。

年収など

年収、勤務先、勤続年数、職種、資産保有状況などが審査される

ほかにも、申込者の属性に関するさまざまな情報が事前審査でチェックされます。年収をはじめとし、勤務先や勤続年数、職種、資産保有状況などの幅広い情報が対象です。また、信用情報も参照されるため、過去にクレジットカードや他のローンの支払いで滞納があれば、審査において不利になります。

事前審査で落ちないためにはどうするか

住宅ローンの事前審査で落ちないためには、どうすればよいのでしょうか。ここでは、具体的なポイントについて解説します。

適正な返済負担率にする
まずは、適正な返済負担率になるよう調整しましょう。収入に対して高額すぎる不動産を購入しようとすると返済負担率が大きくなり、事前審査に落ちる可能性が高くなります。収入に見合った不動産を探し、状況に応じて頭金を設定すると、返済負担率を下げられます。

なお、返済負担率には住宅ローン以外の借り入れも含まれます。カードローンや車のローンなど他の借り入れがある場合は、住宅ローンの事前審査前になるべく完済しておきましょう。

借金返済の延滞をしない
住宅ローンの事前審査に落ちないようにするには、普段からさまざまな支払いを遅延しないよう気を付ける必要があります。クレジットカード、携帯本体の分割払い、カードローンなどの支払いや返済が遅延すれば、信用情報に記録されます。住宅ローンの事前審査では信用情報も参照されるため、何らかの遅延について記録が残っていれば、不利になる可能性が高くなるでしょう。

たとえ引き落とし用の銀行口座への入金を忘れていたために支払いの遅延が発生したとしても、例外にはならないため注意が必要です。信用情報について不安があれば、事前に信用情報機関へ問い合わせて情報開示を依頼しましょう。

収入合算を行う
住宅ローンを組む際は、収入合算で審査を受ける方法もあります。申込者の収入だけでは希望する不動産を購入するために必要な金額の融資が難しい場合、夫婦や親族で収入を合算すると、審査対象となる収入が増えて審査に通る可能性が高まるでしょう。

収入合算の方法には、具体的に連帯債務やペアローンなどがあります。連帯債務は収入合算した人が共に債務を負いますが、住宅ローンの契約は一つとなります。一方、ペアローンは収入合算した人がそれぞれ個別に住宅ローンを契約するものです。ほかにも細かい条件の違いがあるため、収入合算する場合は詳細を比較しながら検討してください。

まとめ

仮審査とも呼ばれる事前審査も、本審査と同様にきちんと準備して受ける必要があります。希望する不動産を購入するためには、住宅ローンの2つの審査両方に通らなければなりません。さまざまな項目が審査対象になりますが、事前に準備すれば審査に通る可能性を高められる場合もあります。状況に応じて収入合算の利用も検討し、事前審査の通過を目指しましょう。

【今の年収でいくらまで借りられるの?】
>>「アルヒの無料住宅ローンシミュレーション」でチェック!