“月経困難症”の薬「ジエノゲスト0.5mg」ピルの代わりになる薬? 効果・費用を医師が解説

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月経に伴って起きる下腹部痛や腰痛などさまざまな症状のことを、「月経困難症」といいます。多くの女性が悩んでいる症状ですが、近年、新しい薬「ジエノゲスト0.5mg」が登場して注目を集めています。一体どのような薬なのか、泉医院の泉先生に詳しく教えていただきました。

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監修医師:
泉 康二(泉医院)

昭和52年3月日本大学医学部卒業。日本大学医学部付属病院(駿河台、板橋)、大宮赤十字病院(現・さいたま赤十字病院)、国立立川病院(現・国立病院機構災害医療センター)、日本大学産婦人科などを経て平成3年2月2日泉医院開設。

ジエノゲスト0.5mgとはどんな薬?

編集部

ジエノゲスト0.5mgとはどのような薬ですか?

泉先生

月経困難症の治療に用いられる薬で、ピルに代わる新しい薬剤として注目を集めています。

編集部

どのような効果があるのですか?

泉先生

ジエノゲスト0.5mgは女性ホルモンのひとつである黄体ホルモンの化合物です。これを服用すると、簡単にいえば「子宮内膜を薄くさせ、排卵をしない」状態になります。通常、月経前には子宮内膜が厚くなり、それが剥がれ落ちて経血となり、体の外へ排出されますが、ジエノゲスト0.5mgを服用すると子宮内膜が厚くならず、薄い状態で保たれます。そのため月経をなくすことができるのです。

編集部

月経がなくなるということは、生理痛などの症状もなくなるということですね。

泉先生

はい、月経に伴う腹痛などの痛みは、子宮内膜組織から分泌される痛み物質に原因があります。ジエノゲスト0.5mgを服用すると子宮内膜組織の増殖が抑えられ、子宮内膜が委縮し出血がなくなるため、月経困難症、過多月経は改善し、黄体ホルモンの変動がなくなります。よって、月経前症候群(PMS)も改善します。

編集部

ジェノゲスト0.5mgを服用すると、女性ホルモンも産生されなくなるのですか?

泉先生

いえ、女性ホルモンのうちプロゲステロン(黄体ホルモン)のみが制御され、エストロゲン(卵胞ホルモン)は産生されます。

ジエノゲスト0.5mgとピルの違いとは?

編集部

月経困難症の治療でピルを服用している人も多いと聞いています。

泉先生

確かに従来、月経困難症などの治療にはピルを用いるのが一般的でした。ピルには女性ホルモンが配合されており、服用することで体内のホルモンバランスに働きかけ、排卵を抑制します。そのため子宮内膜が厚くなりにくく、月経困難症を改善することができるのです。

編集部

ジエノゲスト0.5mgとピルはどう違うのですか?

泉先生

まずは、低容量ピルには血栓症のリスクがありますが、ジエノゲスト0.5mgにはありません。

編集部

それはどういうことですか?

泉先生

低容量ピルを投与すると、エストロゲンとプロゲステロンは産生されなくなります。そこで、薬剤により外部からエストロゲンとプロゲステロンを補い、月経など体内のリズムをコントロールすることになります。しかしここで問題なのが、薬剤によって外部から得るエストロゲンは、本来体が自分の体の中で産生しているエストロゲンとは異なり、エチニルエストラジオールという合成のエストロゲンである、ということです。

編集部

「エチニルエストラジオール」でどのようなことが起こるのですか?

泉先生

エチニルエストラジオールは、体内で産生されるエストロゲン(エストラジオール)に比べて、4~6倍強い作用を持っており、これが血栓症の原因となることがわかっているのです。

編集部

ピルを服用すると血栓症のリスクが高まるというのは、そのような仕組みなのですね。

泉先生

そうです。実は、低容量ピルとは名ばかりであり、実際は「以前のピルに比べて低容量になった」というだけ。非常に強い合成エストロゲンが配合されているということに注意が必要です。

編集部

ジェノゲスト0.5mgには、血栓症のリスクがないのですか?

泉先生

はい。ジェノゲスト0.5mgを投与しても、体ではエストロゲンが産生されているため、外部から合成エストロゲンを補う必要はなく、血栓症のリスクがないのです。

編集部

ほかにジエノゲスト0.5mgとピルの違いはありますか?

泉先生

低容量ピルは、特に血栓症のリスクが高まることから40歳以上にはすすめられません。また14歳以下の女性も最大骨量の低下を招くリスクがあることから推奨されていません。しかし、ジエノゲスト0.5mgは年齢に関係なく使えるというのもメリットです。

編集部

いろいろなメリットがあるのですね。

泉先生

そのほかにもヤーズとヤーズフレックス以外の低容量ピルには男性ホルモン様作用があり、ニキビが増えるといったリスクもありますが、ジエノゲスト0.5mgにはそのような作用がありません。また、自分の卵巣からエストロゲンが分泌されているので月経が無くなっても心配はいりません。またほかの薬との相互作用があまりない、薬価が安いといったメリットもあります。

治療における注意点

編集部

ジエノゲスト0.5mgのデメリットはありますか?

泉先生

最も多い副作用に不正出血があります。不正出血はだいたい3か月程度続くとされていますが、個人差があります。どうしても気になる場合には医師にご相談ください。

編集部

なぜ、不正出血が起きるのですか?

泉先生

なぜなら、子宮内膜が萎縮するのに3か月くらいかかるためです。一旦子宮内膜が萎縮すれば不正出血の頻度は減少します。

編集部

不正出血が続く場合には、使用を中断しなければならないのですか?

泉先生

いえ、一般に出血が少量である場合には使用を継続し、多量の出血がある場合には4日間休薬し、5日めから再開します。こうすることで出血量が減少します。

編集部

ほかに治療における注意点はありますか?

泉先生

低容量ピルは毎日決まった時間に1日1回服用します。しかしジエノゲスト0.5mgは半減期が7時間と短いため、1日2回服用する必要があります。会社や学校などにも持参するようにしましょう。

編集部

ジエノゲスト0.5mgには避妊効果もあるのですか?

泉先生

はい、ジエノゲスト0.5mgは子宮内膜を萎縮させるため、きちんと服用をしていれば、受精卵が着床できません。また排卵も抑制されるため、理論上は妊娠しないと考えられます。

編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

泉先生

ジエノゲスト0.5mgはピルと違って血栓症のリスクがない、理想的な治療薬だと考えられます。使用を開始して3か月くらいは出血しますが、徐々に頻度が減ってくるのでそれほど心配はいりません。特に10代前半など、若い人の場合はピルの服用が推奨されないため、月経困難症やPMSを改善するにはジエノゲスト0.5mgがベストな選択肢となります。興味がある方はぜひ、婦人科の医師にご相談ください。

編集部まとめ

月経困難症やPMSに悩んでいる人のなかで、ピルからジエノゲスト0.5mgに変更する人も多くなっています。なにより血栓症のリスクがなく、安全に使えるのがジエノゲスト0.5mgのメリットです。身体的な問題でジエノゲスト0.5mgの使用が制限されるようなことはなく、基本的には誰でも安心して使うことができます。興味があれば早速医師に相談してみましょう。

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