撮影=木村辰郎

神奈川県川崎市川崎区を拠点とする、8MCによるヒップホップ・クルーBAD HOPが19日、東京ドームで解散ライブとなる『BAD HOP THE FINAL at TOKYO DOME』を開催した。国内のヒップホップアーティストが東京ドームで単独ライブを行うのは初。歴史にその名を刻んだ。

BAD HOPは、双子であるT-PablowとYZERRを中心に、Tiji Jojo、Benjazzy、Yellow Pato、G-k.i.d、Vingo、Barkのメンバーで構成される。2023年5月27日日本最大級のヒップホップフェス「POP YOURS」の大トリで出演した際に解散を発表。ラスト全国ツアーとして『THE LAST SUMMER - Japan Tour』を完走し、2024年2月9日にラストアルバム『BAD HOP』をリリース。2月19日BAD HOPの活動の集大成となるライブが幕を開けようとしていた。

開演時刻になりこれまでの活動を振り返る映像がスクリーンに投影。オーディエンスはスマホのライトを灯し、ステージに向かって大きな歓声を送る。ステージ奥から威風堂々と登場した8人。スモークがステージを覆う中、ラストアルバムのオープニングを飾る「TOKYO DOME CYPHER」で幕は開けた。オーディエンスも8人の熱いパフォーマンスに魅了されていく。

「ここまできたぜ!」と、特効の炎がド派手に吹き上がるなか「IKEGAMI BOYZ」、真っ赤に染まるステージが高揚感を煽る「Round One」、「Final Round」と攻めの姿勢を見せるBAD HOP。

Tiji Jojo、eyden、Deechによる「South Side Night」、そして、会場から<Higher>のコールが巻き起こった「Higher Remix」、「俺とどっちがラップが上手いか勝負しようぜ!」と話し届けられた「B2B」は、BenjazzyとBonberoによるスリリングなラップで、会場の熱気をさらに高めた。

BAD HOPの中でも重要なナンバー「SUPER CAR」から、その続編となる「Supercar2」を披露。BAD HOPのスケール感が大きくなったことを体現したナンバーだ。夢を叶えてきた8人だからこそ、この曲のアップデートは感慨深いものがあった。そして、オーディエンスとのシンガロングが印象的だった「3LDK」、「Asian Doll」、「これ以外」と、エモーショナルなナンバーを立て続けにパフォーマンス。

G-k.i.dが「東京ドームに集まったみんなと歌いたい曲がある」と投げかけ、「CALLIN’」を披露。G-k.i.dは、オーディエンスの歌声に満足そうな表情を浮かべる。そして、「GILA GILA」でAwichがステージに登場すると、テンションが上がるオーディエンスの歓声。YZERR、JP THE WAVY、LEXの3人でアグレッシブなラップで会場を扇情していく。

ここでKenKen(Ba)、金子ノブアキ(Dr)、masasucks(Gt)、伊澤一葉(Key)がステージに登場。気鋭のメンバーによる臨場感のある生バンドサウンドがドームに広がった「Back Stage」で会場のテンションは爆発的に高まっていく。

ライブも佳境に突入。ステージ上ではさらにオーディエンスの熱気を煽るかのように特効の炎が吹き上がるなか、BAD HOPの矜持が詰め込まれた「Champion Road」を披露。生バンドの演奏も相まってボルテージは最高潮だ。続いての「Mukaijima」ではANARCHYとシンガーのAIが参加し、ここまでの流れとは違った雰囲気を醸し出す。このライブのひとつのフックとなっていた。

YZERRが「俺たちが憧れていたスターを呼んでいるぜ」と告げ、AK-69とともに届けられた「SOHO」。AK-69は「あの時の少年が今ここドームに立ってる。こんな美しい景色ないだろう。解散なんてまだ早いんじゃないの?

この尊い時間、みんな目に焼きつけろ」と熱いメッセージを届けた。再び盛大なシンガロングが巻き起こった「High Land」。まさにこの空間を体現しているようなリリックと心地よいサウンドで楽しませた。美しい青色の空間が広がった「Ocean View」、「Last Party Never End」とエモーショナルナンバーでさらに盛り立てた。

T-Pablowが「俺が尊敬している人の新曲を1曲やるよ」と話し、「Empire Of The Sun」を披露。楽曲の途中でT-Pablowの憧れのスター、Zeebraがゲストとして登場し、熱いラップを披露。T-PablowとZeebraがハグする場面も。Zeebraは「お前らが歴史を作ったんだよ」とBAD HOPの活動を称賛すると、オーディエンスもこの言葉に拍手を送った。

YZERRは「解散だなんて、自分たちも忘れちゃうくらい本当に楽しいです。HIPHOPを愛するみんな、集まってくれて本当にありがとう。一つだけ言わせてほしい。なにかいろんなものを抱えこんでいるやつとか、クソみたいな環境で生まれたやつとかたくさんいると思うんだよ。このままじゃ抜け出せないとか、無理だとか。全員に一つだけ言いたいのは、BAD HOPがここに立っているということだけは忘れないでくれ」と呼びかけ、「Kawasaki Drift」を投下。これまでの活動の全てをぶつけるような全霊のパフォーマンスに、オーディエンスも全力で応えていく。彼らの生き様が詰まったラストパフォーマンスに、さらに一体感が高まっていく。

YZERRは、「10年間俺たちのこと応援してくれて本当にありがとうございました」と感謝を伝えると、オーディエンスからも「ありがとう」の声が響いた。

T-Pablowは「みんなの心の中で生きていた俺たちBAD HOPは永遠に死なないと思うので、ここまで応援してくれてありがとうございます。またいつか何十年後かわからないけど、みんなとこうやって集まれたら、また集まりたいなと思っています」と希望につながる嬉しい言葉を残し、「BAD HOP THE FINAL at TOKYO DOME」の幕は閉じた。

スクリーンには“BAD HOP FOREVER”の文字と、その下にそれぞれのサインが添えられた。

あっという間の2時間30分。10年間の矜持が詰め込まれたBAD HOPのステージは、多くの人たちの目と心に焼きついただろう。彼らの妥協なき生き様は未来永劫語り継がれていくはずだ。【村上順一】セットリストBAD HOP THE FINAL at TOKYO DOME2024.02.1901.TOKYO DOME CYPHER02.IKEGAMI BOYZ03.Round One04.Final Round05.I Feel Like Goku06.South Side Night (eyden, deech)07.Higher - Remix (\ellow Bucks, YZERR, Tiji Jojo, eyden, Bonbero)08.B2B (Bonbero)09.BHG10.Chain Gang11.White T-shirt12.Mobb Life13.Super Car14.Supercar215.3LDK16.Asian Doll17.これ以外18.Prologue19.201820.CALLIN’21.Day N Night (KEIJU, guca owl)22.Locker23.Friends (JP THE WAVY, LEX)24.GILA GILA (Awich, YZERR, JP THE WAVY)25.Shoot My Shot (漢 a.k.a GAMI, Eric.B.Jr)26.4L (C.O.S.A, IO)27.Chop Stick28.Hell Yeah (MaRI Candee)29.Foreign30.TEIHEN(Candee)31.Back Stage32.Suicide - Remix (Hideyoshi, Jin Dogg)33.Bayside Dream34.Champion Road35.Mukaijima (ANARCHY, AI)36.SOHO (AK-69)37.Diamond38.High Land39.Ocean View40.Last Party Never End41.Empire Of The Sun (Zeebra)42.Hood Gospel43.Kawasaki Drift※情報の初出時、セットリストに誤りがございました。訂正してお詫びいたします。