神経ブロック注射は誰でも受けられる? リスクはないの?【医師解答】
「神経ブロック注射」は、痛みの原因となる神経に直接薬剤を注入する治療法です。そこで、「誰でも受けられるのか? リスクはないか?」などの疑問を、整形外科医の横山洋平先生(若宮中央医院 院長)に答えてもらいました。
監修医師:
横山 洋平(若宮中央医院)
日本医科大学医学部卒業後、京都大学医学部附属病院や彦根市立病院、大津市民病院、亀田総合病院などで経験を積む。関越病院整形外科脳神経外科医長を務めたのち、2023年、若宮中央医院院長となる。日本脳神経外科学会専門医、日本リハビリテーション医学会認定臨床医、日本脊髄外科学会認定医、日本脊椎脊髄病学会脊椎脊髄外科専門医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター。
痛みの治療法にはどんなものがある?
編集部
痛みはどうして起こるのですか?
横山先生
痛みは身体に何かあった時、異常事態を知らせる警告としての役割があります。例えば、くも膜下出血の兆候として頭が痛くなる、心筋梗塞の兆候として胸が痛くなるなどの痛みは典型的な「警告」の例です。
編集部
では、痛みの治療法には、どのようなものがありますか?
横山先生
痛みの原因やメカニズムにもよりますが、例えば、薬物療法や神経ブロック注射、物理療法、運動療法、それでも軽減しない痛みには脊髄刺激療法などの治療法があります。
編集部
「神経ブロック注射」とはどんな治療ですか?
横山先生
神経ブロック注射は、疼痛やしびれなどを軽減するために、特定の神経や神経叢(しんけいそう/神経の束)に薬剤を注入する治療法です。全身の痛みに対して使うことができ、内服薬での薬物療法よりも迅速で確実な効果が期待できます。
編集部
もう少し詳しく教えてください。
横山先生
私たちが痛みを感じるとき、原因となる部位から「知覚神経」という神経を通って、脳に「痛い」という信号が送られます。ほかには「交感神経」という、血管を収縮させる神経によって起こる痛みもあります。このような、痛みの原因となる神経や神経叢の近くに局所麻酔薬を注入することで痛みを和らげようという治療法が神経ブロック注射です。また、状態によって、抗炎症作用や鎮痛作用のあるステロイドを用いることもあります。
神経ブロック注射は誰でも受けられる? 医師が解説
編集部
使う薬剤にも種類があるのですね。
横山先生
そうですね。さらに、注入する場所によって、「トリガーポイント注射」や「星状神経節ブロック」「硬膜外ブロック」「神経根ブロック」「三叉神経ブロック」などにも分けられます。
編集部
神経ブロック注射は誰でも受けられるのですか?
横山先生
例えば先ほどの「くも膜下出血」や「心筋梗塞」などであれば、痛みの原因の治療を優先するケースはもちろんありますが、基本的にはほとんどどなたでも受けることができます。もちろん医療行為ですので、まずは問診をして、神経ブロック注射の適応かどうかは医師が確認します。とくに糖尿病の方や抗血栓薬・抗凝固薬などのいわゆる「血液サラサラ薬」を飲んでいる方などは注意が必要です。「血液サラサラ薬」を飲んでいる方は、一定期間の休薬が可能な場合に神経ブロック療法を行うことができます。
編集部
所要時間や入院の必要性などについても教えてください。
横山先生
入院の必要はありません。外来で治療が可能です。ただし、神経ブロック注射を行うと、知覚の神経だけでなく運動を司る神経もブロックされるため、その部分が動かしにくくなっている可能性もありますので、注射後には安静時間が必要となります。安静時間はブロックした神経にもよりますが、例えば神経根ブロックや硬膜外ブロックであれば30分くらいです。安静後、問題なく動かせるかどうかが確認できればご自身で帰宅できます。
ブロック注射を受けるときのリスクは? 効果の持続時間も教えて
編集部
ブロック注射を受けるとき、注意しておくリスクなどはありますか?
横山先生
神経ブロック注射は、エビデンスもしっかりしており、非常に安全性の高い治療法です。しかしながら、身体に針を刺しますので、まれに感染や出血が起こることがあります。感染しやすい糖尿病の方や血が止まりにくい「血液サラサラ薬」を飲んでいる方などは慎重に、と先ほどお伝えしたのはそのためです。
編集部
効果はどのくらい持続するのですか?
横山先生
単に薬効として痛みがなくなるという効果は「数時間」ですが、痛みの連鎖を遮断することによって長期間(最長で3ヶ月程度)にわたる除痛効果が得られます。
編集部
それはどういうことでしょうか?
横山先生
痛みの伝達というのはとても複雑にできており、「知覚神経」から電気信号が伝わり、脳内で「痛み」として認識されるまでに、痛みを増幅させる神経回路や逆に痛みを抑制する神経回路が介在するのです。痛みを感じ続けていると、そういった回路が悪循環を起こし、「痛みの連鎖」を生じてしまいます。これを数時間でも薬で断ち切ることで、その後の痛みの感じ方も変わってくるのです。
編集部
最後に、Medical DOC読者へのメッセージがあればお願いします。
横山先生
痛みの原因や強さは人それぞれですが、患者さんの治療要望もまたそれぞれ異なります。ペインクリニックでは「手術をしても良いから、とにかく根本から治療したい」「手術は怖いのでお薬で」「治療は最低限で、痛みと上手く付き合っていけたら」など、多様な要望に沿った治療を一緒に考えていくことができます。痛みで悩んでいる方は、お近くのペインクリニックを調べてみてはいかがでしょうか。
編集部まとめ
痛みというのはとても複雑。しかし、治療法もまた多くのバリエーションが開発されているようです。痛みに悩む方の要望もそれぞれ異なると思いますが、ペインクリニックでそれに適した治療法を見つけられるかもしれません。ご参考まで。
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