「単価が上がること自体は問題ないのですが……」医療界賃上げへ 初診料引き上げ
2月15日の「おはよう寺ちゃん」(文化放送)では、木曜コメンテーターで京都大学大学院教授の藤井聡氏と寺島尚正アナウンサーが、医療界の賃上げに関するニュースについて意見を交わした。
藤井氏「本当は“需給調整”しないといけない」
2年に1度見直される診療報酬の改定内容が決定した。幅広い医療従事者の賃上げにあてるため、初・再診料や入院基本料といった基本的な報酬を引き上げるほか、マイナ保険証の利用促進を後押しする報酬もつくり、患者にも負担を求める。
すべての患者に共通する初診料の引き上げは、消費増税への対応以外では2004年の改定以来、20年ぶり。今の2880円から2910円に、30円上がる。
再診料は今の730円から750円に20円引き上げ。入院基本料は1日あたり50~1040円上がる。
さらに看護師や薬剤師、理学療法士ら幅広い職種の医療従事者の賃上げのために60円を上乗せする「ベースアップ評価料」を新設。それでも十分な賃上げができない場合は診療所で80~640円、病院で10~1650円を上乗せ可能とする。
報酬改定は2年ごとで、今回の最大の柱は医療従事者の賃上げのための報酬引き上げ。
寺島アナ「医療界の賃上げ、藤井さん、これはいかがですか?」
藤井氏「これはまぁ全体が物価高になってきてますから、医療業界が購入する財・サービスの分も高騰してますから、適正な話だとは思いますね。僕は“過剰医療”の話はしていますけども、単価が上がること自体は問題ないんですよ。ただ、“頻度”が問題だ、と」
寺島アナ「頻度かぁ」
藤井氏「だって、僕がスウェーデンに住んでる時に、とある病院に行かなきゃいけないことがあって、うちの家族で。普通だったら月に2、3回行かなあかんところを『2ヶ月ごと』って言いよるんですよ。『お前それ大丈夫か、おいっ!』って思ったんですけど、スウェーデン人は全部それなんですよ。それで全く問題ないんですよ。だから過剰やなぁ思って」
寺島アナ「あっ、逆に考えればね? スウェーデンから見ればね? 日本は」
藤井氏「そうそうそうそう。で、薬もドーンと2、3ヶ月分渡しよるわけですよ。でも日本はちょこちょこちょこちょこいくじゃないですか。『今度いつですか?』とか『また来週の水曜日に来てください』とか。『よう行かされるなぁ、仕事忙しいのになぁ、こっち』とか思いながら。で、そういうのが外国と全然違うんですよ」
寺島アナ「イギリスも、いま藤井さんがおっしゃったスウェーデンの人たちと同じ感覚だそうですね」
藤井氏「あー、そうですそうです。イギリス人が一番びっくりしてましたけどね。イギリスの医者が日本の駅におった時に、いろんな看板があって『あの看板、何?』とかって日本人に聞いたら『あれは◯◯病院と、◯◯病院と……』って答えて、『お前ら、おかしいんか?』と。『病院は病になった人が来るところやろ?』と。『なんで、来てくれって頼むねん、看板で。商売ちゃうねんぞ!病院は』って心底驚いたって言ってました。それが全てを物語ってますよね。病院っていうのは警察署みたいに必要が生じた時にご厄介になる所で、『あそこのラーメン屋行ってみようかな』とか『あそこのフィットネス行ってみようかな』みたいな話とは全然違うよ、と。そこから間違えてるんですよ」
寺島アナ「“過剰”じゃなくて“適正”っていうところに持っていこうっていうところですね?」
藤井氏「うちの研究室の医者が言ってましたけどね、『病院多すぎるんですよ』って。儲からへんからね、めちゃくちゃ過剰にはなるんですよ。だからラーメン屋が増えすぎて必死になってラーメン売ってるみたいな」
寺島アナ「ライバル店増えてね?」
藤井氏「そうそうそう(笑)。だから本当は“需給調整”せなあかんのですよ。『この辺には医療の需要がこれぐらいやから、病院はここまで』とかやらんと、勝手に金儲けでやっとるから。それでだから病院は赤字が多いんですよ。6割赤字経営なんですよ。だから過剰医療、必死になってるんですよ。お前ら病院になりすぎや、と。めちゃくちゃなんですよ」
寺島アナ「医療はもちろん大事ですけど、そういう問題があるんですね」