4スト400レーサーレプリカの舞台で、ウイニングランを飾ったのは間違いなくRVF(NC35)!【このバイクに注目】(このバイクに注目)
RC45→NC35でペア開発
隆盛を極めたレーサーレプリカも、1990年代に入るとあまりのエスカレートぶりにユーザーが追従できず、徐々に下火になりはじめていた。
そんな終焉期だからこその集大成マシンをホンダが1994年にリリース!
車名も「RVF」と排気量を表示しない「ワークスマシン」そのものを連想させる勢いに溢れていた。
400ccクラスへ初のV型4気筒、VF400Fを投入したのは1982年。
2気筒と同じスリムさ、しかしシリンダーがV字に前後へ展開するフォルム、さらにはスポーツバイクを操るカギとなるスロットル・レスポンスや、トラクションとして旋回加速を強める実質トルクの特性など、はじめてならではの課題から従来のインライン4(並列4気筒)との違和感が先行、すぐには認められにくいデビューだった。
そこから1986年にレース・シーン人気の波に乗り、カムギアトレーンのレース技術を投入した先鋭化マシン、VFR400Rで一躍表舞台の主役に。
ワークスマシン参戦、750cc制覇に続き400ccでもV4強しのイメージが浸透し、そこへVFR400Rがいかにもレーシングマシン然とした仕様でリリースされた。
V4マシンは世界で圧倒的な強さで破竹の勢い。そうした中、同じ1987年に750ccワークスマシンRVFをそのまま限定生産したRC30(VFR750R)をリリース。
その翌年の1988年、まさかの400cc版で、型式名もNC30とRC30の生き写しを直感させる仕様で、メジャーなクラスへとてつもない高次元マシンを投入したのだ。
シビアなレース戦線で鍛えられた勝てるV4へと進化した成果は凄まじく、400ccとは信じられない、まさに600cc並みの強力トルクでコーナリングでグイグイ押し出しながら旋回する醍醐味は、鍛え上げられた完璧といえるハンドリングと共に、まさにクラス唯一と他を完全に圧倒していた。
同じフォルムながらフルモデルチェンジ!その圧勝続きに、当面はモデルチェンジの必要性を感じないだろうという大方の予想をホンダは覆した。
1994年にRC30の次世代V4マシン、RC45/RVFのリリースと同時に、400cc版も発表となったのだ。
RC45は透視イラストにもあるように、エンジンの前方ハンガーを大きく、逆にフレームは柔軟性も与えつつ、積み上げた王者の経験値をフィードバックしていた。
V4も全面刷新で、燃焼効率の見直しと360°クランク特有のトラクション効率をさらに引き出すトータルチューンで大幅に進化していた。
そのRC45の進化を、新RVF(400)はほぼ継承。
フレームのエンジンハンガーからスイングアームに至るまで、剛性バランスの見直しで必要な剛性と柔軟性をバランスよく確保するという理想のレベルに達していた。
エンジンも以前からのカムからバルブを直押しせず、極小のロッカーアームを介するフリクション低減の僅かなアングル精度を高め、バルブ径など逆に縮小化で効率をアップした結果、14,000rpmと以前から変わらない高回転域ながら鋭く軽々と吹け上がる質感を高めていた。
もちろんパワーと強いトルクが、ワイドな回転域ですぐ呼び出せるポテンシャルにも磨きがかけられていた。
1996年モデルが最終400V4レプリカ……そんな完成度を高めたRVFは、1996年にカラーリングの変更でマイナーチェンジを加えたが、既にレーサーレプリカの時代は終わりを告げていて、1998年が最後の販売となった。
同じレプリカで、2スト250ではNSR250Rが最強の位置に君臨、エンジン特性からハンドリングまで、圧倒的な完成度の高さを見せつけていた。
RVFもまさしく同じ最強の位置を独り占めしたが、それを評価するにはピークを過ぎていたため、そこまで名機とされていない。
しかし中級クラスで、ここまで開発に密度の濃い時間と莫大なコストをかける可能性はまずないといえるだろう。
ホンダ史上でも、傑作マシンの1台であるのは間違いのない事実だ。