「肺がん」になると現れる初期症状はご存知ですか?ステージについても解説!

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食事が喉を通らない感じや胸・背中などに痛みを感じることはありませんか。もしかすると食道がんに罹患している可能性があるかもしれません。

食道がんは初期段階であれば症状がなく、普段通りの生活を過ごせます。しかし、ステージ4まで進むと手術による腫瘍の切除が不可能な状態であり、周辺の臓器への転移が確認されます。

食道がんのステージ4の場合、がんの進行度だけでなくパフォーマンスステータスも治療方針を決めるためには重要になってくるでしょう。

本記事では、食道がんのステージ4について、状態・治療方法・5年生存率も解説します。食道がんのステージ4と診断された方やご家族の方は参考にしてみてください。

監修医師:
甲斐沼 孟(TOTO関西支社健康管理室産業医)

大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。2023年、TOTO関西支社健康管理室産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

食道がんステージ4とはどのような状態?

食道がんのステージ4とはがん細胞が食道を起点とし、食道周囲にある臓器に広がっているため切除が不可能な状態です。
または、肺や肝臓などの遠隔臓器への転移がみられる状態を指します。がんのステージは下記にある3つのカテゴリーによる組み合わせにより決定されます。

がんの起点からの広がり(Tカテゴリー)

食道近くにあるリンパ節に転移したがんの個数(Nカテゴリー)

遠隔臓器への転移の有無(Mカテゴリー)

これらのカテゴリーから、食道がんのステージ4はステージIVAとステージIVBに分類が可能です。また、ステージIVの場合は、がんのステージだけでなく患者さんの体を動かせる度合いを示すパフォーマンスステータスも、食道がんの治療方針を決定する指標となっています。
それでは、ステージIVAとステージIVBについて詳しくみていきましょう。

ステージIVA

ステージIVAとは、リンパ節や遠隔臓器への転移はさほどみられないものの食道がんから浸潤し周辺の臓器へ広範囲に広がっているため、切除が不可能な状態です。
NカテゴリーやMカテゴリー上では、リンパ節への転移は無しもしくは1~2個・3~4個ほどリンパ節への転移がみられる段階です。Tカテゴリーでは、深刻な内視鏡での切除が不可能な段階まで進行している状態になります。
パフォーマンスステータスが良好な場合は化学放射線治療を中心として根治治療が進められますが、不良な場合は緩和的対症療法が中心の治療がメインとなるでしょう。

ステージIVB

ステージIVBとは、Mカテゴリー上で肺や肝臓といった遠隔臓器への転移が顕著にみられる状態です。Tカテゴリーでは周辺臓器への広がりは小規模から広範囲まで全ての状態が含まれます。
パフォーマンスステータスが良好で食べ物を通過できない通過障害がない場合は、抗がん剤による化学治療がメインになります。反対に通過障害がみられる場合は、がん細胞へ直接照射する放射線治療が中心です。
パフォーマンスステータスが不良の場合はステージIVA同様緩和的対症療法がメインとなります。

食道がんステージ4の5年生存率は?

食道がんは年々罹患率が減少しているものの、傾向として60~70代で多く発症し、女性よりも男性の罹患率が高いです。また、食道がんの発見と同時または1年以上の間に咽頭がん・肺がん・胃がん・大腸がんがみつかることが多いです。
これらは内視鏡検査の受診にて発見されることが多く、早期発見できれば内視鏡治療や手術治療といった完治を目指す治療法になります。ただし、がんの進行が既に進んでいる場合はがん進行の抑制や緩和治療が中心になります。
食道がんステージ4の5年生存率は、転移が領域内であるステージIVAであれば生存率が33.7%です。転移が遠隔臓器にもみられるステージIVBであれば生存率が10%になります。
また、食道がんでも食道の粘膜内に限局する場合は内視鏡治療や手術治療によるがんの切除と抗がん剤治療の併用で5年生存率が80%まで上昇します。このように食道がんは転移の有無や範囲によって生存率に大きく影響するため、早期発見が重要です。

食道がんの進行度を診断するための検査方法

食道がんの進行度を診断するためには、下記の検査を用いて総合的に判断します。

超音波内視鏡検査

CT検査

PET-CT検査

その他の検査

超音波内視鏡検査により病変の発見・表面上の現状を把握し、より詳細な状態を知るためにCT検査・PET-CT検査を組み合わせて診断します。では、各検査について詳しくみていきましょう。

超音波内視鏡検査

内視鏡検査では食道の内部を内視鏡にて観察し、病変の位置・範囲・形状などをリアルタイムで確認できます。内視鏡検査で撮影するスコープは技術の進歩によって高画質・高解像度の機能があり、食道内の粘膜の状態をきめ細やかに投影できます。
そのため、凹凸や色の変化などにも着目できるようになりました。病変ががんかどうかは所見にてある程度判断できますが、がんの組織型を確認する目的から病変を採取して生検にて診断します。病変の採取は内視鏡検査時に観察とともに実施され、鉗子で採取した組織を顕微鏡でより詳しく調べることで正確な診断が可能です。
また、拡大内視鏡では食道の表面を拡大することによって微細血管の変化まで観察することが可能です。これにより、病変の良悪性鑑別診断や食道がんのうち粘膜の表面や下層で留まっている表在がんの深達度などを精密に診断します。

CT検査

食道がんの進行度を診断する上でがんの深達度を知る必要があります。がんの深達度を知ることで治療の際にがん細胞の切除する範囲を判断します。
CT検査では隣接した臓器への浸潤を診断するために実施され、内視鏡検査では確認できない内臓の内側を造影することにより深達度の診断が可能です。また、リンパ節への転移についてもCT検査が用いられ高解像度での評価が可能なため、ごく小さな転移病変も確認ができます
このようにCT検査では内視鏡により発見された病変の内部について詳細に調べられます。

PET検査

PET検査とは、がん細胞が正常な細胞と比較してブドウ糖を取り込みやすい性質を利用して行われるもので、体内にブドウ糖を投与して特殊なカメラにて撮影する方法です。PET検査では食道がんだけでなく、リンパ節への転移はもちろんのこと、他臓器や骨などへの転移があるかをも知ることができます。
PET検査によって周辺または遠隔臓器の転移を確認することで、全身状態の現状について診断可能になります。

その他の検査

CT検査やPET検査の他に、MRI検査もリンパ節や他臓器への転移を調べるためには有用な検査です。拡散強調という機能を用いて、がん細胞の拡散状態を把握することで質的な診断が可能です。
また、治療段階においてもこれらの検査を用いることで効果測定を行うことが可能になっています。

食道がんステージ4の治療方法

食道がんステージ4の場合、主な治療方法として放射線治療・抗がん剤治療・緩和治療・ステント療法があります。治療方針はステージIVAとステージIVBによって異なり、またパフォーマンスステータスや通過障害の有無も影響があります。
では、食道がんステージ4の治療方法について詳しくみていきましょう。

放射線治療

放射線治療は、がんやその周辺に対して体外から放射線を照射することで治療する方法です。放射線治療には、放射線のみ行われる治療方法と抗がん剤も併用して行われる化学放射線療法があります。放射線治療の目的には、がんを治す目的で行われる場合とがんを縮小することで痛みや出血を和らげる目的で行われる場合があります。
ステージ4の場合は後者の緩和的治療を目的として行われることが多いです。放射線治療は治療自体の侵襲が少なく、臓器の機能や形状を保てる利点があり、治療目的に応じて数週間かけて行われる治療です。
照射する間隔や抗がん剤の有無は、がんの状態や進行度などから策定した治療方針によって異なります。ステージIVAの場合、他の臓器への浸潤から切除ができない食道がんが対象とされ、全身状態が良い場合は根治的な治療として化学放射線療法が選択可能です。

抗がん剤治療

食道がんステージ4における抗がん剤治療とは、手術治療や放射線治療では効果が限定的になる遠隔転移に対して効果が期待できる治療方法です。患者さんのパフォーマンスステータスとして、日中起きて動けるほどの体調であれば抗がん剤治療が実施できるでしょう。
体調が悪い状態で抗がん剤治療を行うと副作用によって、むしろ悪化させてしまう恐れがあるからです。抗がん剤治療の目的はがんをコントロールすることです。そのため、抗がん剤を繰り返し使用し、がんを抑えることによって日常生活を送れるようにすることを目指して治療が進められます。
抗がん剤の副作用は一般的なもので吐き気・食欲不振・口内炎・下痢・脱毛・倦怠感などが挙げられます。副作用として現れた症状に対し、対症療法を行うことが重要です。

緩和治療

食道がんステージ4では食道がん病変部の増大により飲食物の通りが悪くなることで栄養状態に支障をきたす可能性があります。また、周辺臓器への転移によっては咳が出やすかったり、声が出しづらかったりします。これらの症状によってQOLの低下がみられるでしょう。
緩和治療は痛みや症状の緩和を目的とし、患者さんが快適に日常生活を送れるようにする治療が施されます。がんの進行や転移による痛みについては、がん疼痛の薬事療法に関するガイドラインに基づいて治療が行われます。

ステント療法

ステント療法は進行性の食道がん病変部が増大することにより水分や食物が喉を通りにくくなる通過障害を改善するために食道ステントが用いられます。食道内腔を広げることで水分・食事の摂取ができるようにするのです。
なお、治療目的の放射線治療を実施する際は食道ステントの留置は実施しないように強く推奨されています。加えて放射線治療後も食道ステントを留置すると重篤な合併症を引き起こす恐れがあるため、これらの危険性については十分な理解が必要です。

食道がんのステージ4についてよくある質問

ここまで食道がんステージ4の状態・治療方法・5年生存率などを紹介しました。ここでは「食道がんステージ4」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

食道がんステージ4の余命はどれくらいですか?

甲斐沼 孟(医師)

食道がんステージ4の余命はどのくらいかは、治療の効果や患者さん個々の状態は違うため一概にはいえません。どの種類のがんに対してもいえることですが、ステージが上がることで生存率は低くなります。特に食道がんは進行が早く、治療が困難ながんです。ステージが進んでしまう前に、早期発見が重要となります。

食道がんを早期発見する方法を教えてください。

甲斐沼 孟(医師)

食道がんを早期発見するには定期的な内視鏡検査の受診が効果的です。内視鏡検査では色調の変化や凹凸具合も鮮明に捉えられるため、早期発見につながります。また、初期段階の食道がんであれば転移の可能性も低いため、内視鏡検査にて切除することにより根治も可能です。

編集部まとめ

今回は食道がんのステージ4について、状態・治療方法・5年生存率を解説しました。転移の状態や浸潤による広がりの範囲などからステージIVAとステージIVBに区別できます。

放射線治療や緩和治療によって根治または痛みの緩和を目的として治療が進められます。

5年生存率は転移が領域内であれば33.7%の割合ですが、遠隔臓器への転移がみられる場合は10%に低下するでしょう。そのため、早期発見・治療が重要です。

食道がんは初期段階では症状がほとんどありません。しかし、食事がしにくくなったり声が出しにくくなったりなどの異常を感じた場合は、ぜひ内視鏡検査を受診してみてはいかがでしょうか。

食道がんと関連する病気

「食道がん」と関連する病気は4個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する病気

胃がん

大腸がん

頭頸部がん

肺がん

食道がんでは、重複がんがみつかるケースもあります。そのため、食道がんが完治した場合でも重複がんが発症していないかを経過観察する必要があるでしょう。

食道がんと関連する症状

「食道がん」と関連している、似ている症状は6個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

飲食時の胸の違和感

飲食物がつかえる感じ

体重減少

胸や背中の痛み

声のかすれ

この中でも特に飲食時の胸の違和感は早期発見につながる可能性のある症状といえます。慢性的な症状が現れる頃にはがんが進行している恐れがあるため、違和感がみられたら一度検査を受診しましょう。

参考文献

食道がんのステージと治療の選択(日本食道学会)

放射線治療/化学放射線療法(日本食道学会)

緩和治療(日本食道学会)

食道がんについて(国立がん研究センター)