「発信する側」の問題は「受け取る側」の問題でもある?
2月7日「西川あやの おいでよ!クリエイティ部」(文化放送)、今回は哲学研究者の永井玲衣に代わって、俳優の松尾諭が出演。番組レギュラーであるノンフィクションライターの石戸諭とはABCテレビ「news おかえり」でも共演している。特集コーナーでは、いまや手軽にできるようになった「意見の発信」について語り合った。
西川あやの「いろんな意見を持ったとき、石戸さんはノンフィクションライターという職業でもありますが、どうやっていらっしゃいますか?」
石戸諭「新聞記者を辞めてインターネットに移って、30代最後の5年ぐらいで、自分の原稿の書き方にすごく変わったところがひとつあって。『自分の考え、自分はこう思うということ』を、加減はあるけど入れるようにしています。そうしないと、読んだ人から意見が出てこない。反応しにくいんです」
西川「マスメディアだとある程度、公平性を保たないといけない。主観は我慢して……?」
石戸「基本的に新聞はそういう書き方になっていないから。主観を入れるというのは、求められることもあるけど原稿には要らない。ネット(の記事)ではガンガン書きます」
西川「私もいろんなコメンテーターやゲストの方にお話を伺うとき、ある程度自己開示したほうが議論も盛り上がる。リスナーからのメールも気持ちの入ったものがいただける、というのがありますね。松尾さんはどうですか?」
松尾諭「僕らみたいに不特定多数の人に発信の場が与えられていると、それが炎上するリスクもあるじゃないですか。怖れない人もいるでしょうけど、僕みたいに肝っ玉のちっちゃい人間は、ちょっとYahoo!ニュースで叩かれると(気分が)撃沈するので(笑)」
石戸「ここ最近の傾向で、芸能界とかの不祥事、ハラスメントの問題を、ニュースとして扱いましょうという方向に変わってきた。ハリウッドの『#MeToo』以降は特に大きいけど、そういうのも積極的に扱わないといけないんだ、となってきて。週刊誌の報道もある程度受けましょう、という方向に進んでいる」
西川「最近、俳優の方や芸人の方が世の中に対する意見を求められることが増えたと思うんですけど、今週月曜の田村亮さんのコラムでも、辛辣な意見のほうが求められて、モヤッと両論併記みたいなことをすると『芸能人同士、甘い』みたいな意見が来ることが多い、みたいに話されていました」
松尾「たとえば芸能関係のニュースなら僕は一般の人よりは内情がわかる。そっちに寄ったコメントをしたとする。そうすると『叩かれている人たちをかばった』と矢面に立たされる。でもいろんな意見があってしかるべきだし、反対意見の人を一方的に攻撃する、ということが発信を阻害している気がします。今回の議題も発信する側の話ですけど、受け取る側が聞く耳を持たないと、発信する意味もなくなるし、しなくもなるんじゃないかと思います」
番組では、芸能界にいながら自身の意見を発信し続ける小泉今日子さんのことも話題に。小泉さんは「芸能人が『政治的な発言をして……』と言われるけど、『国民的な発言』じゃないかな」といった意見を明かしている。そういった姿勢を松尾は「格好いい」と言う。
松尾「いまの小泉さんってすごく格好いいなと思うんですよ。僕も最初はやっぱり、俳優たるもの自分の意見を言うものではないと思っていた。役に影響するから。『news おかえり』に出ていてどの口が言う、という感じですけど(笑)。やってみたら、難しいは難しいけど、人のいろんな意見を生で聴く、情報交換ができる。簡単ではないけどやりがいのある仕事だと感じています。小泉さん以外にも自分の意見を発信する俳優は増えてきているけど、日本だと売れている人ほど言いにくいと思うんです」
西川「はい」
松尾「たとえば広告をやっているからとか。誰も彼もが言えばいいというものじゃないですけど、言いたいと思っている人がいるなら声を上げるべき。あとはちゃんと聴いてもらいたい」