顧客の心を掴むには、なにをすればいいのか。営業術コンサルタントの上實貴一さんは「手土産は顧客との絶好の印象づくり・話題づくりの絶好のチャンスだ。私はあえて役に立たない物や、他の人とは違う物を贈っている」という――。

※本稿は、上實貴一『ず〜っとつながる紹介営業』(すばる舎)の一部を再編集したものです。

写真=iStock.com/LightFieldStudios
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/LightFieldStudios

■コミュニケーションがうまい人が習得している2つのコツ

共通点をつくるための事前準備には、大きく2つコツがあります。まずは情報の聞き出し方です。

大分類から中分類へ、そこからさらに小分類へとバランスよく相手の情報を聞き出す練習をしておきましょう。

もう1つのコツは、聞き出した相手に関する情報を、自分の情報と結びつけて共通点にすることです。

話術がたくみな芸人さんなどは、意識的なのか無意識的なのか、流れるようにこの2つのコツを実践しますが、コミュニケーションが苦手な人が実践するには慣れが必要です。必ず事前に練習しておきましょう。

逆に言えばある程度、事前準備ができていれば、話術がイマイチな人でも必要十分な共通点づくりはできます。

具体的には、まず自分自身にまつわる情報や特徴についても、大分類・中分類・小分類のそれぞれで整理し、自己認識しておくことです。

頭のなかだけで行わず、ノートなどに書き出して整理することをお勧めします。

■相手との共通点を見つける方法

自分のことはよくわかっているつもりですが、実は3つの分類のうちの小分類でしか認識していないことがよくあります。

たとえば「要町駅の近くに住んでいる」「趣味は3on3のバスケットボール」「好きな食べ物は鳥の甘酢あん」だとして、これらはすべて3つの分類のなかでは「小分類」に該当します。これでは、なかなか同じ駅や趣味、食べ物が相手と被ることはありません。

そこで、「中分類」にまで視点を引き上げることができれば、「池袋エリアに在住」「趣味は球技・チームスポーツ」「好きな食べ物は酢と醤油を使った料理」などとなり、相手と自分で共通する要素を引き当てる確率が上がります。

さらに「大分類」にまで視点を上げれば、「東京に住んでいる」「身体を動かすことが好き」「鶏肉が好き」と、もはや共通点が何も出てこないほうが難しいレベルにまで範囲を広げられます。

会話のなかでとっさに共通点を見つけるのが苦手な人は、このような形で自分の特徴をあらかじめ大分類・中分類・小分類に分けて整理しておくことで、相手との共通点をすぐに見極められるようになります。

■47通りの答えをあらかじめ用意する

さらに、「自分の特徴に被りやすい質問」を先に準備しておくと、自然な会話のなかで共通点を見つけやすくなります。

「スポーツは好き?」と聞いて、答えがイエスなら「何のスポーツ?」と聞きます。そこで自分の趣味であるバスケットボールと共通しないかを確認し、その答えがノーであれば、「ということはインドア派?」とさらに聞いて、インドア系の自分の別の趣味などと共通項がないかを確認する。

こんな感じに、ある程度先までイエス/ノーの質問のパターンをあらかじめ用意しておくのです。

もう1歩進んだ方法として、相手がどんな答えやリアクションをしても、必ず自分との共通点に引き寄せるパターンをあらかじめ準備しておく、という手もあります。

たとえば「出身はどちらですか?」と聞けば、相手は47の都道府県のどれかを答えるでしょう。そこで、あらかじめ各都道府県と自分とのかかわりを47通り準備しておきます。

「沖縄ですか。実は私も、一度旅行に行ったことがありまして……」「秋田ですか。私は直接行ったことはないんですが、実は秋田名物の桜の皮の茶入れを普段から使っているんですよ」「へ〜、愛知ですか。部下の1人が名古屋出身で……」

こんなふうに、一つひとつは他愛もないエピソードでかまわないので、とにかくどんな答えが出てきても共通点につなげられる受け答えのパターンを事前に準備しておくと、なかなか共通点が見つけられない相手や、細かく相手の情報を聞き出す時間的な猶予がない場合に便利に使えます。

■私が常に5色のハンカチを持ち歩くワケ

私自身、このテクニックを相手との距離を詰める際の鉄板パターンにしています。少しアレンジして、常に5色のハンカチを持っておくという方法です。

写真=iStock.com/plavevski
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/plavevski

こうしておくと、相手が何色のハンカチを持っていたとしても、「あ、同じ色ですね!」と言えます。相手のハンカチの色がわからなくても、ネクタイの色やシャツの色などを指して、「あ、その色、今日の私のハンカチとお揃いです!」などと言いながらその色のハンカチを取り出せば、とりあえず最初の共通点をつくり出せます。

そして少し話したあとで、「実は『一緒ですね!』と言いたいがために、いつも5色のハンカチを持っているんですよ」とハンカチをすべて見せることで、ちょっとした笑いも取れます。

さらにその理由について話すことで、「営業のプロフェッショナル」としての実力を相手に印象づけられる、というわけです。

5色のハンカチは少し上級者向けの方法ですが、似たようなネタや展開を自分なりに考えて準備してみましょう。私自身を含め、コミュニケーションが得意ではない人ほど事前の準備が物を言います。

商談の途中で話に詰まってしまったとしても、この鉄板パターンで少なくとも1つは共通点を引き出せるので、初対面でも緊張しにくくなる効果もあります。

ポイント
共通点を3段階で把握するのに合わせて、自分に関する情報も事前に3段階で整理しておく。
そのうえで、必ず共通点が生まれる鉄板質問を用意する。

■必殺の手土産の選び方

相手との初対面時や、先方の職場や自宅へ訪問するときには、手土産を持っていく営業担当者が多いでしょう。しかし、それだけでは他の営業担当者と同じで、強い印象は残せません。

長く安定した関係をつくりたければ、相手に何かをプレゼントできるタイミングは、絶好の印象づくり・話題づくりのチャンスだと捉えてください。

私の場合、手土産のお菓子などとは別に、事前にヒアリングしている相手の趣味に応じた小物をプレゼントするようにしています。あなた自身のユーモアやオリジナリティを組み合わせた品物であれば、なおよいでしょう。

たとえばゴルフが好きな方には、その人の名前や写真入りのゴルフボールを差し上げたことがあります。また仲がよいお客さまが結婚したときには、必ず夫婦の顔がプリントされた結婚Tシャツをつくり、頼まれてもいないのにプレゼントしています。

昆虫採集が好きな友人には、食虫植物をプレゼントしたこともあります。

実用的なものは相手も自分で買いますから、あえてこういった無駄な物・楽しい物・面白い物・ワクワクする物を贈ることで、相手の印象に残り、話題にしてもらうことができます。徹底して、そういったものをプレゼントに選ぶようにしていました。

■自分のいないところで自分を話題にしてもらう

これらの変わったプレゼントを贈る狙いは、「自分のいないところでも話題にしてほしい!」です。実際にこれらのプレゼントがきっかけで相手の印象に残り、自分のいないところでその小物が話題にされて、ついでに私自身も話題になり、最終的に紹介や成約が起こる、といったケースがときどきあります。

上實貴一『ず〜っとつながる紹介営業』(すばる舎)

たとえば先ほどの顔写真入りの結婚Tシャツを私の既存客の男性にプレゼントしたときには、それがきっかけとなり、その奥さまに「結婚のときに顔写真Tシャツをくれた面白い人」として認識してもらえました。その後、奥さまにはじめて会ったときには「あ! 結婚Tシャツをくれた人ですよね!」と一気に距離が縮まり、その奥さまも私のお客さまになっていただけました。

このように、プレゼントも「自分のいないところで自分を話題にしてもらうためのツール」という観点で選べば、紹介や成約を増やす助けとなります。手土産などを渡す機会がある方は、ぜひこだわってみてください。

ただし、やりすぎると段々と期待される笑いのハードルが上がりますし、相手も負担に感じる可能性があるので、1人に対して1回までとしておきましょう。

ポイント
手土産などプレゼントを渡せる機会は、印象づくりや話題づくりの観点からは貴重なチャンス。
あえて役に立たない物や、他の人とは違う物を贈って、自分がいないときにも話題にしてもらおう。

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上實 貴一(かみざね・たかかず)
総合FP資産形成・コンサルティング社長
1982年、神奈川県生まれ。國學院大學法学部を卒業。2015年にスカウトを受けソニー生命保険に転職。新人賞および7年連続で社長賞を獲得。MDRT(Million Dollar Round Table)やCOT(Court of the Table)を獲得後、2022年に保険セールスマンの上位0.01%しか入れないTOT会員の資格を得る(128万人の保険セールスの上位100位以内)。同年、総合FP資産形成・コンサルティング株式会社を設立。培った独自の営業スキーム、金融業界知識、接客・接遇スキルを活かし、業界問わず営業パーソンの育成にも積極的にかかわり、活躍の場を拡大している。『ず〜っとつながる紹介営業』が初の著書。
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(総合FP資産形成・コンサルティング社長 上實 貴一)