『さらば、男性政治』で2023年度「石橋湛山賞」を受賞した上智大学法学部教授の三浦まりさんが1月26日の大竹まことゴールデンラジオに登場。受賞した本の内容について伺った。

大竹「三浦さんは『なんとなくうまくいっているムード』の終わり、ということをおっしゃってます。今はもう、ちゃんと現実に向き合わないといけない状況になっているのに、それをしていないんじゃないかと。」

三浦「経済的な停滞は、さすがに多くの人が認識する状況になっていると思いますけど、今に始まったことではなくて、もっと早い段階で気づいて改革していたら良かったと思います。ですが意思決定の中心に売る人からすると、痛みが伝わってこなかったので、『このままなんとか行けるのではないか』と、いろんなことを先延ばしにしてきた結果が今、急激な円安であるとか、なかなか景気が回復しない構造に出ているんだろうと思います。」

大竹「日本は何をやってきたといえば、イベントではオリンピックがあって、成功したのかしないのかよく分かりませんけど、その後に関西万博が控えています。」

三浦「昭和の夢ですよね。リニアにしてもそうだと思うんですけれども、大きなイベントでやっていくのはもう無理だろうと思います。この30年間、日本って全く成長してないんですね。よく、『もっと成長が必要だ』という人と、その逆で『脱成長に行こう』という人がいて、イデオロギー的に対立しているように見えますけど、私からしたら事実上脱成長しちゃったのが日本じゃないかと思います。今不景気でも一部の人たちにとっては株もいいし、豊かな人たちはいる。でも若者にとっては経済成長はイメージが湧かないので、だいぶ前から学生たちに『経済成長ってどんな感じなんですか』って質問されるわけですよ。最初、どういう意味?ってびっくりしたんですけど、確かに生まれた時から全く成長していないことだけを見ていたら、経済が成長する雰囲気が全く分からない。他方、成長してる国から来る留学生は、もう自分が今の状況どうであれ、豊かな未来を信じきってるわけですね。」

大竹「未来を信じきってる学生って、大体どのあたりの国から来てるんですか?」

三浦「中国でも東南アジアでもそうだと思います。コロナになってから少し状況が違って来たと思いますが、今20代前半だと、自分が生まれてから育ってくる時にはずっと成長してる。経済発展の要素を見ているわけですから、どんどん新しい建物が建って、技術革新をして、という毎日を過ごしているので、そのまま自分の未来もそうであろう、みたいな想像をしている。」

室井「私も大竹さんも、なんか怖くなかったじゃん。なんとかなるさ、みたいな。」

大竹「何やっても生きていけるんじゃないかなって思ってました。」

三浦「そういう感覚が、今の人たちにとってはこれからさらに悪くなるだけだから、今より悪くなってほしくないなっていう風に変わってきてる。でも、こういう風にしてしまった、若者をそういう風に思わせてるのは、大人の責任なので、何よりも本当に一部の人たちだけで、同質的な集団で、それは性別でいえば男性中心にやってきた意思決定が責任を持っているから、そこを変えていこうという趣旨の本です。」

大竹「日本の若者たちは今自分のいる状態をそんなに否定もできないんじゃないかなって想像するんですけど、授業の現場はどうですか?」

三浦「若者もすごく変わってきていって二極化してると思います。一部の若者はすごくアクティブになって、Z世代と言われるような世代は、気候変動とかジェンダーにすごく関心が高いし、実際に具体的なアクションを取る学生が、5年前と比べて今の方がはるかに多いです。いろんな意味での正義についてのアンテナが立っていて、授業でも女性議員が少ない話をもっと聞きたいという学生は、5年前はあまりいなかったんですけど、今は最初から日本政治の授業でジェンダーの話をしてほしいという学生が3分の2くらいいるんですね。そこは私からすると大変化です。だけど大多数の学生からすると、やっぱり政治は関わってもあまりいいことがないし、あまり自分たちにも関係がないことだろうと言って関わりたくないなと思っている学生の方が多いのは事実だと思います。」

大竹「そうですよね。その辺がなんか、関わりたくない感じが、この年寄りにも伝わってくるんですよね。」

三浦「政治に自分と近しいような人が出ると関心は持つようになるので、もっと若い人たちが候補者に出れば関心は高まると思いますね。いつまでたっても70代80代の人たちばかりだと、若者からすると関心を持ちにくいのは当然のことだろうと思います。」