井上尚弥の規格外さにゴロフキンを育てた名トレーナーも脱帽 次戦でネリ圧倒なら「とんでもない選手になる」と断言

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タパレスを圧倒した井上。その強さにはボクシング界を代表する名トレーナーも賛辞を惜しまない。(C)Takamoto TOKUHARA/CoCoKARAnext

 文字通り敵なしの強さを発揮し続ける井上尚弥(大橋)。世界が「モンスター」と称える彼の圧倒的なポテンシャルに対する賛辞は止む気配がない。

 23年も井上の強さは規格外だった。7月には、昇級後初戦で迎えたスティーブン・フルトン(米国)とのWBC&WBOスーパーバンタム級世界タイトルマッチ12回戦に8回TKOで勝利。「難攻不落」と言われた王者に圧勝すると、12月にはWBA&IBF王者マーロン・タパレス(フィリピン)との同級4団体統一12回戦で10回KO勝ち。史上2人目となる2階級での“完全制覇”を成し遂げた。

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 日進月歩で飛躍を続ける井上はタパレス戦後のリング上で「今の適正階級はスーパーバンタム級だと思っているので、来年、再来年とまたこの階級でもっと強い姿を見せられるように精進していきたい」と明言。当面の間は同階級で王座を保持する意向を示した。となると、今後に気になってくるのは対戦相手だが、現時点で最有力候補として挙げられているのは、元2階級王者のルイス・ネリ(メキシコ)である。

 すでに今年5月の対戦に向け、水面下で交渉中だと報じられているネリ。今年2月にアザト・ホバニシャン(アルメニア)を、7月にフローイラン・サルダール(フィリピン)をそれぞれTKOで撃破。WBCスーパーバンタム級1位に君臨し、昨年11月のWBC年次総会では、井上とタパレスによる4団体統一戦勝者への指名挑戦者に定められていた。

 確実に実績を積み上げてきている“メキシコの悪童”を評価する声は小さくない。現地時間1月4日、米ボクシング専門YouTubeチャンネル『Fight Hub TV』に出演した元トレーナーのアベル・サンチェス氏は「ネリは全盛期を過ぎているが、良い選手だ」と持論を展開した。

 IBF&WBAスーパー統一ミドル級王者で、「闘神」と称えられる名手ゲンナジー・ゴロフキン(カザフスタン)など16人の世界王者を育て上げたサンチェス氏は、現在のネリについて「関係者から聞いたのだけど、彼は自分自身を見つめなおして、今は物凄いハードなトレーニングを重ねているみたいなんだ」と評価する。ただ、「実際に私がジムで彼を見た時も変化は感じた」と実力を認めながらも、同氏は井上の力量には及ばないと指摘する。

「だからこそ、今のネリに勝ったらイノウエはとんでもない選手になると思うんだ。もしも、フルトン戦のように倒したとしたら、もうお手上げだね。ネリのことまで彼がボコボコにするなら、これまでの功績と同様に評価すべきスペシャルなことだ」

 もっとも、ネリは2017年と18年にWBC世界バンタム級タイトルマッチで山中慎介氏と2度対戦し、ドーピング違反と体重超過が判明。日本ボクシングコミッション(JBC)から日本での活動停止処分が下され、事実上の永久追放となっている。そうした事情もあり、日本開催が実現するかは不透明なままだ。

 これについてサンチェス氏は、「イノウエ陣営が世界的に売り出したいなら、こっちで試合はすべきだと思う」と強調。「PPVが売れて、パウンド・フォー・パウンドでも絶対的な地位を固めたいなら、こっちでやるべきだ」と論じてもいる。

 百戦錬磨の敏腕トレーナーも称える井上の強さは、いったいどこまで続くのか。その一挙手一投足に世界が熱視線を向けている。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]