ULAの新型ロケット「ヴァルカン」初打ち上げは1月8日の予定 米民間企業の月着陸船を搭載
アメリカの民間宇宙企業ユナイテッド・ローンチ・アライアンス(ULA)は、同社が開発した新型ロケット「Vulcan(ヴァルカン、バルカン)」の初打ち上げを日本時間2024年1月8日に行う予定です。今回の打ち上げミッションは「Certification-1(Cert-1)」と呼ばれています。
ヴァルカン初号機は米国フロリダ州のケープカナベラル宇宙軍基地にある垂直統合施設(Vertical Integration Facility:VIF)で打ち上げに向けた準備が進められています。現地時間2023年12月21日にはロケットの先端に搭載されるペイロード(人工衛星などの搭載物)を打ち上げ時の風圧などから保護するフェアリングの取付作業が行われ、組み立てが完了しました。
ULAによると、ヴァルカン初号機には2つのペイロードが搭載されました。1つはアメリカの民間企業アストロボティックの月着陸船「Peregrine(ペレグリン)」で、合計21のペイロードを月面に運ぶ予定です。ペレグリンの着陸目標地点は「嵐の大洋」の北東の端に位置する入江「Sinus Viscositatis(※)」で、成功すれば民間企業として世界初の月着陸となります。
※…意味は英語で「Bay of Stickiness」、日本語の仮訳は「粘りの入江」(Wikipediaより)。国際天文学連合(IAU)が2022年12月に承認した新しい地名。
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もう1つは宇宙葬を手掛けるアメリカの企業セレスティス(Celestis)のペイロードで、SFドラマ「スター・トレック」の生みの親として知られるジーン・ロッデンベリー氏とその妻や同作に出演した俳優の遺骨をはじめ、ジョン・F・ケネディ氏ら元米国大統領の遺髪も含まれています。セレスティスのペイロードはヴァルカンの第2段機体に固定され、ペレグリンの分離後に実施されるエンジン噴射で地球を離れた深宇宙へと投入されます。
今回のミッションではヴァルカンの「VC2S」形態が使用されます。VCは「Vulcan Centaur(ヴァルカン・セントール)」の略称で、2Sは2本の固体燃料ロケットブースター(SRB)およびショートサイズのフェアリングを使用していることを表します。
ヴァルカン初号機の打ち上げは日本時間2024年1月8日16時18分(米国東部標準時同日2時18分)にケープカナベラル宇宙軍基地第41発射施設で実施される予定です。ULAによると、発射から1分50秒後に固体燃料ロケットブースター(SRB)が分離され、発射4分58秒後には第1段エンジンの燃焼が停止。第1段機体の分離に続いて発射5分14秒後には第2段エンジン「Centaur(セントール)」による1回目のエンジン噴射(約10分間)、発射43分35秒後には2回目のエンジン噴射(約4分間)が実施され、ペレグリンを分離。その後に3回目のエンジン噴射(約20秒間)が実施され、打ち上げミッションは終了する予定です。
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Image Credit: ULAULA - Vulcan to launch FIRST certification mission (Cert-1)ULA - VulcanULA - Vulcan Cert-1: Payloads mounted atop rocket for launchCelestis - Historic Enterprise Flight & ULA Vulcan CentaurSpaceflight Now - ULA stacks Vulcan rocket for the first time ahead of Jan. 8 debut launch
文/出口隼詩