元世界王者が井上尚弥のPFP1位に「トップと戦ってない」と異論！ クロフォードとの比較に「失礼」と反発

PFPでトップ争いを続ける井上。その論争が大きな話題を集めている。(C)Takamoto TOKUHARA/CoCoKARAnext

　活況を呈しているボクシング界のパウンド・フォー・パウンド（PFP）論争に、元世界ライトヘビー級王者が興味深い一石を投じた。

　注目を集めたのは、元世界ライトヘビー級王者アントニオ・ターバー氏（米国）が自身のYouTubeチャンネルで発した持論だ。12月26日に東京・有明アリーナで行われたボクシングの世界スーパーバンタム級4団体統一戦12回戦で、WBA＆IBF王者マーロン・タパレス（フィリピン）に10回1分2秒KO勝ちを収めたWBC＆WBO王者・井上尚弥（大橋）について、「イノウエはクロフォードが戦ったほどの相手と対戦していない」と指摘した。

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　文字通り圧巻のKO劇だった。4回に猛ラッシュでダウンを奪った井上は、10回に守勢に回ってカウンターを狙い続けるタパレスに対し、見事なワンツーの流れから強烈な右ストレートを炸裂。ガードの上から強打を浴びたタパレスは2度目のダウンをすると、膝から崩れ落ち、10カウントが鳴った。

　貫録のKOで、井上はアジア人で初めて「2階級4団体統一」の歴史的偉業を達成。“最強”を巡る論争は一気に白熱した。PFPは体重差がなかった場合の最強選手をランキング化するもので、各メディアや識者に持論がある。そうしたなかで、世界で最も権威ある米専門誌『The Ring』は、今年7月にエロール・スペンスJr.との無敗対決を制し、史上初の2階級での4団体統一を成功させたテレンス・クロフォード（米国）を1位に推挙していた。

　様々な議論が噴出しているなかで、ターバー氏は「イノウエをけなしているわけではないよ。イノウエはPFPトップ5入りは確実だ」と前置きしたうえで、「少し早すぎると思う。将来的に1位になる可能性がない訳ではない。今はクロフォードの時代だ。彼はそれを勝ち取ったんだ」と断言。ウェルター級の偉才を1位とする理由を語った。

「クロフォードはPFP入りしているエロール・スペンスと戦ったんだ。イノウエはそのレベルの選手とは対戦していない。クロフォードはそんなレベルの相手と対戦して声価をより高みに上げた。だから今年はクロフォードの年だ。俺の中では年間最優秀選手もクロフォードになると思う。履歴書を見れば、デビン・ヘイニーもPFPに入ってくると思う。25歳でやっているわけだからね。イノウエは30歳で2階級4団体統一だ」

　さらに自身のX（旧ツイッター）でもターバー氏は、「みんな止めてくれ！ 彼（イノウエ）は一体誰に勝ったって？ 比べるのは失礼だ」と主張。クロフォードとの激化するPFP論争に油を注いだ。

「俺はイノウエの試合を多く見たわけではないが、いったい何人のPFPのトップ選手と対戦したんだ？ 彼はトップファイターと戦ったわけではない。誰かがクロフォードを倒すまでは、彼がPFPのチャンプなんだ！ イノウエの名前とブランドを弄ぶのは止めろ！ PFPの議論なんかするべきじゃない」

　井上とクロフォード。どちらも凄まじいパフォーマンスを見せているからこそ、PFPの議論に明確な答えはない。ゆえにしばらくの間は、どちらが格上かを巡る論争は続きそうだ。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]