井上尚弥(左)とマーロン・タパレス【写真:荒川祐史】

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パッキャオ全盛期も取材したフィリピン記者を直撃

 ボクシングの世界スーパーバンタム級(55.3キロ以下)4団体統一戦が26日、東京・有明アリーナで行われる。25日は前日計量が神奈川・横浜市内のホテルで行われ、WBC&WBO王者・井上尚弥(大橋)が55.2キロ、対戦相手のWBA&IBF王者マーロン・タパレス(フィリピン)が55.0キロで一発パス。タパレスの母国からも複数のメディアが来場し、ボクシング取材歴20年以上のベテラン記者は、「お互いが真っ向勝負をすれば、8ラウンドまでには決着がつくでしょう」と展開を占った。

 地元紙「フィリピン・スター」のアバック・コルデロ記者は、4団体統一の取材で来日。20年以上ボクシングを取材し、世界6階級制覇を成し遂げた母国の英雄マニー・パッキャオ氏の試合も25戦ほど取材してきた大ベテランだ。

「THE ANSWER」の取材に対し、目前に迫った4団体統一戦について「もし両者が序盤から逃げ回ったりせず、真っ向勝負をするようならKOで終わると思います。おそらく中盤、8ラウンドまでには決着がつくでしょう」と予想。海外メディアやオッズでも井上優位と見られているが、同記者も井上を「非常に考えられるボクサー」と称し、母国のボクサーを差し置いて井上優位と主張した。

「イノウエが油断すれば、タパレスはいいパンチで捕まえられるでしょう。そうでなければ、イノウエがしっかりとしたアドバンテージを持つと思います。(展開は)彼の選択次第です。もし彼が打ち合いを望むなら、KOを狙いに行くのなら、最初の2ラウンドで様子を見ると思います。

 まずタパレスのパンチを受けられるか感じてみて、大丈夫だと判断したら圧をかけて攻撃していくでしょう。彼(井上)はダウンを喫したことがないですからね。タパレスは過去2度KO負けをしています。最初の2ラウンドにかかっていると思います」

 何でもできる井上だが、特に上回る点として「パワーとスピード」と指摘。「タパレスはスピードの評判はそれほど高くありません。パッキャオの全盛期は『2人のボクサーと対戦しているようだった』と相手が言うほどのスピードでしたが、タパレスのスタイルはそうではありません」と分析した。

タパレス最大の強みとは

 アジアではボクシングが盛んな国に入るフィリピン。タパレスはパッキャオや元世界5階級制覇王者ノニト・ドネアほど国内の知名度はないという。ひいき目なしの厳しい論調だが、同国唯一の現役世界王者が持つ最大の強みにも触れた。

「ボクシングのスキル以上に、ハングリー精神、モチベーションだと思います。もしイノウエに勝てば? 一晩で(人生の)全てがひっくり返ります。彼自身だけでなく、家族、両親、兄弟姉妹たちにとっても全てが変わります。

 もし勝てば、確実に再戦が組まれると思っています。そうなれば、彼は無謀なこと(金額)でも要求できます。そしてフィリピンで非常に有名になるでしょう。フィリピンボクシング界の新しい祝福の対象になります。4団体統一王者になるのですから。もちろん、簡単なことではありませんがね」

 パッキャオも、ドネアも成し遂げていない4団体統一。同記者は井上優勢としながらも、フィリピン人初の偉業のチャンスを得たタパレスに期待を寄せていた。

(THE ANSWER編集部・鉾久 真大 / Masahiro-Muku)