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全国の山林に「ダイオキシンを含む除草剤」が埋まったままになっていることをご存じでしょうか?

【写真を見る】「ベトナム戦争で米軍が散布した枯れ葉剤」と“同じ成分”の除草剤が実は『全国の山林に埋まったまま』豪雨による流出の危険度や国の対応は?

近年頻発する大雨による土砂災害。それによって流れ出る危険はないのか?半世紀を経て、いま撤去へと動き始めています。

国有林に埋められ処分された“猛毒”ダイオキシンを含む「除草剤」

記者「熊本市内の国有林に来ています。フェンスに囲まれた部分に除草剤が埋まっているということで、土壌のかく乱を防ぐためにも立ち入り禁止となっています」

ほとんど人の出入りがない山中でフェンスに囲まれた場所。ここに埋まっているのが、「2,4,5‐T(に・よん・ご・てぃー)系」と呼ばれる除草剤です。

ベトナム戦争でアメリカ軍が散布した「枯れ葉剤」と同じ成分で、猛毒のダイオキシンを含みます。

「2,4,5‐T系」が一般の除草剤として農薬登録されたのは、今からおよそ60年前。
国も国有林の植林の際などに使用していましたが、その後、発がん性など健康被害が問題視され、国内での使用を中止に。

当時はダイオキシンを無害化する技術がなかったことから、法律に基づき国有林に埋められ処分されました。

それから半世紀以上。

「負の遺産」ともいわれる埋設地は、全国で46か所で熊本県内では熊本市と宇土市、芦北町に埋設地が。

取材を進めると現状の課題が見えてきました。

当時の法律基準を大きく上回った“処分方法”

熊本市では地下1メートルほどに“1295キロ分”が、その10倍の量の土壌・セメント・水と混ぜ、「コンクリートの塊」として埋められています。

宇土市でも熊本市と同様に埋められていて、その量は実に“2055キロ”に上るといいます。

しかし、当時の法律に書かれた処分方法を確認すると「1か所に埋設する量は原則として300kg以内」との記載が。

基準を大きく上回っている埋設量について林野庁の熊本森林管理署は、「当時の資料がなく、理由はわからない」としています。

この状況について、ダイオキシンの汚染問題に詳しい熊本学園大学の中地重晴(なかち しげはる)教授は、“管理体制の不備”を指摘します。

熊本学園大学 中地重晴 教授「どんな有害物を埋めたのかというのがわかるように、記録は保管をしておかないといけない」

国はこれまでに開いた検討会で「除草剤は周囲に拡散しておらず、住民生活に影響はない」と主張しています。

熊本森林管理署 中村雄二 次長「これまでずっと年2回と臨時の点検を行っていますけど、異常はなかったというところで、安定して存在している」

しかし近年、豪雨災害が多発。

芦北町では3年前の『7月豪雨』で、埋設地からわずか1キロの場所が崩落しました。

地元自治体や住民から除草剤の流出を不安視する声が増え、ようやく国は撤去へと動き出しました。

国が撤去へ動くも…

熊本学園大学 中地重晴 教授「簡単に流れ出すことはないと思いますけれども、水害被害は結構ありますから、流れ出さないとは言えないという意味では、危険性はあると思います」

撤去作業の方針を固めるため、そのモデル地区の一つに宇土市が選ばれました。

国は埋設物を掘り起こし、高熱での焼却を計画。今年度中にも着手したいとしていますが…。

現在、宇土市の埋設地では担当業者が決まらない事態に。

その理由について中地教授は「費用面の課題」を挙げます。

熊本学園大学 中地重晴教授「1か所あたりの(埋設)量は少ないので、有害物を扱うというリスク管理からすると、あまりにも少額の契約なので、もうからない」

技術が進歩した半面、自然災害が増加している現在、国はどう動くのか?
その判断が注目されます。