2024年から大きく生まれ変わるNISA。NISAの基本的な仕組みと、新NISAの制度を紹介します(写真:スムース/PIXTA)

2024年からNISA(少額投資非課税制度)が大きく生まれ変わる。時限的だった制度が恒久化され、非課税投資枠も拡大する。NISAとはそもそもどのような制度で、2024年からどうなっていくのか。書籍『新しいNISA かんたん最強のお金づくり』を上梓した、ファイナンシャルプランナー・横田健一氏が解説する。

預貯金のみの場合とどのくらい違うのか

資産形成をおこなっていく際に、「新しいNISA」を活用した場合と、預貯金のみの場合で、どのくらい違うのでしょうか。

はじめに、長期的に積み立てをおこなうイメージで、毎月2万円を20、25、30、35年間それぞれ積み立てていくといくらになるか、利回りごとに確認してみましょう。まず、タンス預金など利回り0%だと、積立元本のままになります。

つぎに新しいNISAを利用する場合です。世界の株式を対象としたインデックスファンドであれば、20〜35年などの長期では3〜7%程度の利回りとなる可能性は十分あります。

たとえば30年の場合、利回り3%なら約1160万円、5%なら約1637万円、7%なら約2352万円と見込まれます。利益はそれぞれ約440万円、約917万円、約1632万円となります。自動車を買ったり、家族で豪華な旅行を楽しんだり、老後資金としても使えそうですね。


(出所)『新しいNISA かんたん最強のお金づくり』

実際には投資ですから、途中、上がったり下がったりと大きく変動することになります。しかし、このくらいの時間をかけてゆっくり、しっかり資産形成していけば、振り返ってみるとこのくらいの利回りで増えていた、ということが期待できるのです。みなさんは、新しいNISAのある人生とない人生、どちらを選びますか?

NISAを使うと税金がどのくらい得になる?

株式や投資信託などに投資する場合、通常は特定口座とよばれる口座を開設しておこないます。買ったときよりも値段が上がればキャピタルゲイン(値上がり益)という形で、また保有することで配当金や分配金を受け取るとインカムゲインという形で、利益が得られます。

●特定口座とは
投資で発生した利益等の計算を金融機関がおこなってくれる口座。「源泉徴収あり」と「源泉徴収なし」があり、おすすめは「源泉徴収あり」。

●キャピタルゲインとは
保有している資産の値段が上がることで得られる利益。値上がり益とも。

●インカムゲインとは
資産を保有している間に受け取ることができる収入(利益)。預貯金や債券の利子、株式の配当、投資信託の分配金など。

このように利益が出ると、通常は20%の税金がかかります。つまり、100万円を投資して50%値上がりすると利益は50万円、通常であれば利益の20%、つまり10万円が税金としてかかるので、手元に残るのは40万円になります。しかし、税金のかからないNISA口座なら、手元にまるまる50万円が残ります。


(出所)『新しいNISA かんたん最強のお金づくり』

たとえば、老後資金として積立投資する場合を考えてみましょう。毎月3万円ずつ30年間積立すると、投資元本は合計1080万円ですが、利回りが3%なら約1740万円、利回りが5%なら約2456万円になります。

利益はそれぞれ約660万円と約1376万円ですから、特定口座なら約132万円、約275万円が税金となるのですが、NISAならこの税金がゼロになるのです。

毎月3万円、30年間の積立投資で、利益が1000万円を超え、節税額が300万円近くになる可能性もあるのです。

現行のNISAは、どんな制度なの?

2024年からの新しいNISAを説明する前に、2023年まで口座開設可能な現行のNISA(つみたてNISA/一般NISA)について説明します。

現行NISAには、非課税期間が最長20年間のつみたてNISAと、同じく最長5年間の一般NISAという、2つの制度がありますが、いずれも日本に住む18歳以上の人が対象で、1年ごとにどちらかを選択して利用できます。

つみたてNISAは年間40万円まで、長期・積立・分散投資に適した一定の株式投資信託とETF(上場投資信託)に限定されて投資できる非課税制度です。投資方法は年2回以上に分けて投資する積立投資のみです。


(出所)『新しいNISA かんたん最強のお金づくり』

いっぽう、一般NISAは年間120万円まで、株式やさまざまな投資信託など、幅広い商品が対象で、投資方法も積立投資にくわえて、好きなタイミングで買いたいだけ買うスポット投資も可能です。

いずれの制度も売却するのは自由で、必要であればいつでも売ることが可能です。資産形成が目的で利用するなら、筆者のおすすめはつみたてNISAです。投資可能額は小さいものの、非課税期間が20年と長く、長期的な資産形成にはより適しているといえるからです。

●積立投資とは
定期的に一定金額ずつ買い付けていく方法。一般的には毎月積立が多いが、NISAでは年2回以上に分けて投資すればよいことになっている。

●スポット投資とは
自分が好きなタイミングに、買いたい金額を一括で投資すること。一括投資とも。

新しいNISAって、どのような仕組みなの?

ここで「新しいNISA」の概要を説明します。

利用できるのは日本に住む18歳以上の方です。残念ながら未成年の方は利用できません。


口座開設は2024年以降いつでも可能で、新しいNISA口座での投資により得られた利益は、保有期間にかかわらず非課税となります。つまり、20年でも30年でも、どんなに長く保有しても、無期限で非課税となります。このメリットは非常に大きなものです。

新しいNISAでは、現行のつみたてNISA/一般NISAを引き継ぐ形で、つみたて投資枠/成長投資枠という2つの枠が設定されます。これまではつみたてNISAか一般NISAのいずれかを1年ごとに選択する形でしたが、新しいNISAでは両方の枠を同時に利用できます。


(出所)『新しいNISA かんたん最強のお金づくり』

つみたて投資枠では積立投資のみですが、成長投資枠ではスポット投資も可能です。1年間で投資できる金額(年間投資枠)は、つみたて投資枠が120万円、成長投資枠が240万円です。また、非課税保有限度額(累計での生涯投資限度額)は1800万円で、そのうち成長投資枠は1200万円が上限となっています。なお、売却はいつでも可能です。まずはこういった概要をしっかり理解していただくことが大切です。

(横田 健一 : ファイナンシャルプランナー、ウェルスペント代表 )