ルノアールの「810円モーニング」で優雅な大人の朝
カフェルノアールのモーニングサービスは、飲み物に140円追加するとトーストサンドがついてくる(筆者撮影/写真は170円の「国産蒸し鶏のヘルシーチキンサンド」も含まれています)
喫茶店やレストランが、朝の時間帯にドリンクやトーストなどのメニューを割安価格で提供するモーニングサービス。名古屋の喫茶店が始めた文化とされていますが、最近では大手外食チェーンも数多く提供しています。
そんなチェーン店の外食モーニングをこよなく愛するブロガー、大木奈ハル子さんがお届けする本連載。第44回となる今回、訪れたのは「Cafe Renoir(カフェルノアール)」です。
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飲食店にて朝限定で提供されるメニュー、通称「モーニング」。発祥は喫茶店と言われていますが、現在はファストフードに牛丼チェーンにファミリーレストラン。カフェに焼き肉に立ち食い蕎麦にドーナツショップなど、さまざまな飲食チェーンが参入しています。
集客の弱い時間帯である午前中の売り上げを強化すべく、朝の数時間だけ提供される限定メニューの数々は、コスパ抜群かつ店の特色が強く表れ、どれも魅力にあふれています。
今回ご紹介するのは「カフェルノアール」のモーニングです。ドリンクをオーダーした人だけが安価で注文できるモーニングサービスは、ボリュームも味もコスパも大満足の一皿でした。
高級路線のカフェチェーンルノアール
「喫茶室ルノアール」は、東京を中心に100店舗以上を展開する純喫茶のチェーン店です。関西に住んでいた筆者としては、数年前までは存在すら知りませんでしたが、2007年には俳優の星野源さんが主演の「去年ルノアールで」という深夜のテレビドラマも放映されるなど、東京ではよく知られた店舗です。
カフェルノアールだとはわかりにくいかもしれませんが、柔らかい印象のロゴ(筆者撮影)
「喫茶室ルノアール」は毛筆調のフォントがインパクト大な看板を掲げており、ロゴをパッと見ただけで「この店は純喫茶なんだな」「コーヒーの価格帯は高そうだな」となんとなくわかったものですが、「カフェルノアール」は、あまり視認性が高くない英語のロゴマークになっており、その分敷居が低くなった気がします。なお、メニュー的にはそこまで大きな違いはないようです。
利用した店舗では、長時間の利用客に向けて、おかわりドリンク半額サービスを実施していました(筆者撮影)
ゆったりと配置された座席は、創業時に予算不足で、家具を店内にまばらに配置してごまかしたら好評だったことに由来しているそうですが、それ以外でも、じゅうたん敷きのふかふかの床や、テーブルごとの視線を遮るために配置された絶妙な高さのついたてなど、居心地の良さは、カフェチェーンの中では群を抜いています。
また、ほとんどの店舗で喫煙ブースが設置されているのは、昔ながらの純喫茶のなごり。肩身の狭くなった喫煙者にとっては、ありがたいかぎりです。
店舗により若干価格は前後しますが、ブレンドコーヒーの価格は1杯税込670円。決して安くはありません。ただし、入店時に水と一緒に出てくる布のおしぼりや、コーヒーを飲み終わったタイミングで湯呑みに入った日本茶が出てくるなど、気配り目配りが行き届いたサービスには、お値段以上の価値を提供してくれていると感じます。
ルノアールのモーニングはドリンクプラス140円〜
「カフェルノアール」のモーニングはちょっと変則的なオーダー形態となっています。ドリンクをオーダーした人だけが注文することができる特別メニューとして、追加料金を支払ってモーニングセットを食べるという形式で、その分価格設定は激安でした。
モーニングサービスの提供時間は、オープンから午前11時までです。店舗ごとにメニューの内容や価格に差があるようですが(一部実施していない店舗もあるようです)、筆者が利用した店舗では2種類を販売していました。
カフェルノアールのモーニングは2種類。取材した店舗にはなかったのですが、トーストを60円で提供している店舗もあります(筆者撮影)
・国産蒸し鶏のヘルシーチキンサンド 税込170円 プラスお飲み物代
・ベーコンタマゴトースト 税込140円 プラスお飲み物代
コーヒー以外の全てのドリンクにも、モーニングサービスをセットできます。メニューの中から10種類の価格をあげておきます。
・ブレンドコーヒー 税込670円
・アメリカーノ 税込670円
・ドリップアイスコーヒー 税込700円
・ウィンナーコーヒー(ホット) 税込700円
・カフェラテ(ホット) 税込720円
・ティー 税込670円
・アイスティー 税込670円
・ハーブブレンド 税込670円
・ほうじ茶ラテ 税込770円
・抹茶ラテ 税込770円
サイドメニューもコンソメスープ30円など、かなりお得な印象をうけます(筆者撮影)
1ドリンクで、2皿までオーダーできるということで、今回はブレンドコーヒー1杯で、両方のモーニングサービスを食べることにしました。
ルノアールのモーニング国産蒸し鶏のヘルシーチキンサンド170円
カフェルノアールのモーニング国産蒸し鶏のヘルシーチキンサンド170円(筆者撮影)
まずは、ドリンクに税込170円でセットできる、「国産蒸し鶏のヘルシーチキンサンド」の食レポからお届けします。大きめサイズのイギリス食パンに、とりむね肉とレタスを挟んだサンドイッチを、3切れにカットして美しく盛り付けてありました。
とりむね肉は細かくほぐしてあり食べやすく、レタスたっぷりでシャキシャキとした食感も楽しめます。イギリス食パンはしっとりというよりは、軽いさっくりとした歯触りです。こういうパンは乾燥してパサパサになりがちな印象ですが、保存に気をつけているようで、決してパサパサではありません。
断面図。レタスの緑が鮮やか。しっとり食感のチキンと、シャキシャキ食感のレタスのコントラストがおいしい(筆者撮影)
マヨネーズとマスタードで味付けたシンプルなサンドイッチながら、きちんとした素材を使い、ていねいに調理してあるのと、マスタードが効いていて、完成度の高い引き締まった味わいです。価格帯から考えて、利用客のターゲットが社会人以上であろうことから、大人向けの味付けのサンドイッチに仕上がっていました。
ていねいに調理されたシンプルな味付けの、具沢山のサンドイッチです(筆者撮影)
「ここにミニサラダでもつけたら、単品で1000円ぐらいとってもおかしくないよな」というような、立派なサンドイッチがドリンクとセットとはいえ、税込170円で食べられる。これをお得と言わずして何と言えましょう。
ルノアールのモーニングベーコンタマゴトースト140円
カフェルノアールのモーニングベーコンタマゴトースト140円(筆者撮影)
お次は、税込140円の「ベーコンタマゴトースト」。蒸し鶏のサンドイッチと同じ食パンを使用しているのですが、パンをしっかりトーストしてあり、きつね色の焼き色が香ばしく、食欲をそそります。
ゆでたまごのフィリングとベーコンがサンドしてあり、味付けはマヨネーズとマスタード。特に凝ったことはしていないのですが、おいしい素材をおいしい組み合わせで食べて、おいしくないわけがありません。
ベーコンの塩気があるので、ゆでたまごフィリングは優しい味付けで。バランスの良いサンドイッチです(筆者撮影)
1皿でもボリューム満点なのに、2皿も食べたので、お腹いっぱいで大満足の朝になりました。支払った料金は、ブレンドコーヒー670円に、170円と140円のサンドイッチで980円でした。
サンドイッチを片方だけで計算すると、それぞれ840円、810円のモーニングという計算になりますね(ということで、タイトルでは便宜上、「810円モーニング」とさせていただきました)。
お皿の選び方にルノアールの美学を感じた朝
サンドイッチのお皿と、ブレンドコーヒーのカップ&ソーサーは、どちらも厚みがあり、落ち着いたデザインと配色(筆者撮影)
サンドイッチの出来栄えも、もちろん満足だったのですが、特に感心したのは、サンドイッチが乗っているお皿です。カフェチェーンで使用される食器は、だいたい白い磁器に乗せられていると相場が決まっているものですが、「カフェルノアール」はグレーのお皿が使用されていました。
高級路線の喫茶店では、リチャード ジノリやウェッジウッドなどを使用している店もありますが、そうなると花だの鳥だののモチーフがお皿の外周をデコレーションしてトゥーマッチになり、有閑マダムや老紳士のサロン的なムードが漂ってしまいます。
モーニングを食べ終わった頃合いを見計らって出てくる日本茶。湯呑みも単色に釉薬でニュアンスを出した落ち着いたデザイン(筆者撮影)
白だとそっけないけれど、高級感がありすぎても落ち着かない。それと比べて「ルノアール」で使用しているこのお皿は、目立たない色合いながら、白いお皿と比べると差別化できていて、貫入(かんにゅう)という細かいヒビも、和食器的な落ち着きと、高級感を感じさせてくれます。
どちらかというと男性的なデザインで、主張もおしゃれさも控えめで気負いがない。仕事の合間の羽休めに、ビジネスマンがホッとできる食器だなと思いました。
都会のオアシスでモーニングを
筆者が訪れたのは、駅チカにあるオフィス街の雑居ビルのテナントです。ビルの2階が1フロアまるごと「カフェルノアール」になっている大型店舗です。「ルノアール」のコンセプトは「都会のオアシス」。疲れを癒やし、安らぎを与えてくれる空間がそこにはありました。
80席以上がゆったりとレイアウトされており、1人客向けに2人掛けのテーブル席をメインに配置し、PCで作業したい人のためには、コンセント付きのカウンター席があったりと、居心地に配慮された店づくりになっていました。
いつの間にか喫茶店ではめったに見かけなくなった布製のおしぼりがうれしい(筆者撮影)
椅子から見渡せる範囲では店はそこそこ繁盛していて、まばらに15人ほどが座っています。ほとんどがビジネスマンと思しき男性の1人客なので、1席とばしにテーブルが埋まっているという感じです。
それにもかかわらず、広々とした店内は驚くほど静か。しっとりしたじゅうたんの床が足音を吸い取り、微弱な音量で流れるボサノバのBGMがノートパソコンの打鍵音などの小さなノイズをかき消してくれます。客層が良く電話をする際は店外に出ていくなど、皆がマナーを遵守しており、秩序ある空間が保たれているのも好印象でした。
専用のマシンで淹れた、ネルドリップのホットコーヒーを、ぽってりしたカップでいただきます(筆者撮影)
オーダーカウンターのある、カフェチェーンのガヤガヤした空間も、気兼ねなくくつろげて、それはそれで大好きなのですが、「カフェルノアール」で、布張りの椅子に腰掛けて、ゆっくりモーニングを食べるひとときには、古き良き純喫茶の良さのようなものが残っている気がします。
「カフェルノアール」のブレンドコーヒーは、酸味も苦味もきちんとあって、落ち着いた店内にぴったりの、落ち着きのある大人の味がしました。
編集部注:本記事に登場するメニューの価格は、すべて取材時点のものです。昨今の円安、原材料高騰などの影響を受けて価格が改定されている可能性があります。また、店舗によってモーニングの値段・内容は異なる場合があります。
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(大木奈 ハル子 : ブロガー・ライター)