人工甘味料のアスパルテームはカロリーが砂糖よりはるかに少ないため、カロリーオフ飲料やプロテインバー、ガムなどに広く使用されています。新たな研究では、マウスにアスパルテームを摂取させ続けると、空間学習や記憶力が悪化する上に、その影響が子孫にまで受け継がれることが示されました。

Learning and memory deficits produced by aspartame are heritable via the paternal lineage | Scientific Reports

https://www.nature.com/articles/s41598-023-41213-2



College of Medicine researchers discover learning and memory deficits after ingestion of aspartame - Florida State University News

https://news.fsu.edu/news/health-medicine/2023/09/18/college-of-medicine-researchers-discover-learning-and-memory-deficits-after-ingestion-of-aspartame/

Mice Fed Low Levels of Aspartame Passed on Learning Deficits to Their Offspring : ScienceAlert

https://www.sciencealert.com/mice-fed-low-levels-of-aspartame-passed-on-learning-deficits-to-their-offspring

アスパルテームは世界中で広く使われている人工甘味料ですが、「発がん性がある」という研究結果も報告されています。こうした研究結果を受けて、世界保健機関(WHO)傘下の国際がん研究機関(IARC)はアスパルテームを発がん性物質に分類することを検討しており、その安全性についてはたびたび疑念が呈されています。

そこでフロリダ州立大学医学部の研究チームは、アスパルテームを含む水をマウスに摂取させ続けることが認知能力に及ぼす影響を調べました。実験では、成体のオスのマウスを「普通の水を飲むグループ」「0.015%のアスパルテームを含む水を飲むグループ」「0.03%のアスパルテームを含む水を飲むグループ」に分け、最大16週間にわたり同じ飲み物を与え続けました。

マウスの平均体重と1日に消費する水の平均を考慮すると、「0.015%のアスパルテームを含む水を飲むグループ」のマウスは1日あたり43.2mg/kg、「0.03%のアスパルテームを含む水を飲むグループ」のマウスは1日あたり86.4mg/kgのアスパルテームを摂取した計算になるとのこと。さらに薬物動態および体表面積に基づいた調整を行うと、アメリカ食品医薬品局(FDA)がヒトにおいて安全だと見なしている最大容量の50mg/kgと比較して、摂取するアスパルテームの量は「0.015%のアスパルテームを含む水を飲むグループ」のマウスは7%、「0.03%のアスパルテームを含む水を飲むグループ」のマウスは15%でした。

ヒトにおけるアスパルテームの平均摂取量は、FDAの推奨量をはるかに下回る1日あたり4.1mg/kg(1日あたり500mlのダイエットソーダに相当)と推定されています。これは、今回の実験で「0.015%のアスパルテームを含む水を飲むグループ」になったマウスと同程度だそうです。



これらのマウスを対象に、Y字迷路およびバーンズ迷路で認知機能テストを実施したところ、アスパルテームを摂取したマウスは有意に空間学習および作業記憶の成績が悪いことが判明しました。

たとえば、バーンズ迷路では円形の台に乗せられたマウスが、40個の穴から脱出用のボックスにつながるものを見つける必要がありました。アスパルテームを含まないただの水を飲んだマウスはすぐに脱出用ボックスを見つけられましたが、アスパルテームを含んだ水を飲んだマウスはより時間がかかったとのこと。なお、アスパルテームを摂取した量の違いは、結果に有意な差をもたらしませんでした。

また、アスパルテームを摂取し続けたオスのマウスと普通の水を飲んでいたメスのマウスの間に生まれた子どもは、アスパルテームを摂取していない親同士の間に生まれた子どもと比較して、空間学習および作業記憶のテストの成績が悪いこともわかりました。

同じ研究チームが2022年に発表した論文では、アスパルテームの摂取がマウスの不安を増加させ、その影響が孫にまで受け継がれることが確認されています。論文の共著者である発達神経学者のプラディープ・ビデ氏は、「今回の研究でアスパルテームの影響が判明したものは、不安行動とは異なる認知機能であるため、アスパルテームの影響は以前の論文が示唆していたよりもはるかに広範囲に及んでいます」と述べています。一方で、今回の研究で示された認知機能への影響は子どもの代でストップし、孫の代には受け継がれなかったとのことです。

人気の人工甘味料アスパルテームが不安を増加させることがマウス実験で確認される - GIGAZINE



アスパルテームがどのように脳へ影響を及ぼすのかは明らかになっていませんが、研究チームは特に扁桃体において神経伝達物質のシグナル伝達が変化することにより、さまざまな影響が出るのではないかと考えています。

研究チームは、「私たちの発見が公衆衛生に与える重要な知見は、アスパルテームが学習と記憶に悪影響を及ぼすリスクがある集団は、直接暴露された個人のみを考慮した現在の推定値より大きい可能性があるという点です」と結論付けました。