精神的に未熟な相手にはある一定のパターンがある(写真:Fast&Slow/PIXTA)

自己肯定感が低いと、他人を思いどおりに利用することしか考えない自己中心的な相手にしか魅力を感じないなど、人間関係で何度も同じ失敗をしてしまうことがある。

「付き合うべきなのは成熟した人」と頭ではわかっていても、相手が問題を抱えているほど引きつけられ、違和感を覚えても、そのまま関係を続けてしまう。なかには相手のひどい言動に我慢し続けて、破滅的な被害に遭う人もいる。

アメリカでロングセラーになっている『親といるとなぜか苦しい』著者であるリンジー・C・ギブソン氏は、著書において人間関係で同じ失敗をする人が気をつけておきたいポイントを紹介している。その方法とは、オンラインの活用だ。

最近はオンラインがきっかけで出会いが生まれることも多いが、いきなり会うのではなく最初のうちはメールで相手とやりとりすることに徹する。SNSやメールでのコミュニケーションは、相手の本性を見抜くいい手がかりになり、ダメな人とのつき合いを回避できるという。

成人しても子ども時代をくり返す


わたしが治療している虐待されてきた女性患者の多くが明言しているのだが、彼女たちは、いわゆる「精神的なイケメン」には引かれてこなかったそうだ。一様に、やさしくて思いやりのある男性は退屈だと言う。不幸なことに、相手が自分勝手で支配的でないと魅力を感じなかったのだ。

彼女たちは、自分中心の男性を前にすると心がときめくのだろう。それは果たして本心からの好意だろうか、それとも、自分のことしか頭にない相手に、子どものころの不安の名残を反映させているのか。精神的に未熟な親に育てられた子どもは、自己中心的で他者をいいように利用する人間に無意識のうちに親しみを覚えているかもしれない。

ジェフリー・ヤングらが開発したスキーマ療法の理論に、「強烈なカリスマ性のある人がきっかけで、かつての否定的な家族のパターンに戻ってしまう」というものがある。こうした瞬間的な化学反応は、「子ども時代の自滅的な役割が水面下で再び頭をもたげだしたことを示す危険な兆候の可能性がある」と、ヤングは警告している。

「相手は、今の自分が望むものを本当に与えてくれる人だろうか」

これは、パートナーであれ、友人であれ、親戚であれ、精神的に未熟な人と付き合う際にやってみるべき重要な問いかけだ。

たまたま相手が提供している関係性を、自分は心から楽しんでいないのに、「その人との関係を切望している」と信じこんでいるだけなのかもしれないのだから。一歩引いて自問するのは、なかなか勇気のいることかもしれない。

オンラインデートやSNSでのやりとりは、相手の精神的な成熟度を明らかにするいい機会だ。それには、自己紹介や、メールを読むといい。

なかには書くことに秀でた人もいるが、個人が書くものであれば何であれ、その人の考え方や価値観、もっとも関心を寄せていることがみえてくる。相手の書いたものを読むことで、自分がどんな気持ちになるかもわかる。電話もしかりで、表情がわからないぶん、相手の言葉をしっかり観察できる。

それらを参考に、相手のタイミングやペースをどう感じるか、自分に問いかけてみる。

文章には、確実にその人の本性が表れる

自己紹介やメールやメッセージを読んだら、相手の印象をさっとメモしよう。こうすることで、自分の本能的な反応に意識を向けていけるようになる。

しかも、直接顔を合わせてやりとりするプレッシャーがないので、気楽にできる。精神的に成熟した人を見極めていくには、自分の反応を観察する力も欠かせないが、その練習にぴったりなのがオンラインでのコミュニケーションだ。

精神的な成熟度を見分けるリスト

相手の精神的な成熟度を見分けるのが、次のチェックリストだ。相手は、自分の望むような関係をつくっていけるだろうか。

◆現実的で信頼できる
□現実に抗わず、うまく折り合いをつけられる
□「感じること」と「考えること」が同時にできる
□ぶれないから信頼できる
□すべてを個人的な攻撃と受けとったりしない

◆尊敬できて、互いを思い合える
□相手の境界線を尊重できる
□持ちつ持たれつの精神
□融通がきいて、きちんと歩み寄れる
□気分にムラがない
□影響されることを厭わない
□嘘を言わない
□謝罪や償いができる

◆反応力
□相手を安心させる共感力がある
□見守ってくれる、わかってくれるという気持ちを抱かせてくれる
□人をなぐさめるのもなぐさめられるのも好き
□自分の行動を省みて、変えようとする
□声をあげて笑い、陽気である
□一緒にいると楽しい

こうした特徴を持っている人とは、心からのつながりを築いていける。
もちろん世の中に完璧な人などいないのだが、少なくとも互いを疲弊させるのではなく、豊かにしていく人間関係を築いていけそうな素晴らしい人は、ある特徴を備えている。

デートの相手を選ぶときも、新しい友人を見つけるときも、就職の面接でも、このチェックリストを活用すれば、対面であれオンラインであれ、長く付き合っていける人を見極められる。それに従えば、古いパターンを無意識のうちにくり返すことなく、前向きな特徴を持った人とのつながりを意識的に選んでいける。

精神的に成熟した相手を見極められるようになったら、次はいよいよ、充実した人間関係というパズルを完成させる最後のピース「自分の言動」である。自分の望む人間関係を維持していくには、みずからも精神的に成熟していくことが大切だ。

もっとも、非の打ちどころがない素晴らしい人を前にすると、「自分に本気で関心を持ってくれることなどない」と考えがちだ。こうした否定的な考えのせいで、精神的な孤独はいつまでもなくならない。

あなた自身が精神的に成熟するために、自分にとっての新しい行動、考え、価値観を選び、実践してほしい。実践する際は一度に1つか2つにし、すぐにできないからといって自分に厳しくしないこと。

相手と向き合うときに考えるべきこと

◆進んで助けを求める
□たいていの人は、できることであれば喜んで助けてくれる。それを忘れないでいる
□親密なコミュニケーションを介して、しっかり自分の望みを伝える
□自分が頼めば、たいていの人は耳を傾けてくれると信じる

◆相手に受け入れてもらえても、もらえなくても、自分自身でいる
□自分が持っている以上のエネルギーを注がない
□相手を喜ばせようとするのではなく、自分の本当の気持ちを伝える
□嫌々受け入れて、あとで腹を立てて文句を言いそうだと思ったら、断る
□ひどいことを言われたら、別の考えを示す。相手の気持ちを変えようとせずに、その発言をなかったことにもしない

◆精神的なつながりを維持し、感謝する
□「この人は」と思う大切な人とはつながりを絶たず、電話やメールをもらったら必ず返事をする
□自分は、助けたり、助けてもらったりするに値するしっかりした人間だと考える
□相手にイライラしたら、自分たちの関係をもっとよくするために何を言えばいいかを考える

◆自分に対して無理のない期待をする
□いつも完璧でいる必要などないと心に留めておく。完璧にこなすことを考えるより、とにかく取りかかる
□疲れたら、休んだりほかのことをしたりする。我慢しない
□間違えても、人間だから仕方がないと考える
□誰もが自分の感情や、自分の欲求を伝えることに責任を持っていることを忘れない

◆自分が望むことは、わかりやすく積極的にコミュニケーションをとる
□自分から言わなければ、自分の欲求は相手にはわからない。気持ちを自然に察してもらえるわけではない
□身近な人に心をかき乱されたら、そのつらさを利用して、自分の心の奥底にある欲求を明らかにしていく。それから、その欲求を相手にどうやったら満たしてもらえそうかを、わかりやすく、親密なコミュニケーションを介して伝えていく
□はっきりした答えが得られるまで、何度でも問いかける
□親密な関係でも疲れることはある。そんなときは「また別の機会にしませんか」と丁寧に提案する。自分の状況をきちんと説明しよう

悪循環を断ち切る力

ここまで読み進んできたあなたは心がずいぶん軽くなっていることだろう。人間関係においても積極的に自分を表現していける。自分を大切にでき、精神的な孤独からも解放される。

精神的に未熟な親のせいで、自分を受け入れることも、気持ちを表現することも阻まれ、心からの親密さを望むことも難しかったかもしれない。だが大人になった今は違う。あのころの自分に引き戻すものは、もう何もないのだ。

あなたには精神的な強さと、人とのつながりを築いていける力があるということを忘れないでほしい。もっともっと幸せな人間関係を手にしていくためのカギは、成熟したあなた自身の内側にある。

ジョン・ボウルビィ(精神科医)は言っている。すべての人間が、「親しさ」を安全と見なす原始的な本能を有している、と。

(リンジー・C・ギブソン : 臨床心理学者)