プロウェイクサーファーとして大会にも出場する(写真:森詩絵里さん提供)

弁護士・森詩絵里(もり・しえり)。日曜朝の生放送「シューイチ」(日本テレビ)で見たことがある人も多いのではないだろうか。

SNSでもインフルエンサーとして活躍し、TikTokでは法律相談、Instagramでは趣味のゴルフスノーボードウェイクサーフィンなどをアクティブにこなす様子をアップしている。

ウェイクサーフィンにいたってはプロ資格を取得しており、「アウトドア好き弁護士」として、メディアでもよく目にするようになった彼女は、いったい何者なのか、インタビューで迫ってみた。

*この記事の続き:「多趣味すぎる弁護士」が教える人生を楽しむコツ

最近、よく見かける「弁護士・森詩絵里さん」は何者?

弁護士・森詩絵里。最近、テレビをはじめSNSなどメディアで目にしたことがある人たちも多いのではないだろうか。

ただ、彼女についてわかっているのは弁護士であり、SNSを通じて多趣味であるということのみ。

突如として現れた彼女は一体何者で、これまでどういった人生を送ってきたのだろうか。その半生をひも解いていく。

出身は茨城県ひたちなか市。

「ピアノを習っていたんですが、友達のお姉ちゃんが通っていた学校の制服がかわいくて、それで国立の小中一貫校に行きました」

いわゆる小学校受験のある学校だが、受験に際しても自身で決めた。

「私は母子家庭で育っているので裕福ではないですし、母が特に教育熱心だとかそういうこともなかったので、自分で決めました。母は『決めたことは応援するよ』みたいな感じだったので」

幼いころから教育熱心な家庭環境に育ってきたのかと想像していたが、意外にもその逆だった。

赤ちゃんの頃に母は離婚しており、父の存在を知らずに育ってきた。勉強に関しては特に何も言われずに、ただ必要な応援を母はしていた。

そして小学校時代は、とにかくよく本を読んでいた

国立の小中一貫校で中学受験の必要はなかったが、私立の中高一貫校を中学受験し合格。中学時代は部活に遊びにと、外で走る日々が続いた。

「中学校時代は硬式テニス部で河川敷を走りまわってました。日焼けで真っ黒でした(笑)」

中高一貫校のため高校受験の受験勉強もなく、とにかく部活と遊びと青春を謳歌していた。だが、不思議なことに、高校に入ってから勉強がしたくなったという。

「中学までは部活とかで必死だったんですが、高校からはなんか勉強がしたくなって。テニスを続けていたんですが、部活を辞めて、そこから大学受験に向けて勉強し始めました」

「なんか勉強したくなって」。勉強が嫌いで苦労した人々からのツッコミがきそうなフレーズであるが、このメンタリティこそが今の森を形成してきたものなのだろう。


とにかく自身はスロースターターで最初は苦労すると話す(撮影: 梅谷秀司)

進学校だったこともあり、授業や補習や自習をメインに勉強を続けた。そして第一志望の東大には落ちたものの早稲田大学法学部に見事合格した。

何か独自の勉強法などはあったのだろうか。

「私は短期記憶がよくて、長期記憶が全くよくないタイプなんだと、自分では思います。だから、とにかく覚えるために復習を何度もやってました。忘れかけた頃に何度も何度も同じ内容を復習することで、記憶に定着させていくんです」

何か特別な勉強法があるわけでもなく、ただひたすらに覚えるために復習する。これが継続できることそのものも、ある種、森の才能なのだろう。

「もうひとつ、勉強は常に考えるということはしていましたね。どんな勉強法が効率がいいかを自分なりに考えながら勉強する。わからないことなども、すぐに人に聞くのではなく、一度自分なりに考えてみるっていうことは、小さい頃からしてました」

常に考えるクセをつける。これは非常に大事なことだ。

今はとにかくわからなければネットで調べれば簡単に答えが見つかる。AIに頼ればもっと簡単だろう。

だが、一方では、考えることを放棄してしまうことになりかねない。

森の幼いころからの考えるクセは勉強に大いに生きてきたのは間違いないだろう。

テッシュ配りも……バイトに明け暮れた早稲田時代

晴れて早稲田の学生となった森はテニスサークルに所属してバイトに明け暮れる日々となった。

母子家庭のため、大学から給付の奨学金をもらっていたのですが、生活費は自分のバイト代で賄わないといけなくて。ティッシュ配りから飲食店塾講師まであらゆるバイトをしましたね。教えるのが好きで塾とか家庭教師は楽しかったですね」

バイトとサークルと学生らしい楽しい日々を送り、同級生たちが就職活動に入る中、ここでもまたも「勉強したい」意欲が湧いてきた。

そして一念発起してロースクールへの進学を決意する。

「大企業への就職を目指す人が多い中、私はそうじゃなくて、自分で自由に時間の使い方を決められる生き方をしたいってことを一番大事に思ったんです。それが資格を持ってフリーランスになればできると思って……」

この価値観、生き方を体現できるのがロースクールで法律を学び、弁護士になるということだったわけだ。

現に、森は「ロースクールで法律を学ぶことはつらかった」と言ってはばからない。


こんな弁護士になるという具体的なイメージは当時なかったという(撮影: 梅谷秀司)

「正直、法律の勉強は楽しくなかったですね(笑)。ロースクールでも1年目は苦手な科目を再試験になったりしていて。スロースターターなんですよ」

「でも、自分はもう戻れないという覚悟で勉強してたので。ロースクール以降は親からの経済的援助もなく、授業料・生活費を全て貸与の奨学金で賄っていましたので、『これだけ借金したのだから、受かるしかない』という退路がない状況でした」

退路を断って挑んだ司法試験

「もう後には戻れない」。この覚悟こそ森を司法試験一発合格へと導いたものだった。

ロースクールでは、1日10時間以上の勉強に励んだ。そして司法試験に一発合格。早稲田でも合格率はわずか3~4割程度という狭き門を突破した。

生き方として選んだ弁護士だったので、「こんな弁護士になりたい」といった憧れや、「こんな人たちを救いたい」とか、そういった想いは司法試験に合格した段階では、まだもっていなかった。

あくまでも自立した生き方のために選んだ道だったのだ。

母子家庭に育ち、中学の頃には祖父が営む建設会社が倒産し、祖父母が苦しい状況に追い込まれるのも見てきた。

祖父の会社が倒産するのをみて、「永遠なものはない」と感じ、だからこそ「自分は自立しなければ」と、いつの頃からか思っていた。

母はインテリアコーディネーターをやっていました。愛情をうけて自分は育ったと思います。家に帰れば常に母がいてくれて、そんな自由な働き方がいいと思っていました。資格があれば自由に働けるって」

働く母をみて育ち、今、自分自身の自由を得た森は、その強い探求心を趣味にも向け日々の生活を充実させている。

*この記事の続き:「多趣味すぎる弁護士」が教える人生を楽しむコツ

(松原 大輔 : 編集者・ライター)