iPhoneをはじめとするApple製品は世界各地で販売されていますが、キューバやイランなど、一部の国ではApple製品の販売が禁止されています。こうした国では、Appleの直営店が存在しないため、地域の技術者コミュニティがApple製品の修理やサポート対応を担っています。

Cuba’s underground Apple technicians are thriving - Rest of World

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1960年代以降、アメリカからの禁輸および制裁措置が行われているキューバでは、Apple製品も同様にキューバ国内への輸入や再輸出、販売、供給が制限されています。

2015年に一部の製品に対する措置が(PDFファイル)緩和されましたが、記事作成時点でも依然としてApple製品の入手や修理が困難な状況は続いています。また、App Storeでは、キューバからのIPアドレスを遮断しており、アプリやソフトウェアアップデートが不可能となっています。そのため、キューバでApple IDの2要素認証を使用するには、キューバ国外の電話番号が必要とのこと。

キューバにはApple直営店が存在しないだけでなく、Apple製品の再販業者もいないため、非公式のサプライヤーや、ハードウェアの修理に必要な交換部品を購入するために海外に旅行できる個人が集まったコミュニティが育まれています。ガルシア・パドロン氏もその一人で、キューバ政府からの「収益性の高い修理事業を創出する」という制約に逆らってApple製品の修理などを請け負っています。



海外メディアのRest of Worldによると、キューバ国内の技術者コミュニティに関する政府公式の統計はなく、正確な数を特定するのは困難とのこと。また、Apple製品の修理が可能な店舗はキューバ国内にごくわずかで、そのほとんどが首都のハバナに集まっているとされています。

ハバナでiPhoneの修理店「Meca Móvil」を営んでいたオーランド・グティエレス氏は「キューバ国内でAndroidの修理ができる技術者は何人も見つかるかもしれませんが、Apple製品の修理ができる技術者は貴重です」と述べています。グティエレス氏は顧客から持ち込まれたiPhoneの修理を請け負っていただけでなく、キューバ国内でApp Storeを通したアプリのインストールやソフトウェアアップデートができない問題への対処を行っていました。



グティエレス氏によると、キューバ国内でiPhoneが使用できない問題は、仮想プライベートネットワーク(VPN)を顧客のiPhoneに導入することで対処可能とのこと。

また、一部のユーザーは技術者コミュニティにMacBookを持ち込み、Windowsをインストールするよう依頼することがあるそうです。Rest of Worldによると、MacBookはハバナの大学や、キューバ国内のクリエイティブ業界においてステータスの象徴となっているとのこと。一方でキューバではmacOSよりもWindowsの普及率が高いため、macOSからWindowsへの切り替えが依頼される模様。そのほか、アメリカのモバイルキャリアで購入したiPhoneをキューバ国内で利用するために、SIMロックを解除するよう依頼されるケースも多いそうです。

キューバ政府は2011年に国民に対し、中小企業を設立するための規制を緩和しました。その結果、Apple製品を専門とする修理店はその数を増やしましたが、依然としてキューバ国外から電子機器や交換用部品を輸入する際には厳しい制限が設けられています。



ハバナで修理業を営むプポ・ホンダル氏は「私たちが修理に成功したApple製品は、本来Apple製品が販売されていないキューバでは、廃棄物として処分されるはずだった製品です。私たちはキューバ国内において、他の人なら処分していたかもしれないApple製品を修理する魔法のような仕事を行っています」と述べています。