SUVらしい存在感を追求しつつアウトドア的雰囲気は排除したというスタイリング(写真:SUBARU)

スバルが、9月7日に先行予約の受け付けを開始した「レヴォーグ レイバック」のプロトタイプに試乗した。レヴォーグの車高を少し上げた日本向けのモデルとのことだが、いったいどんなクルマなのか。


東洋経済オンライン「自動車最前線」は、自動車にまつわるホットなニュースをタイムリーに配信! 記事一覧はこちら

このレヴォーグ レイバック、 スバルのSUVにあって、新しい市場の開拓を目指して開発されたモデルなんだそう。一言でいうと「都会派SUV」。

そう語るのは、開発を総指揮したスバルの小林正明プロジェクトジェネラルマネージャーだ。どんな意味なんだろう。乗ってみたら、「なるほど、これがスバルの都会派か」と得心がいくデキだった。

陽光がまぶしい佐渡島で、一般車両通行止めの特設コースを使って行われたプロトタイプの試乗会。路面は舗装されているけれど、周囲はゆたかな緑に囲まれたワインディングロードである。

スポーティな操縦安定性と乗り心地の両立

レヴォーグ レイバックを「レヴォーグ GT-H」と比較すると、最低地上高が55mm上がり、全長・全幅・全高がすこしずつ大きくなっている。2670mmのホイールベースは同じ。

パワートレインもレヴォーグと同様、130kWの最高出力と300Nmの最大トルクを発揮する1795cc水平対向4気筒ガソリンターボを搭載する。8段の“段付き”にしたリニアトロニック(無段)変速機と全輪駆動システム(AWD)の組み合わせだ。


新しいサブネームどおり、新しい乗り味のクルマとして登場(写真:SUBARU)

スバルの最新モデルは「インプレッサ」と「クロストレック」だが、後者のプラットフォームとサスペンションシステムが改良されて、レヴォーグ レイバックに使われる。

開発目的は「スポーティな操縦安定性と乗り心地の両立」という。ダンパーとスプリングは、専用チューニング。日立オートモティブによる「2ピニオン」方式の電子制御パワーステアリングシステムも改良されているという。

加えて、ファルケンのオールシーズンタイヤは、レヴォーグ レイバックのために開発されたもの。

225/55R18サイズは、レヴォーグの225/45R18より大径化。扁平率が45%から55%へと上がった分、タイヤ外径は5〜6cm大きくなっている。サスペンションの変更とあいまって、最低地上高は200mmになった。SUVとして、十分な地上高である。


最低地上高はレヴォーグに対して55mmアップ(写真:SUBARU)

「SUV流行りの昨今、トヨタ『ハリアー』やマツダ『CX-5』など、市場ではいわゆる都市型SUVの人気が高いのは事実です。乗ってみると走りもいいし、 スバルでも都市型SUVはアリだと思いました」

前出の小林PGMは、会場でそう説明してくれた。

語源はLaid Back:ゆったり/リラックス

実際に乗った印象を一言で表現すると「大変、好ましい」だ。レイバックなるサブネームは、「ゆったりした」とか「リラックスした」といった意味の英語「Laid Back:レイドバック」からとったものだそう。

もし、「ゆったり」や「リラックス」を「気持ちのいい走り」ととらえてよいなら、開発陣の目論見は成功していると思う。

走ったときの姿勢は、路面が多少荒れていてもフラット。カーブの大小にかかわらずドライバーの視線が動くことはなく、操舵感覚はスポーティすぎず、正確で安心感が高い。

スポーティなレヴォーグとは明確に違うが、レヴォーグと同様に気持ちがいい乗り味だ。


サファイアブルーパールなる塗色もよく似合う。タイヤはこのクルマのための専用開発品だ(写真:SUBARU)

「ポルシェ(のクルマづくり)を尊敬している」と語るスバルの藤貫哲郎専務執行役員が開発のトップにいるだけある、と思う。今もポルシェ「911」が大好きな私は、おおいに納得した。

また、「走りの良さは、タイヤが負うところも大きい」と小林PGMは教えてくれた。このタイヤは、もう1つの目的である静粛性の面でも、見るべきところがある。クルマの上質性にも貢献しているのだ。

市街地や高速道路に多い路面の継ぎ目やマンホールのフタが連続して現れるような場面も、サスペンション設定にあたっての課題だったという。

たしかに都会的(?)な路面をそつなくこなしてこそ、都会派を自負できるのかもしれない。果たしてその成果は……。

それを知るには、まもなくであるという正式発売を待つ必要があるが、プロトタイプでも十分に「いいデキ」だと断言する。

ところで、後席の乗り心地の改善も、レヴォーグ レイバックが目指したところだったはずだ。実際、クロストレックよりふんわりしなやかで、後席に人を乗せる機会が多い人なら、ぜひレヴォーグ レイバックを試してみてほしい。

グレードは「Limited EX」のみ

安全および運転支援システムである「アイサイト」は、今回、広角単眼カメラが追加され、3カメラ式になった。

その結果、対向する自転車や自分が右折する際の対向2輪車、さらに、横から来る歩行者や(巻き込み防止)、横方向からの横断自転車も検知するという。


フロントガラス上部にアイサイトのカメラユニットがつく(写真:SUBARU)

もう1つのオプションが、「アイサイトX」。衛星からの信号を使い、主に高速道路での走行をサポートしてくれるシステムだ。ハンズフリー走行や自動車線変更、カーブや料金所手前の減速などを支援してくれる。

エクステリアデザインは、バンパー形状の変更が目を引く。グリルと一体になり、曲面が強調されることで質感が上がった印象だ。

インテリアデザインも、質感向上の印象に大きく影響している。アッシュというグレイ系の新色をシート表皮に使うことで、アウトドアでなく都会的、また大人っぽい雰囲気が強くなった。

11.6インチの縦型モニターを利用してのインフォテイメントシステムは機能が豊富で、CarPlayの地図は、フル液晶のメーターパネルにも表示できる。


シートは表皮に加えカラーも専用に。アッシュとカッパーステッチで上質感が感じられる(写真:SUBARU)

レヴォーグ レイバックは、AWDの「Limited EX」1グレードのみで、価格は400万円を切るという話を聞く。レヴォーグの上級仕様「GT-H EX」が370万7000円だから、この価格で出せるというのは驚きだ。スバルの開発力には、脱帽させるを得ない感じある。

<レヴォーグ レイバックLimited EX(プロトタイプ)>
全長×全幅×全高:4770mmx1820mmx1570mm
ホイールベース:2670mm
車重:1600kg
エンジン:1795cc水平対向4気筒ターボ
最高出力:130kW/5200〜5600rpm
最大トルク:300Nm/1600〜3600rpm
変速機:リニアトロニック(マニュアルモード付きCVT)
駆動方式:全輪駆動

(小川 フミオ : モータージャーナリスト)